66.散歩と邂逅6
やや陛下が暴走しています。
やはり駄目駄目な陛下です。
レストは暫くエルーたちと会話を楽しんだ。
道の端ではあったが長い時間立ち話も何だということで喫茶店に移動している。レストは散歩の時は別段お金関係は持ち歩かないので宰相夫人であるルワルアにお茶をご馳走になった。ルワルアが是非にとのことだったので断るほうが無礼に当たる。有難くご馳走になったということである。
この時に子猫のリュリュの話もした。リュリュの拐かしの件は知らないと言うことだったが、リュリュ自身のことは知っているとのことだった。そもそも彼の仔猫が珍しいのには訳があった。その訳に関わっていたのだ、あの陛下が…。
「リュリュのことなら知ってるよ?お友達だもの」
エルーの言葉である。
「あら仔猫のリュリュちゃんなら私も知っているわ」
宰相夫人ルワルアの言葉である。
「だってあの仔陛下が助けた仔だもの」
「そうね、その後、私がお世話したのよ」
そう言って二人は顔を見合わせて「ねー」と言っている。
レストは少し混乱した。そもそもどういうことなんだ?と。“風の噂”に上らない話とは一体どういうことだろうか?と。
そもそもの話をエルーがしてくれたのだった。
「うんとね。陛下とちょっとばかし砂漠の辺りに遊びに行ったんだよ。2ヶ月くらい前に」
エルーはそう話し出した。
その時にリュリュを発見したらしい。親猫は側に居らず、衰弱して弱っていたという。オアシスも近くには無かったのでキャラバンで飼っていた猫の仔が某かの理由で落ちたかして置いていかれてしまったものだと見られた。
水を与えるのは簡単であった。何しろ陛下は水の精霊王の息子であるからして。だが、それだと毎回毎回水を出してやって飲ませてやら無いと駄目だなぁ、ということで丁度持っていた親指先大の精霊石を使ってしゃぶっていれば自動的に水分をとれるという条件に設定した精霊石をリュリュに与えたらしい。
此処からが頭の痛くなる展開である。
リュリュは『祝福持ち』でしかも天性的特長で鉱石と相性が良かった。故に奇跡が起きたのだ。
リュリュはその時まで真っ白い仔猫であった。陛下が例の精霊石を与えた途端、精霊石はリュリュに取り込まれたのだ。これは条件が重なった故に起きた奇跡であった。
もし、それが精霊石でなかったら。もし、リュリュが生命の危機に瀕していなかったら。もし、リュリュが『祝福持ち』でなかったら、その奇跡は起きなかったのであろう。
そして、例の精霊石を取り込んだリュリュは世にも珍しい青銀の毛を持つ半精霊になったのだ。
やっちまった感が半端無い…。
そう、半端無いから陛下は白を切った。たまたま、陛下はこれを陛下の厳重な結界内で行っていた。それ故真実を知るものはエルー以外いない。これ幸いに白を切ったのだった。
そうして、珍しい仔猫を城に連れ帰った。そして、宰相閣下に見つかり取上げられて宰相夫人であるルワルアが世話をすることになり。元気になったら王都の猫たちと仲良くなり一緒に暮らすようになったという。時たま里帰りをするように宰相宅に顔を出すらしい。そして陛下もリュリュに会いに行くという。懐いていて可愛いくて仕方ないらしい。
まぁ、一言で言えば巧くやったのだ。陛下が。
何やっちゃってんの陛下…、と思うレストは悪くないであろう。
それはもう、新しい生き物作ったんじゃないか…と。いきなり現われたその様な存在だからリュリュ自体は“風の噂”にはなっていたのだが、そんな裏があったとは誰も思うまい…。
この話を聞いて少し躊躇したがやはり伝えておくべきだろうと二人にはリュリュの失踪のことを伝えた。
二人とも憤っているようだが、リュリュのことは事件の一端である。憲兵や神殿も動き出しているであろうことを伝えてレストは二人を宥めた。二人にも気を付ける様に言うとレストは席を辞した。
そして、更にレストは散歩を続ける。
次は倉庫街の方へ向かったのだった。
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