64.散歩と邂逅4
今回は猫です。
傍から見るとレストが猫団子の中にいます。
レストは次に学生街に足を向けた。その道々には猫・・・。その道には人は居なかった。あたり前である。そこは本来なら道ではない。所謂、塀の上である。
レストが通る“道”とは通れる場所なら何処でも道なのである。故にそこが屋根であろうと塀の上であろうと木の上であろうと関係ないのである。そんな“道”には大抵その道を利用する動物が居る。猫然り、鳥然り・・・。そして塀の上には猫たちが居たわけである。
にゃー。にゃん。にー?にゃにゃにゃ、なーう。
レストは塀の上に居る猫たちと話をしている。塀の上でヤンキー座りをしているレストの周りには十数匹の猫が群がっている。小さいのから大きいのまで勢ぞろいだ。数匹はレストにへばり付いている。仔猫たちだ。情報提供と遊びを兼ねているらしい。情報提供のお礼にもなっているのでレストに否やは無い。時たま首筋を擽る仔猫たちの毛が少々くすぐったいだけである。
『リュリュは昨日、此処には遊びに来なかったな』
左目の下辺りに古傷のある貫禄ある猫が髭を揺らしながらレストに話す。そのことに反応した仔猫たちは少し苛立たしげにその尾をレストにタシタシと打ちつける。
『この仔たちはリュリュが大好きだから残念だったんだよ。今日も来ねぇしな』
貫禄がある猫―――この辺りのボス猫バーチェストが目を眇めて言った。それにレストは苦笑いして返す。
「バーチェスト、そのリュリュって仔が誰かに拐かされた。昨日のことらしいんだが、何か知らないか?」
『昨日は会ってねぇしなぁ』
『リュリュ、たぶんおひさまがあのへんにあったときまではおさんぽしてたよ。みかけたもん』
レストの頭にへばり付いている仔猫が言った。そして仔猫が示した太陽の場所の方向を見上げた。その拍子に仔猫は後ろ足が離れてプラリと宙に揺れることになった。面白いらしくにゃーにゃーと可愛く鳴いている。レストは見上げたまま成程と頷く。その拍子にまた仔猫が揺れる。レストが見た方角に太陽がある時間帯。それは昼を少し過ぎた時間であった。
「ん、そうか。分かった。ありがとう」
そうレストが言って頭を撫でてやるとどういたしまして、と言うように仔猫はにゃっと鳴いたのだった。
また何かあったら情報提供よろしくと言ってレストは猫たちと別れたのだった。
歩く道すがらレストはフェシェイドと通じて風の精霊たちに依頼をする。リュリュが居た時間帯にリュリュが居た場所の近くにいた人物たちを洗い出すように頼んだのだ。
拐かしを行っている人物たちの中に『祝福持ち』が存在する可能性がある。水か風の精霊の加護を持つ人物だ。その人物が“姿隠し”を使って犯行を行った可能性がある。痕跡を残さないと言うことは非常にその可能性が高い。だが、“姿隠し”は相応の精霊が加護に憑いていない限り非常に解けやすいものだ。故に“姿隠し”が出来ている間にリュリュを袋、または鞄などに居れて連れて行ったのだと思われる。その事を踏まえたうえで鞄や袋を持った人物且ついきなり気配が消えたり現われたりしていた人物という条件を付けた。
レストがよろしく、と言うとすぐ近くに居た風の精霊たちはレストの周りをぐるりと回ってまかせて、と言って散って行った。
学生街に入ると途端に学生たちの気配で賑やかになる。今は早い時間帯に授業が終わった学生たちの声が聞こえてくる。学生街は学生たちの下宿と学生向けに建ち並ぶ商店が多くある。だが、学生街の土地を占めるのはやはり学院と学術塔、図書館である。商店は中央の大通りに面する場所から学生街に入って行く場所に多く存在する。他には下宿兼食堂などになっている所もある。
様々な学生たちが愉しげに放課後のショッピングや買出しなどをしている。後数ヶ月もすればレストも彼らの仲間入りである。学校に通ったことの無いレストは数ヵ月後を楽しみにしていた。その様にレストは愉しげに歩いていく学生たちの間を縫って歩く。ふと前方に見知った人たちを見付けたのだった。
見知った人物とはエルーであった。そしてエルーと愉しげに親子のように手を繋いでいる貴婦人が一人。現宰相の奥方その人であった。
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