43.侍従探しと解放
今、“風の牙”は自分の中にある情報が急速に整理されていっていることが分かった。
グチャグチャに入って自分の中に入りきらずにいるのに情報を入れられている状態だったのだ。自分すら保てないほどの世界と云う情報。自分という情報すら外からの情報と混ざり合って分からなくなるほどの情報量。
それが、そんな自分の内がクリアになっていく。
今の“風の牙”は正しく茫然自失という体である。それは少し自分が戻った証拠でもあった。少しずつ目に光りが戻ってくる。宝石のような瞳は輝きを増してさらに美しく輝いていく。
そして――雫が落ちた。
涙だった。
“風の牙”が本当の意味で半精霊として覚醒した瞬間だった。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい!!」
泣きながらレストにしがみつく。
「ぼく、きずつけたくない!だれも、きずつけたいとおもってない!!」
そんな“風の牙”を宥めるようにレストはその背を優しく撫でてやりながら言う。
「分かっているさ。誰も望んでなんていないのは。だから」
そう言ってレストはしがみつく“風の牙”から身を離して立ち上がり言った。
「案内してくれ、お前の仲間のところに。今なら出来るだろう?今のお前なら」
その言葉に“風の牙”はレストを見上げながらしっかりと頷いた。“風の牙”は立ち上がるとレストに手を差し出した。
「いまならできるよ。レスト。みんなをたすけて」
その言葉にレストは承諾の意を込めて“風の牙”が差し出した手を握り返した。
そしてレストの
「応」
と言う言葉と供に“風の牙”とレストは“風の牙”による『精霊の道』により、その場から消えたのだった。
“風の牙”が発動した『精霊の道』を察知した『精霊の紅花』首領は安堵していた。
やっと今の状態から抜け出せる。それは我が身が失われても構わないほどに望んだことだ。開放される。自分も。そして、『精霊の紅花』の暗殺者である半精霊たちも。断罪でも何でも良い。
――救いは直ぐそこまで来ている。
やがて、何も無い空間から突如として人影が二つ現れた。
一つは“風の牙”。『精霊の紅花』の暗殺者。
一つは願ってもやまない存在。精霊たちが最も愛してやまない存在。今の世界に三人しか居ない存在。救いはそんな存在、『精霊の寵児』という形で現れた。
『精霊の紅花』の首領はレストを目にしたとたんに涙が流れるのを感じた。涙を流すのは何時ぶりだろうか。ただただ、涙が流れる。それは嬉しさ故か、哀しさ故か、悔しさ故か・・・。あまりにも様々な感情が交じり合っていて判然としないものだった。
『精霊の紅花』の首領はレストの前に進み出る。それを見たレストは静かに声を掛けた。
「助けに来た」
一切の無駄を省いた唯一言のみを伝えて力強く頷いてみせた。
『精霊の紅花』の首領はただそれに万感の思いを込めて頭を垂れたのだった。
『精霊の紅花』の首領がアジト内に居る全半精霊を大部屋に集めた。総計十五名。内、『精霊の紅花』の首領と“風の牙”のみが自我を取り戻した者になる。故に自我を取り戻していない十三名の自我を取り戻すことになる。ただ、その個人によって取り戻すまでの時間は違う。半精霊に成ってから長く過ごしている者は容易く自我を取り戻すことも出来ようが、半精霊になって間もない者は自我を取り戻すには流石のレストでも時間が掛かる。だが、都合の良いことに大体の者は二十年以上前には半精霊化していたらしい。長くても数時間で心神喪失状態から立ち返り自我を取り戻したのだった。
自我を取り戻して少し問題があったのは、大体の半精霊は幼い時に半精霊化しており、内面が幼い所にあった。まぁ、吸収は普通の人間の何十倍も早いので精神面が成熟するのに時間はあまりかからないだろう。
レストはフェシェイドとともに考えていることがあった。それは『精霊の紅花』の半精霊たちの処遇である。そこで、彼らにレストはその提案を提示するのだった。
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