60.間幕:省エネ転移魔法陣の完成
さて、レストたちが帰ってから数日後、アースルトのもとに二人の少年が現われた。『精霊の道』を通ってきたようだ。その場にいきなり現われたからだ。
そして二人の少年はアースルトに挨拶をした。
「やほー!こんにちは!アースルト!!」
「こんにちは、アースルト」
先に元気に挨拶をした少年は紅い髪に緑の眼をした活発な印象がある整った容姿を持つ少年である。元気な少年の隣の少年は涼しい目元を持つ光りが当たると青色に見える黒髪と紺碧の瞳を持つこれまた怜悧な容姿の整った少年である。
そんな二人にアースルトも挨拶を返した。
「こんにちは、エドにレイ」
「それにしても、何か濃いよ」
「そうだな。何時もより精霊たちの数が多い」
そう言って二人は目がチカチカするといった風に目を瞬かせた。エドと呼ばれた紅い髪の少年は腕で目を擦っている。
彼ら二人もまた、『祝福持ち』であり精霊が視える。それ故に光りを纏う精霊たちが多く居るため目がチカチカするようであった。
「ま、そうだろうな・・・まだ気配が残ってるから精霊たちが此処に残りたがってるからなぁ」
「ん、誰か来たのか?珍しいな」
冷静に聞き返したのはレイと呼ばれた少年である。この少年たちは容姿に違わずその性質は動と静にあるようだ。とは言ってもこの少年たちは同類である。ある部分では・・・困ったことに。
「そうそう。まだ、二人は会ったこと無かったんだったな。『精霊の寵児』だよ」
「あぁ、そういえば遠出していて合いにいけなかったんだよな」
「確か、エアの誕生日の時だったか」
二人はそう言って成程と頷いたのだった。
「『精霊の寵児』の気配が残っているなら頷けるな。精霊たちはそりゃあね、無条件に惹かれる存在だし」
「どうして精霊たちが多いか理由は分かった。で、例の頼んだ物は出来上がったのか?アースルト」
「当たり前だよ。出来てるさ。でも、なんで俺に頼むかな・・・錬金術しか魔術国家の知り合いに頼めばいいものを・・・」
俺は鍛冶師なのに・・・と溜息を吐くアースルトに対してレイは言うのだった。
「何故も何も、専門が鍛冶なだけで大体の作り物は出来るし他の誰よりも詳しいじゃないか。アースルトより生きているのなんて居ないんだからな」
「まぁ『始まりの人』にして『始めの半精霊』は伊達ではないからなぁ」
レイの言葉に苦笑するアースルトであった。
エドとレイに催促され、依頼された物をアースルトは取り出した。それは大人の手のひらサイズの板であった。だが、その板は唯の板ではない。オリハルコン製の板に精密な魔法陣が描かれている。幾重にも重なった幾何学模様に見える魔法陣だ。見る者が見れば複雑だが最も効率が良い理に適った素晴らしい出来の魔法陣である。また、見た目も素晴らしく良い物だった。
だが、最も驚くべきところは魔法陣を描いている物質の方である。それは精霊石の欠片で描かれていたのだ。精霊石を使用することで魔力消費量を軽減しているのだ。精霊石は単体では精霊の力、精霊力が宿っているとはいえそれは微々たるものである。故にそれは屑石と同じ価値しか見出されていなかった。それを利用しようとし、実際に実践してみせた少年二人は正に天才であった。
天才と言う名の問題児とも言えるのだが・・・。
「出来上がったのは出来上がったんだが・・・。多分術式調節を確りやらないと使い物にならないと思うぞ」
「それはまた実験するから好いや」
とケロッとエドが応えた。
「取り合えず省エネ出来たんだろ?」
と言うレイに
「それは出来た」
とアースルトは答えたのだった。
「なら精霊石の欠片で魔法陣を描けば魔力消費量が軽減されることが実証されたわけだから今回はそれで好いんだ。この魔法陣には術式調整を記憶する部分があるわけだから、その辺はおいおい実験する」
それはそれは好い笑顔でレイが言い切った。
エドとレイ、二人は正反対の様で魔術馬鹿というところは全く一緒なのであった。
こうして着々と魔力が少ない者も使用できる転移魔法の開発は一歩前進したのであった。
因みにこの二人とレストとは2年後、学術学院の中等部入学式にて邂逅することになる。
今回は主人公不在の回です。
伏線的な何かだと思ってください。学園編にて詳しくは出てきます。
そこそこ先の話になります。
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