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拝啓、終末の僕らへ  作者: 仁乃 戀
第三章
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些細な変化

 ふと眼を開ける。

 カーテンの隙間から差し込む光が僕の顔を照らしていた。

 2日目の朝だ。


 「…………はぁ」


 気持ち良さそうに寝ているルームメイトの様子を見て、スマートフォンの画面を確認する。

 まだ6時だ。

 集合時間は9時半。

 起床時間は特に決められていないため、朝食やら何やらを集合までに済ませればそれでいいらしい。


 本当に自由な学校だ。

 ちょっと僕ら生徒のことを信用しすぎなんじゃないかと思うが、もしかしたらこれも学校の意図か何かで、僕らが自立するためにあえてこうしているのかもしれない。

 そうだとすると、流石としか言えない。


 とにかく、二度寝をしたら遅刻は避けられそうにないので、言うことの聞かない身体を叩き起こす。


 「顔、洗ってくるか……」


 すやすやと眠る彼らのことを起こさないようにゆっくりと洗面所に向かう。

 昨日、僕ら4人は23時ギリギリまで話をしていたこともあって部屋に戻ってから寝る準備でバタバタしていた。

 それに、いざ眠ろうとしてもなかなか寝付けず、結局24時頃まで布団の中でスマホをいじっていたのだ。


 要するに何だって?

 眠い。

 それはもう、信じられないくらい眠い。


 人間っていうのは刺激に敏感だ。

 外部から刺激を受けると、嫌でも覚醒するというある意味便利な体のつくりをしている。

 こうして顔を洗えば、眠気くらいは吹き飛ばせるだろう。


 と、思っていたのだが……。


 「…………ね、眠い」


 僕の体のつくりは、他の人とちょっと違うらしい。


 ご飯を食べるのにも早すぎる様な気がするが、このまま部屋のソファでゆっくりしていても、ベッドに戻っても睡魔に襲われそうで怖い。

 遅刻だけは流石に嫌なので、少し散歩でもしようかと部屋を出た。


 廊下はとても閑散としていた。

 皆も同じように疲れているのだろうか、誰一人起きている様子はない。

 静かすぎて逆に不安になりそうだ。


 エレベーターを降りてロビーに出る。

 同じようにここもかなり閑散としていた。

 宿泊行事のときには大体学年に2,3人くらいは起きるのが物凄く早い生徒もいると思っていたが、どうやら僕の偏見だったみたいだ。


 歩いている間にも気を許せば眠りに落ちてしまいそうだ。

 瞼を持ち上げるだけでも精一杯だ。


 ロビーの扉をくぐって外に出ると、まだ朝だというのに少し蒸し暑い空気が出迎えた。

 避暑地のはずなのに、という落胆の気持ちは一旦置いておこう。

 いちいち気にしてると余計暑くなる。


 ホテルから見える小さい湖に向かう。

 湖に近づくにつれて心地良い風が頬を優しく撫でる。

 湖の周りはとても綺麗に整備されていて、樹々の深い緑も光を反射して輝く湖を背に生き生きとしている。

 なんだか清々しい気分だ。


 寝起きのよく回らない頭でぼんやりと湖を見つめていると、とんとんとリズミカルにステップを踏んでこちらに近づいてくる足音が耳に入り、僕の背中でそれが止んだと思ったら、目の前が真っ暗になる。

 柔らかい感触が眼をくすぐり、ふわりとシャンプーの良い香りが漂う。


 「だ~れだ?」


 やけに上機嫌な様子の声で問いかける。

 こんなことをするのは1人しかいない。


 「明梨だろ?」

 「当たり! ふふ、流石私の彼氏さんですねぇ。 自信満々に答えていらっしゃいましたよ?」

 「残念ながら、僕にそんなことをするような人間は明梨以外にいないからね。 僕の友達の少なさを思い知ったか?」

 「それ、ドヤ顔で言うことじゃないからね?」


 と、ここまで小気味良く会話をつないでから、彼女は僕の隣に並ぶ。

 正直、こんなことをされるとは思ってなかったし、背中に2つのクッションが当たっていたことで心拍数が急上昇して余計に汗をかいたが、どうやら僕の気持ちは悟られていなかったらしい。


 「おはよう、優」

 「うん。 おはよう、明梨。 昨日は楽しかったね」

 「うん! でも、まだまだ宿泊行事は始まったばかりなんだし、もっともっと楽しまなきゃね」

 「そうだね。 でも、僕と一緒にいて大丈夫なの? 明梨はみんなから人気なのに対して、僕は相変わらずぼっちだよ?」

 「もう、優のそういうところはちゃんと直す必要がありそうですね~。 大丈夫だよ、昨日私の部屋の女子は優の話で持ちきりだったから」

 「なに、ネタかなんかにされてたんですかね」


 僕の話で持ちきりになることなんてなぁ、と遠い空を見上げて聞いてみる。

 大半の人は、昨日の僕を見て意外に思っているだろう。

 それをネタにされることは分かっていたし、今更聞いても傷つくことはない。


 「まあ、ネタになるといえばネタになるかな? 昨日の優の様子見て、突然かっこいいとか思っちゃったみたいでさ。 私もなんとも言えない気持ちになったんだよね」

 「え、明梨さん? もしかして寝ぼけてます?」

 「寝ぼけてないですー。 まあ、そんなわけで、今日から優はクラスの人気者だから、私と一緒に頑張ろうね! あ、でも、浮気したら私が黙っちゃいないからね?」

 「嘘だろ……」


 どうやら、僕は今日からぼっち下克上ハーレム系ライトノベルの主人公(笑)になってしまったようだ……。


 「というか、その人たちに付き合ってることは伝えたの?」

 「ううん、伝えてないよ。 だってーー」

 「僕が未熟なせいですねわかります」

 「うむ。 分かればよろしい」


 どうやら、僕はもう1段階成長する必要がありそうだ……。


 「ねえ、そろそろ戻ってご飯食べようよ。 ここにいると汗だくになっちゃいそう……」

 「うん、そうだね」


 こうして、ぼっち脱却大作戦の第2フェーズが始まるのだった。

いつも読んでくださりありがとうございます!


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