38.侍従探しと恋
シリアスな話になったが、一旦それは置いておくこととなった。
今は、だが。
何故ならその様な話をしに来たのではない。レストたちはレストの兄弟と言える仲間たちの元に遊びに来たのだ。その様な重苦しい話をする為ではない。それに今はその心配も無用である。精霊王に次ぐ力を持つ陛下が居るし、神殿とは『祝福持ち』が神官として働き居住している場所でもあるのだ。それだけでも警備は万全と言えよう。要は神殿は安全なのである。
「そうそう、皆に土産持ってきたんだ。ファガー家料理長直々のお菓子。皆で食べよう」
「お菓子?」
「おかし!」
「うれし~」
今は神官見習いの仲間たちは、それはそれは嬉しそうに歓声を上げたのだった。
少し前に席を外し、お茶の用意をしに行っていたフルーレがワゴンを押して戻ってきた。お茶もファガー家から持ってきた茶葉である。花茶で子供用に甘い配合となっている。この花茶はファガー公爵夫人直々に配合したものでレストやエアリードが好んで飲んでいるお茶である。
大きな机にそれぞれの椅子に座って給仕を待つ。子供たちは給仕をしてもらうのに慣れていないためソワソワしている。それに甘い香りに興味津々である。因みにエルーは陛下の膝の上だ。陛下もエルーもご機嫌である。
お茶の配膳が終わると食事前の挨拶をする。
「「「至高の方々、世界たる精霊に感謝を」」」
そしてお茶会が始まった。
それぞれ思い思いにお菓子に手を付けていく。
クッキーにマドレーヌだが、それぞれ色々な種類を料理長は用意してくれたらしい。チョコレートが練りこまれたものや木の実が砕き入れてある物などが数種類入っていた。
「うわ~あまい」
「おいしー」
「うまい」
「はじめて!おいしい」
子供たちの顔はとても幸せに満ちたものになっていた。初めて食べた甘いお菓子というものに感動も一押しであるのだろう。
フルーレとフェンド、陛下はそんな子供たちに和んだ。子供の笑顔とは良いものだ。周りの大人たちも笑顔にさせる。
そんな中、エアリードが甲斐甲斐しく世話をしているのが目に映った。レストも同様にその様子を見た。相手はルミエであった。エアリードは微かに頬を染めながらルミエにお菓子を取ってあげたりと何くれと世話をしている。
大人組みは
(これはアレかな?)
と思い。
レストは確信を持って
(あれ、だな)
と思った。
他の子たち――、年長組みはそんな大人組みとレストに気付き、その視線を追った。そしてその先の光景を見てアイントはにやにやと笑い、ヒーリエとエディスはなるほどといった感じの顔になり、ミラートは「へー」と微笑み、ファイは納得したように頷いた。因みに幼年組みはお菓子に夢中である。
あれとはアレ――
恋、である。
大人組みは微笑ましげに、年長組みは生暖かく見守っている。
そして、レストはと言うと内心思いっきり応援していた。さらに確信している。この恋は成就するだろう事を。まぁ、ませていると思う無かれ、これはもう血なのである。ファガー家の。小耳に挟んだところ父さんもそうだったし、祖父さんもそうであったそうだ。そしてエアリードのこれだ。これはもう血だといって良いだろう。
事、恋についてはなかなか強い一族だ。確実にその女性(少女?)を射止めてみせると同時に回りの手回しも完璧。多分エアリードもさり気なくルミエを実家に誘い父母に紹介するだろう。それに父母もOKを出すのは分かりきっている。特に母は大喜びするだろう。そして、さり気なく父の友人である方々に紹介して確実に周りを固めていくに違いない。因みに陛下は今此処にいて微笑ましげだという事は問題は無い。親戚も問題ないだろうしな・・・。何と言ったってファガー家の親戚である。養子に入ってから親戚周りに紹介されたが、やはりファガー家であった。主家があれなら分家もあれであった。子は親に似るのだ・・・。
思い人を確実に手に入れている一族としても名を馳せているとか・・・。
本人たちが幸せなのだから良いのだろうが、ある意味ファガー家って怖い、と思うレストであった。
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