46.水の寵児
半精霊たちのゴタゴタが片付いたところで数日。実に騒がしかったのだった。
何故か精霊たちのテンションが上がりに上がっているのである。他の精霊たちもそうなのだが、主に水の精霊たちに顕著であった。
そして今朝もまた騒がしい。
『祝福持ち』たちの目には精霊たちのはしゃぎ様が視えるのだ。それはもう目に痛いぐらいにきらきらとしているのだ。
レストが何時ものように朝の剣の練習をしている場所は中庭である。その中庭には小さな噴水がある。今朝の噴水はご機嫌にくるくる回る水精霊たちによって飛沫が螺旋状やら丸やらを描いている。ここ数日何処も彼処もこのような調子なのだ。
エトルア王国は自然豊かな国である。特に此処、王都は『水の都』と呼ばれるほど水が豊かに在る所なのだ。故に王都には水路が張り巡らされているように様々なところに走っている。その水路のことごとくが浮かれた水精霊たちによって影響が出ていた。それは人間たちに対しては悪影響が出たりもままあった。水路の水が逆流する(下り坂になっているのに水が遡る現象)とか渦巻くとか留まるとか・・・。様々であった。
まぁ、そんなこんなでレストも気に掛かり精霊たちに訊いて回ったのだがその答えは揃って
(ひ・み・つ~)
だそうで答えになっていない。
フェシェイドですら同じような答えだった。もう少し情報をくれたのだが、やはり詳しくは語ってくれなかった。もう少しの情報というのは、フェシェイド曰く
(もう数日で分かる。楽しみにしてれば良いさ)
とのことだった。
レストとは無関係ではないらしい。
そしてもう一つ、周りの状態を見たレストの見識はファガー家で何かがある、と言うことだった。
この精霊たちの騒ぎはファガー家の屋敷を中心に起きているらしい。悪影響はファガー家では出ていないが我慢できないと言う感じでファガー家に精霊が、特に水の精霊が詰め掛けてきているのだ。ここ数日間。故にファガー家の屋敷の中は水精霊で溢れている。その所為か屋敷内は何となくヒンヤリしている。とある侍従はホクホクしている様だが・・・。
そういえば半精霊たちもその様な状態である。思わずといった具合に時たまある一定の方向を向いてはハッとしてやり掛けの勉強をしたり仕事をしたりしだすのだ。妙にそわそわしている。
そして今日である。
レストは目の前の光景を視て思う。
(ピークだ)
と。
目の前を埋め尽くす精霊、精霊、精霊、精霊。
これはどう視てもお祝いに駆けつけた感じだ。どの精霊も普段より一段と輝いている。言祝ぎに来ましたオーラが出ている。本当に。見える人にとってはとても眩しい。
そんなことを思っていたレストの元にフルーレとファルデル(=風の牙)が二人揃って早足で近付いてきた。とても急いでいるようだ。
フルーレがレストに近付くとレストはフルーレに尋ねた。
「どうかしたのか?」
「はい。奥様がつい先程産気づいた、と」
「本当か!?そうか、臨月間近ってそういえば言っていたな・・・。母さんの容態は?」
「心配なさらなくても大丈夫です」
もうしっかりと侍従として働いているファルデルが応えた。そしてとても嬉しそうだ。
「そうか・・・。良かった。で、何でそんなに嬉しそうなんだ?また弟か妹が増えるのを喜んでる俺は分かるんだが、ファルデルまで」
「?だってレスト様、『水の寵児』が生まれるのです!!」
ファルデルの爆弾発言が投下された。
「「ええええええ~~~!?」」
これにはレストとフルーレの驚きの声が響いたのだった。
後にフェシェイドから聞いた話によるとレストの時はこの比ではなかった、とのこと。今回はまだマシだったそうだ。あんなに精霊が溢れた状態がマシなのか、とか浮かれ具合もマシなのかとか色々大変だったんだな、と他人事のようにレストは思うのだった。引き起こした張本人だろうが所詮生まれる前の話である。他人事ではあるのだろう。
そして『水の寵児』に沸く精霊たちが見守る中、『水の寵児』である女児であるファガー家の長女が生まれた。名はミレイヤと名付けられたのだった。
水の精霊王の加護を受ける者を『水の寵児』という。現エトルア国王の父が『水の寵児』であった。それ以来の『水の寵児』の誕生であった。約500年ぶりのことであった。
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