表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔族の子。  作者: フツキ。
23/35

20.少年とお守り。

「おまもり?」

 あらかた整理が終わった子供にアイテムを渡すと、不思議そうに首を傾げて問い返した。

「そうだ」

「こういうの、学校で見たことあるよ。先生がこういうのがあるって、教えてくれた」

 そう言ってから、子供は様々な角度から、守護アイテムを見やる。この街…否、この世界に住む者は、必ず守護アイテムを持っている。基本的には魔物除けであるが、我々のような街の外部で仕事をする者などは、それ以外にも効果を持つ物を所持している。それだけ、この世界には脅威が多いのだ。例え街の中であっても、油断してはならない。

 そして守護アイテムは常時身に着けていなければならないため、ペンダントやブレスレット、指輪など、アクセサリーのようになっている物が多い。子供に買ってやったのも、ペンダント型のものだ。水に強い素材で出来ているので、そのまま入浴しても問題ない。眠るときだけは首が締まる可能性があるため、外して近くに置いておくくらいだろう。恐らく子供も、学校でそう教わったに違いない。

「これはずっと持っていなきゃだめなんだよね?」

「ああ」

 確認するように続けて子供に問われたので、我は首肯した。それを見てから、子供はネックレスをつけた。小さな石以外は特にこれといった装飾のないものだが、それでも印象はがらりと変わった。

「にあうかな?」

 上機嫌な表情で再度問われたので、我は良く似合うと返してやった。望んだ返答が来たからか、途端に、子供が満面の笑みを浮かべる。

「ありがとう、おじさん。僕、うれしい」

 礼を言う子供の頭を、我はそっと撫でてやる。最近は学校で出来た友人と出掛けたり、ひとりで図書館に行く機会が多いので、ちょうど良かったともいえる。街の内部…特に子供が出歩くような場所には、街全体のものより強力な結界が張ってある。そうであっても、過去に悲惨な事件が起きていた。

 大人と違い、子供たちは脅威に対する抵抗力を、ほぼ持っていない。この子供も術式適性は高いものの、だからといって戦闘能力を持ち合わせているわけでは無い。いずれはそれを活用する日が来るだろうが、それはもっと先の話になるはずだ。この子供はまだ、自分の住む世界のことしか学んでいないのだから。

「それから、夜は絶対に出歩かないように」

「宿屋から出ちゃだめってこと?」

「そうだ」

 先ほど少女が語っていた幽霊話を思い出しながら、我はそう子供に釘を刺した。

「でもごはんを食べて、お風呂に入ったら、僕眠くなっちゃうから、お外には出ないよ」

 そう、子供が語る。確かに共に食事をとり、入浴を済ませてしまえば、この子は自分のベッドで本を読みながら眠ってしまう。時折宿題の残りを片付けていたりしているが、宿屋の外から出たことは一度もない。信用していないわけでは無いが、保護者として言っておく必要があるだろう。

「最近、街の外が物騒になっている」

「ぶっそう?」

「危ないということだ」

 さすがに物騒という単語は通じなかったらしい。相手にも分かりやすく言い直すと、分かった、と子供が頷いた。これは聞き分けの良い子だから、我の言いつけを破ってまで外に出たりはしないはずだ。とりあえず一安心、といったところか。

「そうだ、これ、おじさんに」

 そんな会話を交わした後、何かを思い出したかのように、子供がカバンを漁って、一枚の紙を取り出す。そしてそれを我の目の前に差し出した。

「どうした」

 子供から手渡された紙には、学校からの通達である紋章と、学校の保護者への連絡内容が綴られていた。よく目を通してみると、どうやら子供たちの日々の授業を保護者が観覧する、いわゆる授業参観があるようだ。日程は次の週になっている。

 はてさて、困った。無意識に低く唸ってしまっていた。我は子供の保護者だ。それは周知の事実ではある。我もそう自認している。だがこの巨躯では周囲の保護者の邪魔になるだろうし、何より我はそういうものに慣れていない。見知った者と過ごすならまだしも、ほとんど知り合いのいない場所に飛び込む勇気などない。さっきまで保護者気取りで話していたというのに、あまりにも大人気なく情けない話だ。

 事情を話して女主人に頼んで代わってもらおうか。彼女はそういうことに慣れているし、そつなく保護者をこなしてくれるだろう。うむ、その方がいい。問題は彼女が応じてくれるかどうかだ。そこが難関なのだが、何とか突破せねばならない。

「おじさん、きてくれるよね?」

 にこにこと微笑みながら、子供がそう聞いてくる。この子供は我が来てくれるものだと信じ込んでいるらしい。女主人にこの件を頼み、そして子供に我は行けぬと説得せねばならない。どちらも至難の業と言っていいだろう。この子供はこう見えて頑固なところがある。まさかこんな些細な理由で困るとは想像すらしなかった。

「少し、考える」

 我は答えに困ってしまったので、そうやって誤魔化してしまった。本当に、情けない話だ。

今回はここで終わりです。次の更新までお待ちくださいませ。よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ