59.奇跡の鍛冶師10
レストはセイルと一緒に暫くミルシェとアースルトの様子を見ていた。なかなかミルシェとアースルト二人の遣り取りは見ている方を飽きさせないのだ。そんな二人から目を離せないのであった。
一通りアースルトに苦言を呈していたミルシェであったが、とりあえず満足したらしい。二人の遣り取りはミルシェの「慎重にやるように」の言葉を最後に終わった。流石のアースルトもばつが悪そうに眉を下げつつ笑っている。ちょっと心配な笑い方である。何故ならそれは失敗するかもしれないという部分が多分に読み取れる笑い方であったからである。ミルシェもその笑みに諦めにも似た笑みを浮かべるのであった。それがアースルトらしいのだから仕方ないという思いがあるのであろう。
レストは溜息を吐いているミルシェをふと見た。そういえばミルシェもアースルトが造った刀を所有している筈である。だが、それらしい物を見たことはなかったのだ。
(気になる・・・。多分俺と同じで形状変化をするタイプだろうな・・・。だから見たことないのかもなぁ)
レストはぼんやりと考える。そして、聞いてみることにした。
「なぁ、ミルシェ。ミルシェの武器はどんなものなんだ?」
そんなレストの質問に対してミルシェはクスリと笑んだ。
「どんな物だと思います?」
少し悪戯じみた笑みを浮かべてレストに疑問を返してきた。
「俺と同じ刀剣だとは思うんだけどな・・・。実際見たことないからなぁ。肌身離さず持っているだろうから今は小刀とは思うんだけど」
「ふふ。その通りですよ。私が持っているのは形状が3パターンあるものです。2パターンは今レスト様がおっしゃったとおりですよ。普段の形状はレスト様も目にしていると思いますよ?」
「普段?」
「ええ。元形状は刀ですが、普段は大きさも形も違いますね」
そのミルシェの言葉にミルシェの隣から笑い声が聞こえた。アースルトである。込上げる笑いを耐えながらヒントをレストに与える。
「っくく、あの時は驚いたんだ。と言うかっ、っは、笑えた。くふっ。第二形状は持ち運びや敵の目を欺くために隠し持てる形態って言うのは分かるけど、まさかメイド姿で違和感無い形状で、って選んだ形だったからさっ。ぷふっ」
その時のことを思い出したのかアースルトは噛み殺しきれぬ笑いを漏らしながら途切れ途切れに話した。
普段メイドとして持っていて不自然ではない物・・・。普段のミルシェが持っているものを考える。確かにあれをほぼ何時も持っていた・・・。そうか・・・あれは装備品であったのか・・・、とレストは思う。普通に使っていたことも確認している。実際目の前で掃除をしていた。確かに。
「あー、もしかして、あれのことか?箒・・・というかモップ?」
とレストが言った瞬間、堪えきれなくなったアースルトが爆笑した。そしてミルシェは良い笑顔で
「その通りです。レスト様」
と言ったのだった。
ちょっとばかし思いつかない形状であった。まぁ、良い擬態かもしれない。思いつかないということがそれを証明している。
因みにミルシェの武器も失敗作?であるらしい。正確には失敗ではなく、中途半端な半精霊のミルシェを心配した風の高位精霊が宿ったらしいとのこと。
この風の精霊は“小さき子”である下位精霊のミルシェを心配する兄貴分の精霊でありちょっとばかり過保護なようだ。ミルシェは普通の下位精霊たちの用に拙い自我しか持ち合わせていないわけでは無いのでその心配は無用な心配だと言っているのだが聞き入れないらしい。まぁ、良い関係を築けているらしいのでそこら辺の心配は無いだろう。ミルシェもグレるということはないであろう。それこそ自我が確立しているのだし。
そんなこんなでレストはレスト唯一の武器を手に入れたのであった。
アースルトに礼を言い、ミルシェと供に屋敷に戻るのであった。
今回で『奇跡の鍛冶師』は終了です。
意見、感想などあったらお願いします。
リクエストはいつでも受け付けていますのでお気軽にどうぞ。
お気に入り登録していただいている方有難うございます。
何時も読んで頂いている方も有難うございます。
今後もよろしくお願いします。




