54.奇跡の鍛冶師5
アースルトが作り出した精霊石をレストは興味深げに視ていた。
作り出された精霊石はその大きさから、内包されたものが良く見える。精霊たちによって意図されずに出来た小さな精霊石は大きくても大人が手で握りこめる程度である。最も多い大きさとなると砂粒程度なのだ。流石にその程度の大きさとなると視える者たちだとて、そうそうは精霊石とは気付かない。故に精霊石という物の存在も知られていないのだ。知っているとしても研究者などが精々だろう。
アールストが作り出した精霊石は四属性の精霊力がキラキラと輝いて結晶になっている。視るものが視ればそれは美しい虹色の光りが視えるだろう。
さらにその精霊石の周りにははしゃぎ回る下位精霊たちが戯れており、幻想的な一枚の絵画の様であった。
精霊石の周りに戯れる精霊たちにレストは口元を緩めてアースルトに目をやった。レストが目をやった アールストはレストに向かって得意そうに笑って見せるのだった。
レストの武器を作るための材料である精霊石が用意できたので、加工に入ることになった。
鍛冶場にアースルトが向かう。アースルトが付いてくるように手を振ったのでミルシェとレストもアールストの後を付いて行った。すると、戯れていた精霊たちが徐々に離れていく。レストにじゃれ付いていた精霊たちも同様である。
アースルトが棲むこの地は『精霊の森』と同様の土地で滅多に人が来ない土地である。『精霊の渓谷』と呼べる場所でただ人の力では到底来られない場所なのである。『精霊の渓谷』と言う通りにこの場所は精霊たちで溢れている。何処も彼処も目をやれば下位精霊たちが視られるし、また中位精霊も多く存在しているようである。そんな土地である故に『精霊の寵児』であるレストが居れば自然レストの周りには精霊たちの壁が出来る。レストに戯れたい精霊たちで。
だが、そんな精霊たちが鍛冶場に近付くにつれてレストからも離れて行く。ほぼ在りえない状態である。レストが望まない限り精霊たちはレストの側を離れようとは普通しないのだ。しかし、それでも今の状況は精霊たちが離れて言っているという状態なのだった。
レストが訝しく思っていると精霊たちが答えた。
(レスト ふしぎ~?)
(そうみたい)
(ぼくたちもはなれたくないんだよ?)
(ほんとうは~)
(でも だめっていわれてるの)
「言われてる?」
(そ~う)
(そうなの~)
(あーするとにいわれたー)
(あぶないんだって~)
(て~♪)
口々に答える精霊たち。
そんな精霊たちの答えにレストはアースルトに目を向ける。
アースルトはレストの視線に気付いたのか、振り返った。
「ん~。危ないのは本当だ。精霊が鍛冶中に俺の周りに居るのは危ないのさ。普通の材料でも危ないのに精霊石なんて扱っている時なんか尚更に」
「何かあったのか?」
ちょっと言いにくそうな顔をして言いよどむアースルト。そんなアースルトを見てミルシェがくすくすと笑い出す。
「アースルトは昔失敗したのですよ」
「失敗って言うと何か作れなかったとか?」
「いいえ、失敗して作ってしまったんです」
「失敗して作った?」
「そう、失敗したんだよ」
憮然とした表情で頭をガリガリ掻きながらアースルトが言った。
「精錬中に周りに居た精霊を巻き込んで精錬してしまったことがあったんだよ」
そのアースルトの言葉の続きをミルシェが継いだ。
「そして出来上がったのが精霊が宿る剣だったんです。絵本でもよく出てくるじゃないですか。『烈火の剣イファンナート』です。レスト様」
またまた微妙な真実を知って哀愁を湛えるレストに罪は在るまい。
失敗した作が伝説の剣であるなどとは決して知りたくなかったレストであった。
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