58.奇跡の鍛冶師9
なんとアースルトの造った刀は半精霊であった。実体を持った精霊であるということだ。しかも高位精霊に匹敵する力を持ち合わせているらしい。というのも刀自身のレストへの対応がそれを教えたのだ。
レストに渡されたのち刀がレストに話しかけてきたのだった。
(初めまして我が主殿。我等が王たちの至宝の御方。その様なお方を主と出来ること光栄に存じます)
なかなか硬い感じであった。高位精霊にもあまり此処まで硬い部類は珍しい。だが、この刀には合っている様に思う。
「そんなに堅苦しくなくてもいいのだけどな。俺はレスト。名は?」
(セイル、と)
「あぁ、セイルこれから宜しくな」
そんな遣り取りをしている人間の主と刀である僕を見遣りつつアールストとミルシェが話していた。ミルシェの苦言が主だが・・・。
「レスト様の武器であるから良かったけれど、これからは余り複数の形を込めるのも程々にしなさい。アースルト」
ミルシェの物言いは弟を嗜める姉の様であった。
この二人の年齢差を考えればミルシェの方が遥かに年下である。しかし、なるべくしてなった半精霊の青年のその精神は、と言うと他の半精霊よりは遥かに大人ではあるが年齢と供に精神年齢が上がるとは限らないのである。それに比べ遥かに人間に近い精神をしているミルシェの方がその精神は成熟しているのだ。
故にミルシェの方が姉の様になるのは必然であった。
ミルシェの言葉に力強く頷くアースルト。
アースルトはやる気が満々であった。何をかというと試行錯誤という行為を、である。未知なることへの挑戦。俄然やる気が出ると言うものである。
アースルトは職人だ。より良く自分の求めるものを造っていくこと、追い求めることを是とする職人魂を持つ者だ。
まぁ、そういうことでどの位の数なら形を込めて大丈夫なのか?または、数の問題では無く別の原因で起きたのか、を検証しつつ造ろうと胸を膨らませて望む旨を伴っての頷きである。
それを敏感に感じ取ったミルシェは釘を刺す。
「アースルト、分かっていると思いますが、必ず付与する形の数が少ないものから造っていくのですからね?」
少しドスが利いているのは御愛嬌だろう。出会ってから今日まで、彼の奇跡の鍛冶師の奇跡の技とはこの様な失敗が世に出て奇跡となっているのだから。しかもその悉くを何故かその場で体験してしまっているミルシェなのだ。この様な馬鹿げた局面に立ち会うと脱力する。それはそれは脱力する。真実のあんまりさに・・・。
しかもこれで懲りないのだから先回って注意するしかないのだ。職人気質なのは良いことだ。より良く勤勉である。だが、長所となり得ることは短所にもなり得ることの良い例であろう。失敗しても更に挑戦するということは大切だが、ここまでの大事となると少し自重しろと思うのも無理ないだろう。
注意を聞いてその通りだと思ったのだろうアースルトは神妙に今回は頷いた。一先ず安心である。理解して頷いたのならこれ以上は被害が1回だけで終わるだろうからだ。
(それにしても・・・)
とミルシェは思う。
(それにしても、真実はこんななのだけれど)
とさらに区切って思う。
一つ溜息・・・。
(これで鍛冶の神としてドワーフたちに崇められているのがしっくり来ない・・・。実体を知っているだけに)
とミルシェは実験の計画を思案しているアースルトを横目にさらに溜息を一つ吐いた。
全く手のかかる弟分である。精神的に、だが。
自己紹介を終えたレストとセイルは、と言うと
(主殿・・・我が創造主と主殿の所の侍女殿は何と言うか姉弟の様ですね)
「そうだな。年齢的なところで見ると微妙だけどな」
とレストは苦笑して眺めているのであった。
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