45.侍従探しと後日談
さて、レストたちが帰ってから早速神殿の者たちはそれぞれ動き出したらしい。聞くところによると『精霊の紅花』の半精霊たちを使って暗殺をしていた貴族たちは社会的に抹殺されたらしい。それも各国で起こったことだ。
神殿は国に属す機関ではなく“この世界”其のものにこそ属す調整機関である。故に国を超えた部分に位置し、国よりも上位的なものだ。しかし、普段は国に干渉などはしない。それは世界の意思によるものでなければ起こらないことなのだ。今回は様々な調整役であり、歯止め役の高位精霊たちですらこぞって推奨したのであるから世界の意思と取って良いのだろう。
『精霊の紅花』の半精霊たちを利用した貴族たちは“死”は与えられていない。あくまで社会的抹殺である。それは温情の様であってそうではない。反対だ。温情どころか“死”に勝る罰だった。彼らには身体的にも精神的にもこの先、苦痛しか与えられないのだ。そう“世界”である精霊王たちが決めた。故に彼らはその様に在る存在となったのだった。
殺伐とした神殿側の行いとは異なりレストに連れて帰られた半精霊の面子は穏やかな日々を送っていた。まぁ、ときどきドキワクな時間があったりするのだが。
あれからレストに連れて帰られた半精霊たちはレストのお抱え家人たちとなった。レスト本人はまだ稼ぎは無いので父であるカルスタールに頼み家人としてもらおうと思ったのだが、カルスタールはレストのお抱えとして半精霊たちを迎え入れた。レストに付ける護衛としても働いてもらおうと思ったことと将来的にはレストに複数持つ爵位を譲る算段があったためだ。今からレストの元で働いてもらおうと考えたのだった。
故に様々なことが出来るようそれぞれが家人としての教育を受けることとなった。彼らはやはり元々“祝福持ち”であったため様々なことについて飲み込みが早い。彼らの教育担当者は遣り甲斐があると彼らの評判は上々である。
また、彼らの内面はまだまだ幼く行動も稚いのだ。外見は素晴らしいくらいの美男美女なのだが。そこのギャップがかなりツボらしくファガー家の家人たちは皆悶えていたりする。レストはちょっとどうなんだろうとその現場を目にすると生暖かく見てしまったりする。分からないでもないのだ。彼らは弟や妹の感覚がある。因みにエアリードにとっても弟、妹である。彼らからするとエアリードはお兄ちゃんであったりする。まぁ、そういうことなのであろう。
何はともあれ最初は周りの人間たちに対して警戒していた半精霊たちもファガー家に馴染んできたようである。
『精霊の森』に向かった『精霊の紅花』の元首領であるファディマとファディマに付いて来た半精霊たちは“森”に迎え入れられていた。『精霊の森』は迷いの森。だが、森に迎え入れられれば別である。反対に目的地に誘導さえしてもらえるのだ。
木々たちはファディマたちを喜ぶようにざわつきながら迎え入れた。葉を揺らし道を開きファディマたちが向かいたいと思う場所に誘導していく。やがて少し開けた場所に出た。ただ、集落のような広さは無い。いや、無いように見えるといった方が適切だろう。これもまた半精霊であるエルフたちの目くらましである。
ファディマたちの気配を察したのか木が生い茂っている場所から突如人影が現れた。半精霊たちは“精霊の道”が使えるが、今回は目くらましの術の適応範囲から適応範囲外に出てきただけである。
「やあ、初めまして。ボクはアシェイド。君たちの名前は?」
「私はファディマだ。よろしく」
「わたしアリティア」
「ぼくはアルミル」
「ぼく、ムルファ」
「あたい、フィーファ」
「ふ~ん。複数人でここに来たのは初めてだよ」
「そうなのか?」
「普通は一人で半精霊に成って永い時を超えて此処に来るからね~」
「そうか。普通ならそうだろうな」
「うん。所でファディマがリーダー、かな?」
「そうだが」
「人間は怖い?」
「いや?」
「ならさ、集落の長になってね」
「は?」
どうも集落としては段々と増えてきた人口やそれに伴う外との取引を円滑に行うためには神殿を通してより『祝福持ち』以外の人間と直接遣り取りをする方が早いと気付いたらしい。余りにも普通の人間と関わるのが嫌だったため気付くのが今になったということだ。だが、やはりそこは人間嫌いのエルフたち。長になろうという者が誰も居なかった。そこに人間慣れしてそうなファディマが来たと言うことだった。
森の奥でひっそりと平穏に暮らそうとやってきたファディマだったがやはり無理だった。所詮、皆のお父さんな彼。仕方なく引き受けたのだった。
手のかかる子供(内面)が集落単位で増えた苦労性な父気質のファディマであった。
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