第17話 第一章 龍の目覚め
マッド・ドラゴンことDr.竜宮とその娘、ミキがいる秘密基地に連れてこられたエース。
ミキは幼馴染のアカリの呪いを解くため、殺し屋稼業を手伝っていた。
二人を手伝うように依頼されたエースの出す結論とは?
登場人物
エヴァン・アトラス:主人公 通称『As エース』
Dr.竜宮:科学庁のお荷物
ミキ・竜宮:エヴァンのクラスメイト
アカリ・竜胆:エヴァンのクラスメイト
次の日、エヴァンは起きるとアカリが自分じっと見つめているのに気が付く。
「起きた」
アカリはそう告げると、ひょいとエヴァンを抱えて、他の二人のいるリビングまで連れて行く。
「連れてきた」
エヴァンは何やらわからない。ミキがコーヒーを飲みながら言う。
「やっと起きたね」
Dr.竜宮が言う。
「見た方がいい。残念だけどね」
ミキが、厳しい表情をしながら、ホログラムでニュース映像を再生する。
「病院では一夜明け、システムの復旧作業が再開されました。また、昨日の大規模ハッキング下での、『ラビド・ミスル』による襲撃により、病院での死亡者は確認されているだけで10名、中には、エースことエヴァンさんや、その妹のマリーさんも含まれます」
エヴァンは絶句した。
「今なんて……」
竜宮が引き継ぐ。
「昨日の標的は君以外にもいたと言うことだろう」
エヴァンは取り乱す。
「マリーが死ぬわけない。俺も死んだと思われてるし、戻らなきゃ……」
竜宮が言う。
「やめておいた方がいい。戻ればまた襲われる。死んだと思われている方が周りのためだ」
エヴァンの顔からは悲壮感が溢れていた。
「死ぬわけない……。マリーは俺が助けるんだ。助けに行かなきゃ」
しかし、エヴァンは立ち上がることもできない。
「私がいくよ」
アカリが助け舟を出す。ミキは驚いてアカリを見た。
「あんた……」
「ミキ。スキン貸して。このままこいつ行かせるよりマシだよ」
ミキは舌打ちするとパソコンに向かった。
アカリは白人の男の顔で、病院へと向かう。目がモニターとリンクしていて、アカリの見ている映像が、エヴァンたちの前に映し出される。
病院周辺では記者達が取り囲んで大騒ぎになっていた。アカリが何とか中に入ると、中は警察や関係者でごった返している。
「何号室かわかる?」
ミキの質問にエヴァンが答える。
「708だ」
アカリは監視カメラの死角で医者の姿に変わるとマリーがいた部屋に入る。中では、エヴァンの父と母が泣きながらマリーの遺体と向き合っていた。
「マリー……うそだ」
エヴァンの目から涙が溢れる。マリーはただ眠ったような顔をしていて、表情は安らかだった。
ミキはアカリの目を通して、マリーの体のスキャンを始める。
「バイタルもない。残念だけど……」
ミキの言葉にエヴァンは唇を強く噛み締める。下唇が切れて血が出てきた。
「アカリ、もう戻りな。あんまりいると変に目立ちかねない」
アカリは頷くと、病院を気づかれずに後にした。
Dr.竜宮はエヴァンをプラグで車椅子に繋げる。すると車椅子は、エヴァンの意思通りに動くようになった。
「これで移動は問題ない」
エヴァンはその間も特に喋らなかった。一通りセッティングが終わるとエヴァンは
「少し一人にしてください。」
と言って、元の部屋に自力で戻って行く。ミキはエヴァンが去った後で、Dr.竜宮と話す。
「どうするんだろうね。あいつ」
竜宮はコーヒーを飲みながら答える。
「さあね。ただ、人間性の頂点にいる男が出す結論には興味がある」
エヴァンは物に当たることもできず、ただ、声を殺して泣いていた。誰よりも幸せを願っていた妹の笑顔が常に脳裏に何度も浮かび上がる。
アカリは戻るとシャワールームに入った。真横ではミキが座ってパソコンをいじっている。
「あいつは?」
ミキはアカリの方を見ずに答える。
「引きこもってるよ。よほど妹さんと仲良かったんだろ」
ミキの言葉はどこか他人事だった。
「羨ましい?」
「うるせえ。はっ倒すぞ」
ミキはそう言いながら、シャワーから出て、髪を拭いているアカリに飲み物を投げ渡す。
アカリはソファに座ってそれを一気に飲み干すと一息つく。
「どうするのかな……」
ミキは本を読んでいるDr.竜宮を顎で刺しながら言う。
「さあな。あいつは入って欲しそうだが、私は正直面倒ごとが増えるのはごめんだ。あんた一人の対応で手一杯だよ」
二人が話していると、エヴァンが現れる。ミキはエヴァンの目に今までとは違う、暗い光が宿っているのに気がついた。
「俺を仲間に入れて欲しい。俺には力が必要だ。そのためにはどんなことでもする」
Dr.竜宮は興味深そうに言う。
「復讐するのかい?」
エヴァンはゆっくりと竜宮を見つめた。
「俺はまだあなたから話を聞いただけで本当のことを知らない……。進むには真実が必要なんです。それを掴みとるためには力がいる」
言っていることは冷静だったが、エヴァンの表情には暗い決意が垣間見える。竜宮は少し驚いた表情をした。
「わかった。ミキとアカリ君もそれでいいかい?」
ミキは肩をすくめる。
「足手纏いになるなら、その時は外れてもらうよ」
アカリは
「私は何でもいい」
と他人事のように告げた。しかしその声はどこか楽し気だった。
「決まりだ。早速明日から始めよう」
Dr.竜宮はそういうと、感覚がないエヴァンの手と握手をした。




