41.侍従探しと襲来者
レストたちがシェスカの仲間たちを訪ねてから1週間たった。
陛下から忠告を受けてから1週間でもある。だが、この1週間何事もなく過ぎた。
まぁ、エルーを連れ帰った陛下が宰相殿にエルーを拐かしたのかと間違えられて危うく変態の誘拐犯と疑われたりとかはあったが。これは自業自得なとこがあるであろう。何の前触れもなく連れて来れば疑われるのは当たり前である。だが、それにしてもアレだが・・・。普段の陛下の行いがあまりに悪いのであろうか、と疑問を持ったレストであった。そしてこの話はまた別である。
まぁ、そんなこんなで1週間何事もなかったのである。だが、今夜は違った。
最初に気付いたのはエルーであった。その日の夕食を陛下と終えて寛いでいる時であった。エルーの感覚に引っかかるものがあった。それは精霊では分からないものである。
陛下が気付かなかったのは事情がある。陛下の場合は少々違っていて何時も国中に結界を敷き、意識を張り巡らしている。故に反対に引っかかることがなかったのだ。結界は条件付で発動する仕組みなのだ。それは悪意である。反対にいうと悪意が無ければ引っかからないのだ。彼の暗殺者に悪意は無い。意識が無い人形も同然の者にその様な意識は脳裏に浮かぶわけが無いのだ。
それに比べエルーは人間特有のものから導き出したわけである。動いているのにその形跡がないのは不自然である。隠密行動を旨としている故にその不自然さに彼らは気付かない。だが、普通に人間として生活しているエルーからすれば不自然すぎるのだ。何か痕跡や形跡が残るのが自然であり、隠そうとしてその跡を消せば不自然なのは当たり前である。エルーは風の精霊と融合しているのでその能力で人が移動しているのが分かるのだ。移動しているという跡、例えば気配や足跡諸々がないのを感じ取り不自然だと思ったのだった。
精霊たちは肉体が無いので、それらの物理的な跡などという考えは無い。故に警戒はしていたが気付けなかったのだった。
「へいか~、へんなひとがくるよー」
「変とは?」
「えっとね~なんか、ひとにわからないようにわざとしてるかんじ?」
「それは・・・カルスタールとレストに知らせなくてはね」
「もしかして、へいかがいってたこと?」
「その様だね」
そう言って陛下は宙へと問い掛ける。
「さて、皆聞いていたよね?レストに伝えてくれるかい?」
陛下の視線の先には風の精霊たちがいた。それぞれ首を縦に振り承諾を伝えてきた。
(わかってるよ~レストのいちだいじだもの)
(はやくつたえなくちゃ)
ざわりざわりと波紋が広がるように伝達されていく。
そして、それはカルスタールとレストの元へ届いたのだった。
執務室にいたカルスタールは連絡が届くなり屋敷の者たちに予定通りに厳戒態勢を引く様に支持を出し自らも配置に付いた。いざという時に自らが動けるようにである。
一方、レストは訓練場となっている開けた庭に来ていた。精霊たちからの連絡が来て直ぐに移動したのだ。室内の備品などが壊れることが無い様にとの配慮と自分自身の動きが阻害されないように移動したのだ。因みにレストに武器は無い。フェシェイドから聞いた予測から相手を傷付けずに確保することにしたのだ。
準備万端。待ち構えるレストは少々違う方向の考えから捕獲するために手ぐすねを引いて待っている状態であった。緊張感は皆無であった。
暫く待っていると風が到着した。
レストの直ぐ目の前。
突然の襲来者の来訪であった。
それこそが彼、“風の牙”の“風”の由来でもある特質である。
レストの眼前に鋭い金属の刃が光る。
だが、レストは慌てるでもなくバックステップで難なくかわす。目の前の暗殺者はそれに驚くでもなく淡々とレストに肉薄していく。レストは翳されたナイフを持つ右腕を右腕で捌き、左手で掴もうとするもかわされる。さらに“風の牙”はレストを追うがレストはナイフギリギリの位置を的確に見分け、紙一重でかわしていく。最小限の動きで疲れを最小限に抑えて捌いていく。
二人の動きは普通の人には目で追えない程の早さである。だが、それでも的確二人は動く。一人は一人を殺すために。一人は殺されないようにしつつ一人の動きを注意深く探っている。息つく間もないほどの攻防が繰り返される。不利なのはどう見てもレストの方である。疲れ知らずの半精霊が武器を持って戦っているのだ。体力的にも不利で身体的にも不利、さらに徒手空拳となると不利も極まれりという所だ。
だが、膝を突いたのは“風の牙”であった。
お待たせしてすみません。
何とかアップです。
お気に入り登録していただいている方有難うございます。
何時も読んで頂いている方も有難うございます。
今後もよろしくお願いします。




