71.散歩と邂逅11
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今回はちょこっと事件です。
フォスターと別れた後、レストはまた倉庫街の辺りに戻っていた。散歩の続きである。
倉庫街辺りと言っても実際は住宅街である。倉庫街のと呼ばれる倉庫街の塀の東側は何の変哲も無い住宅街である。この辺りは一般人が住む住宅街である。一般官吏もこの辺りに住む者が多い。丁度城の西側に当たり、出勤に重宝する距離なのだ。ギリギリまで惰眠を貪りたい者にはもってこいの場所である。 まぁ、この近距離が祟って、緊急時には真っ先に召集される場所ではあるのだが…。一長一短と言ったところか。
住宅街であるが故に他にも色々あるのだ。パン屋などは言うに及ばず食事処、青果店、八百屋、肉屋、魚屋、etc。そして、探偵事務所、出版社というところもある。
探偵事務所はあまり情報は公開しない。それが商売道具であるから仕方ないところだ。故にあまり顔は出さなかったりする。とは言っても探偵事務所の所長とは仲が良いので普通に一緒に遊びに出たりはする。歳は離れていても良い友人である。ちょっと大人気ないのだが。そのような事情により今回は探偵事務所には顔を出さないことにする。
出版社はエトルア社と言う出版社である。くだらないゴシップ誌から新聞、エッセイ、小説、専門誌、etcという全てのジャンルを網羅している一大出版社である。何時からあるのかという程前からあるらしい老舗である。その莫大な情報はその神殿にも張る情報収集能力にある。いったい何処からこんな情報を…といった情報まで掴んでくるのだから不思議である。ここも情報が商売道具であるので余り情報を見せてはくれない。だが、それでもちょっとした情報ならば提供してくれるのだ。
「こんにちは」
レストは出版社のドアを開ける。
「こんにちは、レスト君」
愛想良く挨拶を返しくれるのは出版社の社長代理その人であった。この出版社の社長を見たことがある人は居ないという。かく言う社長代理すら会ったことが無いとか。不思議である。本当に社長は存在するのか?ならば何故この出版社が存在しているのか?という疑問が多々出てくる不思議な出版社なのだ。実は精霊王たちは知っていると実しやかに囁かれている。本当のところ当たらずとも遠からずなのだが。
そんなエトルア社を今日の散歩の最後にしようと思いながらレストは少々の情報収集をすべく社長代理と世間話に興じたのだった。
レストが出版社から辞した時、夕の四刻半となっていた。フォスターを迎えに行くのに丁度良い時間だと思い、その足を神殿に向けたのだった。
少し小走りに走る。ゆっくりと歩いていたのでは30分以上かかってしまう。それ程王都は広いのだ。しかも住宅街は北側にあり、神殿は南側である。ほぼ反対側にあると言って過言ではない。さらにレストが住むファガー家の屋敷は王都の東北側にあるのだ。フォスターを急かして歩かせるわけには行かないのでレストの方が時間短縮の為に走ることにしたのだった。
夕の五刻前に神殿に到着したレストは神殿の裏門から神殿の敷地に入っていった。神殿関係者の宿泊施設は神官たちが暮らす住宅のある神殿の裏に孤児院と同様に併設されている。宿泊施設の受付にレストは足を向けた。
「こんにちは」
レストが挨拶をすると受付に入っている神官も顔を綻ばせて挨拶を返した。
「こんにちは、レスト君。今日はどんな用事かな?宿泊所に知り合いでも?」
「うん、そう。フォスター・フィスと言う子なんだけど。約束してるんだ」
「あぁ、北の神殿長のお孫さんか。連絡来てたね。でも、まだ着いてないよ」
「え?おかしいな…。分かれたのは一刻半前何だけど…」
「何処か寄ってるのかもね。王都には初めて来るようだし」
「……。ちょっと探してみるよ。もし、着いたら連絡して欲しいんだけど」
「分かったよ。気をつけて」
「ありがとう。じゃぁ」
何か悪い予感がするな…。あんなことがあった後だし、ちょっと風霊に訊いてみよう。
「風の子。ちょっと訊きたいんだけど、フォスターを見なかったか?」
そうレストが風の精霊たちに尋ねるとすかさず返答があった。
(みなかったよ)
(みなかった)
(とちゅうまでみたよ)
(ちゅうおうどおりのおかしやさんのまえ♪)
(おいしそうっていってた!)
(そうそう~)
(そこでおわり?だった)
(きえた?)
(みえなくなっちゃった)
そんな風の精霊たちの声にフェシェイドが同意を示す。
(確かに見えないな)
そのフェシェイドの言葉に益々レストは悪い予感が強まったのだった。
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