95.委員長
お久しぶりです。
眼鏡を掛けた優等生と云うに相応しい相貌の彼。外見だけでなく、正に正しく優等生と云える。
彼の名は、オフィクレイド・フェオード。今年の中等部新入生である。
その彼は今年こそ、と意気込んでいた。
何を?というと、学級委員長にならないことを、である。
何故、学級委員長か、というと遡ること六年前、初等部で学級委員長になってしまったのが発端である。
さて、六年前の彼が学級委員長になったクラスにはワイズナー公爵家のエドワード、ガート公爵家のレイノルドもいた。
そもそも、この様なクラスとなると貴族と平民の垣根が無いとは言え、学級委員長に公爵家の何方かが教師により指名されることが多い。だが、件の二人である。指名された先から無理、と却下の方向であった。何故ならば、既に幼児期から長らく留守にすることがしばしばであったことからの言であった。
そうすると誰にするかと教師が次に高い爵位の子息を指名しようとしたところエドにより彼、オフィクレイド・フェオードを指名したのだった。何か確信的なことがあったのか、というとそうでもないらしい。だが、この時期の子供などは大体同じものだ。貴族の子弟となるとやはりその辺は違ってくるのだが、貴族の子弟全体を見れば似たり寄ったりの物だろう。能力的には。
まぁ、兎に角この時エドの指名によりオフィクレイド・フェオードは学級委員長になったのだった。
しかし、野生の勘なのか精霊の囁きがあったのか定かではないが、彼は人をまとめ上げるのに長けていた様だった。エドの目は確かであったのだ。そしてエドやレイにとっても彼は掛け替えない存在となるのである。
希少な二人のストッパーとして・・・。
これに関してはオフィクレイドはこちらの方が主なのではないか、と疑っている。
この様にしてオフィクレイドは初等部一年での学級委員長となったのだった。
だが、それから彼の受難は続く悉くその後の学年でもエドとレイと同じクラスになり、毎年のように教師から学級委員長に指名されたのだ。そして、誰も反対しない。誰もエドとレイのお守りをしたくないが為に。そう、二人は次々と問題を起こしていった。それを止める若しくは事前阻止が出来る者は教師には存在せず、同学年ではオフィクレイドのみであったのだった。
そんなこんなで初等部六年間はエドとレイのお守りを学院側から押し付けられた苦労な人だったのである。
だが、中等部ではレスト等もいるから解放されるであろうと予想される。そう、また同じクラスなのだ。引き続き同じクラスなのは一抹の不安ではあるが。
オフィクレイド・フェオード、彼は本を愛している。
彼は代々文官の家の出である。
故に彼もまた、将来は文官になりたいと考えているのである。必ずしもならなくてはならないという制約はないのだが、文官の父の背中を見て育ったのだからそれも当然と言えるだろう。
文官は様々な分野の知識が必要である、と彼は考えている。それは世間の流行等も込みで全てである。どの様なこともくだらない知識など無いとは彼の持論だ。
全てのことは何処かで繋がっているのである。一見して関連など無いと思われることでも同じ世界の中で起きていることなのだ。繋がりが無いわけが無い。
例えば買い物をするのに徒歩で行っているので、乗り物は使っていないと買い物をする人は言うかもしれない。
だが、それはそう言えるであろうか?
直接買い物する人が使っていないからそうだとは言えない。物を運ぶときに荷馬車を使っているかもしれない。そういう意味では買い物をしている人は間接的には使っていると言って良いだろう。
品物に関することについても様々なことが考えられる。そうなると交通等も関わってくる。運ぶ荷馬車を引く馬の数は?運ぶ距離は?運ぶまでにどのくらい時間が掛かる?等々色々な関わりがあり、考えられることも様々だ。文官とは情報を様々な形で使う者たちである。それ故無駄な知識など無いと考えるのだ。
本と云うのは知識の宝庫である。その中には知識がぎっしりと詰め込まれている。故に知識を愛する彼は本を愛している。
オフィクレイドは今年こそ図書委員なりたいと思っていた。
が、その様なオフィクレイドに挨拶をする声があった。
「おはよう!委員長!」
この声は図書委員になれない元凶と云える声だった。
振り返り挨拶を返す。
「おはよう、エド。レイ」
溜息と共に。
“委員長”という言葉と共に去来する予感。
何となく今年も駄目な気がしてならないオフィクレイドであった。
そして、彼の予感は数時間後に的中するのである。合掌。
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