49.王家の血
エトルア王国の興りは『祝福持ち』が安心して暮らせる国を創るという理念の下に建国された国である。
元々『祝福持ち』は少数だった。そのうえエトルア王国が興る前の時代は『祝福持ち』を保護する機関、今の『神殿』は存在しなかったのである。『神殿』が出来た経緯もエトルア王国建国に深く関わりがある。
その時代、『祝福持ち』たちは国の戦の道具として扱われていた。エトルア王国建国の祖である『祝福持ち』たちは道具として国に属した存在ではなかったが、傭兵を営んでいた者たちであった。『祝福持ち』には国の道具であるか、国に属さぬ戦士かの二択であった。
この様に記すと何とも深刻な感じであるが、所詮陛下の先祖である。かなり軽かった模様・・・。
ミルシェ曰く
「あの日のことは良く覚えています。深刻な内容のはずのその手紙はとても感じが軽かったものでした。呆れるくらいに」
とのことだ。
ファガー家の祖、エルト・ファガーの元に届いた手紙にはこうあった。
『親愛なるエルト
元気にしてるか?
この度俺たちエトルアの『祝福持ち』は『祝福持ち』が安心して暮らせる国を造る事にした。出来れば手伝って欲しい。
もう準備は始めている。思い立ったが吉日って言うしな!!
場所は“風”で分かるだろ?
じゃ、待ってるぜ
ファスルト・エトルア』
詳細も一切なしの簡潔でノリの軽い手紙だった。流石のエルトもこれには絶句した。『祝福持ち』は楽観的な所があるのは仕方が無い。精霊の性質に通じるからであるが、エルトはこれには驚いたらしい。国一つ創ろうというのに余りに軽すぎたのだ。簡単に言ってのけるほど簡単に国は創れない。だが、彼らの言うことは最もで『祝福持ち』が人らしい生き方が出来るようにするためには国を創るしかないという所まで来ていたのは確かだったのだ。故にエルトとミルシェは国創りに協力した。
元からある国々から激しい抵抗を受け激戦を乗り切り国を興す土地を手に入れた。
そして国を興す段になり問題があった。誰が王になるかというのが決まっていなかったのであった。血生臭い争いは全然起きなかったが。何故ならエトルアの彼らは誰一人王に成りたくなかったからだ。
彼ら4人は誰に押し付けようと考えをめぐらせた。精霊王の加護をそれぞれ持つ故に優秀すぎる頭でくだらない押し付け合いをしたのだったが、それぞれが優秀ゆえに決定打を打てずにいたのだった。彼らの押し付け合いを見ていた周りの後に家臣になる者たちは呆れたものだった。彼ららしいとも思ってはいたのだが。
それはさておき、『精霊の戯れ』で決めようということになったのだった。『精霊の戯れ』とは精霊が遊んで起きる出来事である。普通ならあり得ない事象が起こる事である。何が起きるかを当てようということになり、見事に負けたのは長男であった。意外性はないが妥当と言えよう。彼はかなりうちひしがれていたが・・・。
その様に長男は王になり他のエトルアの三人は公爵となった。
ここまでで分かったであろうが、エトルア家の者は王という地位を縛られるものとして避けようとする傾向がある。
実は建国当初から公爵家は1家しか増えていない。増えたのは因みに今代の陛下の叔父が賜った爵位である。それまでに王に兄弟が居なかった筈は無いのだ。だが、公爵家が増えていないということは臣下に降った訳でもなく病死などということになるがそうではない。
初代以外の王にならずに済んだ兄弟たちは平民になったのだった。それぞれ商人になったり研究者になったり等々、“王家に生まれたからには国の為には働くけど別に王家の籍や爵位が無いといけないことは無いよね”ということらしい。故に王家の血はエトルア国中に散らばっていると言って過言ではないのだ。
ここでレストの妹のミレイヤのことに繋がってくる。エトルア王国の貴族は貴族同士で結婚ということはナンセンスなのである。好いたもの同士でというのが原則なのだ。元々の国の理念が権威って何?というものだ。結婚にも反映されて当然であろう。ファガー家も平民と結婚した当主というのは普通に存在する。また、母方の家もまたそうである。様々なところに王家の血は脈々と引き継がれているのだった。
ミレイヤの精霊王の加護は妥当だとうことなのだった。
レストは成る程、と納得するのだった。流石陛下の血筋、斜め上方向に向かうのだな・・・と。
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