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93話:永遠の終結へ

あの男からの手紙を受け取ったのはそろそろ季節の変わり目に差し掛かる日だった。そしてその手紙を託されここ数年の間旅をしていた俺の元へやって来たのは意外な人物だった。

「本当に一国の王子がこんな僻地にいるだなんて思いもしなかったわ。まったくあんた、何してるのよ、こんなところで?!」

手紙を預かって来たという懐かしい・・・というにはその年月を感じさせない大柄の全身ピンクのヒョウ柄タイツを纏った男が呆れた様に言った。

「別に・・・、ここ数年方々を旅しているからな。たまたま寄っただけの小さな村だ。また数日したら此処を離れて別の土地に行くさ。」

「・・・。そんなにショックだったの?やっぱりリディアーナちゃんの事・・」

「だまれ!」

「やあね、図星だからってそんな怒ることないじゃない。ま、こんな僻地じゃ情報もあまり届いてないだろうから教えてあげるけど、先月産まれたわよ。あの子の子供。ちょっと早産で産まれたけど、母子共に健康よ。可愛い女の子だったわよー。髪の色や目の色は男の方にそっくりだけど、顔立ちはまだ赤ん坊だし明確にどっち似とは言えないわね。何にしろあれは将来相当の美人になりそうね。先が楽しみだわ。」

この男は相変わらず自分に耳の痛い話を脈絡もなく喋り続ける。苦々しい思いもあったが,母子共に健康だと聞いてほっとする。そんな自分の思いを見透かしたように、ジークフォルンはおもむろに懐から一通の手紙を差し出してきた。

「誰からとは聞かないで。これを開けるか開けないか、そのまま読まずに捨てたとしてもそれは貴方次第だからあたしには関係ないけど確かに渡したからね。」

そう言いながらジークフォルンは立ち上がって宿の表に繋がる扉へと歩いて行く。

「・・、何処へ行く?」押し付けられた封のある手紙を握りしめ男は問う。

「帰るのよ。あたしだって暇じゃないんだから。それと、これは余計なお世話かもしれないけど、そろそろ一度ぐらい国に帰ったらどう?あの子も貴方の事心配してたわよ。ま、そう言う事だから。また何処かで会いましょう?」そういって大柄のオカマは宿屋を後にした。

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それから数ヶ月後のある晩ーーー

王宮の一部屋にある男達の姿があった。

「来てくれたんだね・・・。ジェラルド王子」その声にバルコニーから人影が出てくる。

「・・・聞きたい事があって寄ったまでだ。」

「そう・・か。とりあえず入らないか?外は随分と冷える。情けない事だが、僕の体にも少し堪えるんだ。

」そういって男は小さな笑みをこぼす。

言われる通りバルコニーから室内へと入り扉を閉め厚手のカーテンを引くと、招き入れた男は咳き込みながらゆっくりとソファーへと身を沈めた。

「座らないのかい?」

「いや、いい・・・。それよりも大分悪いのか・・?」

月明かりの下ではなく、明かりの点された室内で見た男の顔は想像していたよりも酷かった。

「ああ。僕が君に手紙を出したのもその為だ。間に合ってくれて良かったよ。」そう言いながら男はじっとジェラルドの顔を見つめた。

「君も・・・聞いていたんだろう?あの夜に竜の君が語った事を。」

その言葉にはっとしてジェラルドはまじまじと男の顔を見つめ返した。

「知っていたのか・・??」

「・・・。自分の体の事だからね。薄々は感じていたし、特に最近頓に訪れる兄の顔色からも知れる。僕はあとそう長くは生きれないよ。」

何と言って良いかとっさにジェラルドは男から視線を逸らし、そして呟いた。

「あいつは・・・、リディアは知っているのか?」


男は力なくゆっくりと首を振る。「彼女には・・・知らせていない。また泣かせてしまうことになるが、その時には君に後の事を任せたいんだ。手紙に書いた通り・・虫の良い願いだとは分かっているがこれは君にしか託せないことだから。僕と同じように彼女を愛している君にしか・・。

彼女は、僕の閉塞した世界に差し込んだ光だった。僕に光を与えてくれただけでなく、この世でもっとも愛しい希望をも僕に与えてくれた。本当に幸せだったよ。だからこそ君に頼みたいんだ・・・・。」

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この密かな夜の密会の後、半年も立たず、リディアーナ妃の王配であったエドワードの死が国中に知らされる事となり民はその短すぎる死を悼み喪に服した。

そしてその2年後、リディアーナ妃は新たな王配を迎える事となる。その夫はけして出しゃばる事なく、数年後に王となった妻を陰から支え、諸国を巡った経験とその類い稀な知識を惜しみなく提供し、先代に続く善政を敷いたとして記録される。

晩年、リディアーナ王は5人の子供に恵まれたが、次代にはその長子であった娘が王位を継ぎ、3代に渡る名君として歴史書に記される事となる。



長くお付き合い下さった皆様、本当に有り難う御座いました。ひとまずこのお話は終結します。この後、まだ幾つか謎の残る部分に関しての話を数話アップする予定ではいますが、やっと完結させる事が出来た事を本当に感謝しています。有り難う御座いました!!!

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