50.奇跡の鍛冶師
ミレイヤのことについての疑問を解消し、さて、そろそろまた鍛錬の続きかな、とレストは模擬刀に手を伸ばした。だが、再び模擬刀を握ることはなかった。ミルシェが模擬刀に手を伸ばすレストを見て首を振って止めたのだった。
レストは不思議そうにミルシェに視線を送った。その視線を受け、ミルシェは答えた。
「そろそろ一通りの武器とその武器の扱いや戦い方をお教えしましたね」
「はい、師匠」
「その年齢と短期間でここまで修められるのは『精霊の寵児』である方しか出来ないことだと思いますが
流石に驚きますね。普通なら一生かけても一つの武器での戦い方を修めきるのは難しいのですから」
「そういうものですか?」
「そういうものなのですよ。レスト様。それが普通であるレスト様には少々分かりづらいかもしれませんが」
そこでミルシェは一息付き本題を述べた。
「そこで、レスト様はどの様な武器がお望みですか?ファガー家としては刀が一番あった家ではありますが、レスト様はその限りではありませんから」
実はレストは一つの武器に拘るつもりは無い。というより拘りたくは無い。と言うのも相手によって武器の使い勝手と言うのは違うのだ。対人、対動物、対魔物等々。相手によって使い分けていきたいと思っている。故に求めるものを口に出していく。
「出来れば柄が長い武器で大柄な敵でも屠ることが出来る。そして出来れば一回で多くの敵を屠れるもの。刀は常備はしておきたい・・・」
「成る程・・・レスト様はそれぞれ相手によって使い分けをお望みなのですね?」
「そうです。師匠」
「ふむ・・・」
「何か良い考えが?」
レストのその言葉にミルシェはジッと宙を見据えてからレストに視線を戻した。
「よろしいでしょう。その願いを叶える鍛冶師を知っています」
おもむろにレストの願いを実現できると言ってのけたのだった。流石のレストもこれには驚いた。全ての武器を兼ね揃えた武器など存在しない。出来るはずもないのだから。故にそれが実現できると言われて殊更驚いたのだった。
「それは流石に無理でしょう・・・」
「いいえ。それを可能にする鍛冶師を知っていますので」
「本当ですか?」
「えぇ。昔馴染みです。と言うより私よりも永く生きている人ですからね」
ここでレストは人間とは違う存在を思い出す。
「ドワーフの方ですか?」
「いいえ」
「専門・・・ですよね」
「そうですね。そういう意味では専門外とも言える種族ですね。特に鍛冶となると普通想像はしませんから」
レストはまさかとは思ったが思いついた種族を口に出してみた。
「・・・エルフ、でしょうか?」
「その通りです。レスト様」
少し悪戯っぽくミルシェが答えた。
そんなこんなで剣術指南の授業が終わりその鍛冶師の所に行くことになった。
彼の鍛冶師は『奇跡の鍛冶師』と呼ばれ、世に広く知れ渡って入るが、実在は怪しまれている存在である。物語や言伝え、伝承、様々な話に登場する鍛冶師である。故に作られた人物であり存在はしていないと言うのが有力な見方である。しかもその人物はどの様な種族かもはっきりしないと言う人物像なのだ。色々想像したがるのも無理は無い。
だが、彼の鍛冶師は存在していると言う。ミルシェはその鍛冶師のお得意様の一人であるとか。気に入った相手にしか武器を作らないという所は確かに半精霊の特徴を現しているがそれだけでは断じ切れないだろう。何と言ってもエルフと言うのは生産者ではない。元来彼らは精霊の性でもって好奇心旺盛だが、何かを作るという発想には至らない。何故ならばそれこそ精霊の性を持っているのだ。精霊は基本物を作らない。彼らは創り出すのであって作り出すことは無い。
だが、彼の鍛冶師はエルフと言う。それは彼の鍛冶師がエルフになる前、人間の時に遡る。元々彼の鍛冶師は人間の時から鍛冶師であった。それは腕の良い鍛冶師だったらしいが、時の権力者の不興を買った。元々彼の鍛冶師は自らが納得しない相手に武器を作ることを拒んだ、故に不興を買ったのだ。だが、彼は高位の精霊の『祝福持ち』であったため半精霊と成った。彼の鍛冶師は最高の技と腕を得る機会を手に入れたと言って喜び勇んで技と腕を磨いたのだった。そして気に入った者に惜しみなくその技と腕を持ってして作り上げた武器を売り渡した。それが結果的に御伽噺や伝承になって残っているのであった。
レストは半精霊には変わり者が多いが、彼の鍛冶師もかなりの変わり者だと思ったが、感心もした。最終的には職人だ!職人だ!!という何だか分からない興奮に至っていたらしい。
そんなレストを生暖かくミルシェは見守っていたとか。
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