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90.紹介

一匹目しか紹介が出来ていない…。

二匹ともする筈だったのに。

「じゃあ、俺たちの自己紹介は終わったところで次はその仔らを紹介してよ」


 ひとしきり笑い終わった後でエドがレストの頭の上のフィオルとフォスターの肩にいるオルアを交互に指差して言った。


「あぁ、そうだな」


 そう言ってレストは頭の上のフィオルを頭から降ろして胸に抱いた。


「フィオルだ。俺の契約獣だ」

「へ~」


 レストの紹介でエドはフィオルをまじまじと見つめる。次の瞬間には色々と角度を変え矯めつ眇めつ真剣に見やったのであった。

 その真剣さに驚きつつ、レストは問うた。


「落ち着け。どうした?」

「う~ん。この仔普通の魔狼じゃないよな?」

「あぁ、うん、まぁ…そうだな」

「歯切れ悪いな…言いたくないなら言わなくていいぞ?」

「いや、大丈夫だ。フィオルは攫われてきた仔だからな」

「あぁ、この前の大捕り物なぁ」

「確かエドたちも神殿とは懇意だったな」

「神殿の噂?」

「その通り。なら尚更問題無いな。フィオルは黒妖犬(ガルム)だよ」

「「え゛!?」」


 エドの驚きの声と大人しく会話を聞いていたレイの驚きの声が重なった。レイは俄然興味が沸いたのかフィオルをジッと見つめている。


「うん、ちょっといい?」


 エドはフィオルを見つめて許しを求めた。それに「キュンッ」と鳴いてフィオルは了承したのであった。

 了承を得たエドはフィオルをレストからそっと受けって抱き上げる。耳の根元や顎下を掻いてあやしつつ見分する。


「あぁ、確かにガルムだな、この仔」


 エドのあやし方が上手いのかフィオルはブンブンと尻尾を振っている。


「貴種なんだな」


 ひょいとエドからフィオルをレイが取り上げて何気なく言う。が、何故かフィオルはレイに抱えあげられた時点で尻尾丸め、足の間に挟んで少し震えている。怯えられていたのだった。


「何故だ…」

「あー、レイって何故か初対面の動物たちに怯えられるよな。別に威圧とか何もしてない筈なのに…」


 レイの落ち込んだ呟きに対してエドが憐れみを含んで言ったのであった。


「慣れれば大丈夫なんだけどな。ガルムならすぐ慣れれるって!」


 エドが慰めの言葉をレイにかける。


「良い。どうせ何時ものことだ」


 立ち直ったらしい。


「貴種?」


 そんな二人を見ていたレストとフォスターはレイの言葉に首を傾げる。確かに希少種と呼ばれる者だということはフェシェイドから聞いていた。だが、貴種という言葉は聞いていない。


「貴種は、希少種の中でも特殊で“王”とも呼ばれる。そのガルムは言わばガルムの王と言った所だな」


 契約獣の紹介をしたらとんでもない新事実が出てきたのだった。レストは思う。ガルムたちは怒っているのではないのか…と。

そんなレストを知らずフィオルは未だレイに抱えられて固まっているのであった。

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