39.侍従探しと半精霊の子
レストがしみじみとファガー家の恋愛事情について考えているところに爆弾発言が降って出た。
発言者は陛下である。
膝に抱えたエルーに手ずからマドレーヌを食べさせていた陛下が一言
「エルーを連れて帰って良いかな?」
と言ったのだ。
その発言には皆ぽかんとした顔になり、何故という疑問を持った顔になった。
その疑問に対して陛下が言ったことが問題だった。何故なら
「エルーは私と同じだからね。エルーは半精霊だから」
それはそれは麗しい笑顔付きで応えてくれたのだった。
皆その発言に反応してエルーを見た。エルーに皆の視線が集中した。エルーは相変わらず陛下からマドレーヌを食べさせてもらってご満悦で気付いていない。その時の一同の胸中といえば
(え?半精霊ってアレだよね?エルフ。幻の民。森の人と呼ばれる人々だよね?なんかこう神秘的って言うかそんなイメージなんだけど・・・全然そんな感じじゃない・・・)
と言う感じである。
そんな一同の思いを感じ取ったのか陛下が説明する。
「半精霊の特徴は瞳に良く出るんだよ。他には肌等に出るのだけどね。エルーは典型的な半精霊の特徴が出てるよ。瞳が宝石のようにきらきらしてるでしょう?これが半精霊の特徴なんだよ」
エルーはやっとここにきて皆の視線が自分に向いていることに気付いて首を傾げた。エルーの瞳は蒼と碧の宝石が嵌め込まれている様に輝いている。そんなエルーの髪を陛下が柔らかく撫でた。それにエルーは嬉しそうに目を細めて笑った。
「半精霊についてはあまり詳しい事は知られていないからね。私は例外過ぎて論外だし。まぁ、半精霊は『祝福持ち』が精霊化した者だと思って良いよ。肉体を持った精霊、それが半精霊なんだよ」
エルーを撫でながら陛下は話し続ける。
「エルーも十分例外的存在だといって良いと思うけどね。普通、半精霊に成る過程で身体はその変化に耐えうる様成人体になる。例え子供であっても。でもエルーは今のところ実年齢といって良いぐらいだからね。半精霊になる時は『祝福持ち』が死に瀕している時に精霊が加護をしている『祝福持ち』と同化することでその死を回避しようとするんだ。でも同化には一つ問題があるんだよ。精霊は世界そのもの。世界の一部。だから精霊を体内に取り込むという事は世界の一部を取り込むということ。世界とは情報の集まりでもあるから世界規模の情報が入ってくるんだ。だからその情報の整理をするために存在全てを整理に費やす。情報の整理は何十年単位なんだよね。本当は。でもエルーは違う。多分数年。下手すれば数ヶ月かな?そのぐらいで同化が完成しているんだね。レストが居たからだろうけど」
そう言って陛下はレストを見やる。レストには思い当たることがあった。赤子のエルーがレストに接触している時は安定していたからだ。多分その時にレストを通して情報を処理したのだろう。レストは世界そのものからそれらを許された存在であるのだから。
「多分それと皆の接し方が良かったんだ。半精霊では在るけどエルーは人に似通った存在になった。だから年齢どおりの成長してる。それでも将来は成人体になった後は変化はしないだろうね。半精霊は年を取らない。その存在はほぼ恒久的と言っていいから。半精霊はあくまで精霊の括りだからね。だから私は私と同様の存在を側に欲しいんだよ。思い出を共有する存在が欲しい。皆親しい者たちは私を置いて逝くから。何時も何時も私を案じながら逝くんだ・・・」
最後は微かに聞こえる程度に声で呟きに近いものだった。だが、それはその場の皆の胸に迫るような切実さが漂っていた。
「それは俺たちが決めることでは無いと思いますよ。陛下」
レストは陛下を真っ直ぐ見つめて言った。
「エルーが決めることです」
仲間たちが一斉に頷く。
それを見てレストはエルーを見て尋ねた。
「エルーはどうしたい?陛下は断っても怒らない。エルーは陛下と一緒に行くか?それとも仲間と一緒に居たいか?」
「へいかといくとみんなにはあえなくなるの?」
「そんなことはないよ」
陛下が応えた。
「エルーは半精霊だから皆とは何時でも会おうと思えば会える。『精霊の道』を使えるはずだから。会いたい人を想像して行きたいと思えば道は開くよ」
「そっかー」
エルーは少し考えてニッコリ笑って答えを出す。
「じゃー、ぼくへいかといく。それでへいかがさびしくないようにそばにいる」
えへへと笑うエルーに陛下は「ありがとう」とその小さな身体を抱きしめたのだった。
陛下の切ない一面を垣間見た瞬間であった。
そして人を思いやれるエルーを仲間たちは誇らしげに見たのだった。
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