61.散歩と邂逅1
レストがファガー家に養子に入り、はや2年が経とうとしていた。あと数ヶ月もすれば王立中央学院、通称『学院』の中等部に入ることとなっている。
養子に入ってからは学院に入るために勉強をしていた。まぁ、とは言っても然程大変なものではなかった。貴族のための作法は優秀な師に幼い時から師事していた。それは加護精霊であるフェシェイドなのだからあたり前に身に付くであろう。
そもそも『祝福持ち』という者たちは全体的にハイスペックに出来ているものなのである。勉学も教養も武芸も他の唯人では適わない。ただ、一つ例外があるとすれば感性の問題だ。芸術や美醜においては感性の問題であり『祝福持ち』如何は問わない物なのである・・・。
レストはその様に勉強に励んできたのだが、励んだのは数ヶ月間だけであった。言わずもがな『祝福持ち』であるためだ。大体のことは少しすれば理解も動くことも可能なのだ。なので此処のところは歴史一色であった。なにせ歴史は色々な角度から様々な書物がある。また、歴史上の人物たちは数多く居るのだ。その様々な所をレストは吸収しているのだ。歴史に限りなど無い。
勉学の日々であったかと言うとそうでもない。優秀なレストには多くの時間があった。その他は武芸の師であるミルシェと試合をしたりエアリードと練習をしたりエアリードと遊んだり元孤児仲間たちに会いに言ったりとなかなか充実していた。
その中でも毎日欠かさずにやっていることがある。
それは散歩である。
毎日、歩く道順と時間を変えて王都内をくまなく散歩するのである。此処まで来ると分かる人は分かる。 それは散歩と言う見回りである。
この日課レストの習慣の一つだ。
自分の縄張りを見回る獣のそれと同じことである。これをやらないと落ち着かないのだ。困ったことに・・・。ファガー家の人々は理解あるのだが。
そして今日も今日とて散歩に繰り出しているのだった。
エトルア王国の王都はエルレイシアと言い、『水の都』と名高い。そんな王都の象徴は王城と中央広場である。
王城は水に囲まれた城でその優美な姿を水に映す。その光景はまるで水の中に城が建っているようである。
そして中央広場である。中央広場はその名の通り王都の中心に位置する広場である。そこには見上げる程の巨大な噴水があり待ち合わせ場所としても人気のある場所である。観光の人気スポットの一つだ。
中央広場からはそれぞれの区画に分かれているのが分かる北には王城に貴族街。北西には商会や倉庫街。南西には職人街に神殿区。南東には学生街に学院。
レストはまず教会に向かった。レストが住む北東の貴族街とは対角にある。大きな王都だが、レストにとっては端から端への距離は苦にならない。噴水広場まで出て真っ直ぐに南に向かう。右手には歓楽街があり今日も賑わっている。警邏隊の姿もあり治安は上々である。それでも悪人というものは居るものだ。 人間社会の闇はなくなることは無いだろう。
様々な工房が建ち並ぶ区画を通り抜けると神殿の裏手に出る。神殿の裏手は神殿関係者の生活区となっていて神殿関係者の居住がある。そしてそこには教会に併設されている孤児院もある。散歩ついでに孤児院に寄って子供たちにお菓子を渡しに来たのだった。
レストが来た時は丁度昼寝の時間の前で外遊びから室内に戻ろうとしていた所だった様だ。子供たちはレストに気付くとレストに走り寄って来た。
「レスト兄ちゃん!」
「今日はどうしたの~?」
口々に質問しつつレストに引っ付く。
「あぁ、今日は遊びに来た訳じゃないんだ」
そんなレストの言葉に子供たちはえ~、と不満を口にする。そんな可愛らしい子供たちの反応にレストは苦笑し
「今から昼寝だろ?」
と宥める。そこに孤児院の院長である神官の女性が来てそんな子供たちを見て苦笑した。
「あら、お昼寝の時間なのに戻ってこないと思ったらレスト君が来ていたのね」
そんな院長にレストは挨拶をする。
「こんにちはアウノア院長」
「こんにちはレスト君」
「実は今日はこれをお持ちしたんです」
そう言ってレストはバスケットを掲げた。ふわりと風が舞いそのバスケットの中を想像させる様な匂いを運ぶ。すると子供たちは「きゃあっ!」と喜んだ。それはそれは甘い匂いがしたのだった。
そしてレストは子供たちに告げるのだ。
これは皆が大人しくよい子に昼寝をしたら食べられるよ、と。
まだまだレスト歩き回ります。
そして事件は数話起きません。その情報は次話で出てきますが・・・。
取り合えず知り合いに会って行きます。
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