第18話 第二章 血の滴るショッピングモール (1/5)
ミキとアカリの殺し屋稼業を手伝うことになったエヴァン。
Dr.竜宮からの提供で、エヴァンはロボットの体を手に入れる。
一方のミキとアカリはショッピングモールで任務を遂行しようとするが……
登場人物
エヴァン・アトラス:主人公 通称『As エース』
Dr.竜宮:科学庁のお荷物
ミキ・竜宮:エヴァンのクラスメイト
アカリ・竜胆:エヴァンのクラスメイト
翌朝から早速、エヴァンはDr.竜宮の実験に参加することになった。
Dr.竜宮はエヴァンの体を起こすと、服を脱がし、何本かのコードを背中に繋いでいく。
各コードの先端はシールのようにピッタリとエヴァンの体にくっついていく。
コードがつながれる度、エヴァンは感覚がないはずの体に電気が走ったような感覚を覚える。
Dr.竜宮はその反応に気づいてニヤッとした。
「気づいたようだね。今から意識をあっちのロボットに飛ばすよ」
エヴァンは構えたが、Dr.竜宮は躊躇いなくボタンを押す。
エヴァンが次に目を開けた時、目の前には意識を失って寝ている自分と、楽しそうにこちらを眺めているDr.竜宮の顔があった。
「これは……」
エヴァンは自分の手が動くことに気づく。
「動く……」
エヴァンは自分の体を触ってみる。触り心地から伝わってくるのは、堅く冷たい鉄の感触だった。
「いろいろ試してみるといい。これがマニュアルだ。正直マニュアルと言ってもそれ用にまとまっていないただのメモ書きだが、君なら問題ないだろう」
Dr.竜宮が差し出した資料を受け取る。受け取ったのをみると、Dr.竜宮は部屋を出ていってしまう。
エヴァンはとりあえず手当たり次第に自分の体を動かしてみたり、触ってみたりする。
ふとエヴァンは寝ているはずの自分が涙を流していることに気づいた。
Dr.竜宮はそれをロビーのモニターでミキと見ていた。
「エースとはいえ流石に、体が使えないのは堪えるだろうね」
エヴァンは涙を近くのタオルで拭くと、資料を見始める。
エヴァン目に留まったのは禁止事項の部分だった。そこには、起動中に、コードを断ち切ってはならないと記載があった。
エヴァンは自分の体を裏返すと、背中にコードがくっついていて、背中との接合部分が光っている。
エヴァンは自分の体を元にもどすと、その他の内容も確認する。
――サブウェポン:ソード。
エヴァンが右腕のボタンを押すと、右手の横から刃が飛び出した。それをま収納すると、別の箇所を読む。
――メインウェポン:ドラグーン。
サブの説明が一機能の説明だったのに対し、メインウェポンはそれ自体で見開き2ページほどの記述があった。
「それはまだ君には早い」
それは竜宮の声だった。
「見えているのですか?」
「君の視界をモニターできるようにしてる。娘も一緒だ」
「嫌だったら切りな。切り方は書いてある」
ミキの声はハスキーで低く響く。
「早いというのは?」
「今日はそこ以外を学んで欲しい。メインは一通りできるようになってからだ」
エヴァンは気になったが一旦先を進める。一通り動かしてみると、一時間ほどでほぼ元の自分の体のように動かせるようになった。
午後になると、アカリがいなくなっていた。少し気になっていると、ミキがそれを察して教える。
「今日は任務なんだ」
「任務?」
ミキは首を切るジェスチャーをした。
「午後は外に出てみよう」
Dr.竜宮が後ろから声をかける。
「外ですか? しかしこの体では……」
エヴァンの姿はほぼガーディアンだった。
ガーディアンは往来ではかなりの人気で目立つ。一種のヒーローだ。
「もちろんそのままではいさせないさ」
そう言うとDr.竜宮はミキを見る。
「いやだよ私は。今から忙しいんだ」
「初回無料サービスだよ。どうせこれから何度もやることになる」
ミキは舌打ちすると、デスクトップに向き直って何やら作業を始めた。何が始まるかわからないエヴァンにミキが言う。
「ぼさっとしないで、その丸の中に立ちな」
エヴァンが見ると、近くの床が丸く光っていた。
エヴァンがそこに立つと、ミキはブツブツいいながら、パソコンをうちこんでいく。
ミキが最後のキーを打ち終わると、エヴァンの体が足元から変わりはじめた。
「これは……」
変化は最終的には全身に達した。変化しきったあとのエヴァンの見た目はシャツをきたアジア系の若い男だった。
「この見た目は……」
Dr.竜宮が少し驚いたように話す。
「これにするのかい?」
「何でもいいんだろ? こいつなら目立たない」
Dr.竜宮は肩をすくめた。
「君が言うなら構わないさ」
エヴァンは顔を触ってみるがヘルメットの感覚があるだけだった。
「側を変えてるだけだ。中身は変わらないロボットだから注意しなよ」
ミキはぶっきらぼうに告げる。
「一番安いスキンだから、表情変化はつけれない。まあ元がロボットだから表情ないし、仕方ないけどね。それと、耐久も良く無い。一定時間か、体に衝撃やら損傷やら受けるとはがれていくからね」
エヴァンは頷いた。
「じゃあ、後は勝手にしな」
ミキにエヴァンは向き合った。
「ありがとう」
ミキはそっぽを向いた。
「やめてよ。無表情で礼言われても、気味が悪い」
エヴァンは頷いた。
「ミキ。照れてんの?」
モニターからアカリの声がする。
「うっさい! 集中しな!」
ミキはそっぽを向いていたが、少し顔が赤かった。
外を歩くとまた違う喜びがあった。
一歩一歩、足が体を支えながら少しずつ加速していく感覚がよみがえる。走る速さは前の自分の体より少し早かった。
「あまり目立たないでくれ」
無線の声がエヴァンを嗜める。エヴァンは少しペースを落としたが、地面を踏み締めて走る感覚を再び味わえることに興奮を抑えきれない。
「よほど、溜まっていたようだね」
ミキはジュースをストローで飲みながら言う。
「一か月近く全く動けなかったんだ。そりゃそうだろ」
ミキは言いながら、別モニターに映る地図とそこの移動している点を見つめながら、指示を飛ばす。
「アカリ。20メートル先で階段だ。早く上がったほうがいい」
アカリはその地図の実際の現場であるショッピングモールの中にいた。




