94.幼き頃の夢物語
少しシリアス?
学院に入学しても日課は変わらない。
相変わらずレストとフォスターは朝早くから起き出し日課に精を出していた。
フォスターは仗を使って、レストは練習用の剣を使用して軽く打ち合っていた。その傍らには中庭の小さな噴水がある。その噴水でフォスターの契約獣である水竜の幼生であるオルアはプカリと気持ちよさそうに浮かんでいた。噴水の縁の上に陣取って座り込み前脚で水面を突いて波紋が出来るのを楽しんでいるフォスターの契約獣であるフィオルがいた。
その光景を傍に控えて見ているレストの侍従ファルデルが中庭の両側にある出入り口である片側―――厨房に近い方向にある出入口の方に注意を向けた。レストの侍女であるフルーレが何時もの様にお茶を運んできたようである。その後ろには見慣れない人物。だが、知った者であった。
「レスト様、フォスターさん、おはようございます。お茶をどうぞ」
「おはよう。フルーレ。ん、ありがとう」
「おはようございます。フルーレさん。お茶頂ます」
「どうぞフィオルちゃんとオルアちゃんもどうぞ。お水ですよ」
フルーレのその言葉に嬉しそうにフィオルは尻尾をふりふり駆け寄ってきた。フィオルものんびりとだが嬉しそうに水から出てパタパタとフルーレの側にやってくる。二匹ともお行儀良く水皿が出されるのを待つのだった。そんな二匹にフルーレは良い子ねとほほ笑んで二匹の前に差し出したのだった。二匹はその水を一心不乱に飲み始めた。何といっても“水の精霊王”の水なのだ。とてもおいしいと二匹は知っている。
「レスト様、紹介しますね。新たに侍女に加わるイルティです」
フルーレは己の後ろの侍女をレストに紹介した。フルーレに紹介された侍女がレストに挨拶をする。
「この度レスト様の侍女になりましたイルティです。精一杯お仕えさせていただきます。我らが主」
レストはまじまじと挨拶をする侍女を見る。確かにおぼえがある。あの時はまだ小さかった(・・・・)。彼女はレストたちが助けた半精霊たちの一人であった。
「あの時の子たちの一人か」
「そうです。あの時はありがとうございました。我々が此処に在るのもレスト様のおかげです。我々はレスト様のお蔭で救われたのです」
「俺だけの力じゃないよ」
苦笑気味にレストは応えた。それに――と続けるレスト。
「別に恩義に感じなくても自分たちがやりたいことをやればいいんだけどな」
「ふふ。レスト様。私たちはやりたいことをやっています。貴方は至高の存在です。精霊がそうである様に、我々(エルフ)も」
「まぁ、お前たちが良いのなら、別に構わない。これから宜しくな」
「はい、宜しくお願い致します。あの時こちらに残った者たちはカルスタール様の計らいでレスト様に仕えるに支障 無い様にして頂きました。今日より貴方様に皆一同仕えさせて頂きます」
「うん…。うん?皆?」
「えぇ。レスト様は子爵として領地もお持ちになることになられたのでそちらの方へ行っている者もいます。護衛士となる者もいますので後程紹介があると思います」
「領地?」
「はい。旧タザス領シェスカを拝領なさっています」
「あぁ~」
レストは心の中で父さん!と叫んでいた。レストの故郷であるシェスカをカルスタールはレストの領地としたのだった。爵位こそおまけであったのだ。レストはやってくれたな~と頭が上がらない思いであった。これでレストは思う様に故郷を発展させていけるのだ。大切な大切な人たちが居る場所を。分かりにくかったがレストにとって最高のプレゼントであった。
彼の地は今カルスタールによって大分立ち直ってきている。だが、前領主の不当な課税や整備不良の街道などを正当なものにする目途が立ってきた所である。まだまだ、堕ちた基盤は元に戻ってはいない。元々は大街道が通っている為シェスカ領は栄えていた領であった。前領主より数代前からの悪政によりシェスカ領は衰退の一途を辿っていたのだ。更に鉱山等もあり細工物等も有名だった領である。だが、細工が得意なドワーフ等の亜人たちを追いやった為細工物も廃れていってしまったのだ。
レストは精霊たちから栄えていた時代のシェスカ領を聞いていた。それは寝物語であった。夢物語であった。だが、レストは夢物語を現実にする権利を手に入れたのだった。
カルスタールはレストに夢を叶えるチャンスをプレゼントしたのである。
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