36.侍従探しと陛下
抱き合った状態から身体を離して年長の男子、アイントがレストを見て笑いながら言った。
「いや~、何処の御貴族様かと思ったぜ。本当に貴族やってんだな」
「それを言うならアイントこそ何処の敬虔な神官見習いかと思ったぞ」
「馬鹿言うな。俺は前からけいけんな信徒だったぜ?」
笑いながらそういうアイントは仲間内では一番の年長者であり、レストより3歳年上である。13歳ということになる。色々な意味で飛び抜けていたレストがグループのトップではあったが、レストが居ないときなどはアイントが纏めていた。今もそうなのであろう。
「皆変な顔していたのはもしかしてアイントと同じ理由か?」
そのレストの言葉に他の仲間たちが一斉に応えた。
「「「うん、そう!!」」」
一斉にハモって応えるものだから、レストは笑ってしまった。
その声に反応したのかレストの後ろからエアリードがひょこりと顔を出したらしい。
「うん?レスト、お前の後ろに居るちまこいのは?」
レストが後ろを振り返るとレストを見上げているエアリードと目が合った。確かにちまこいだろうな、アイントから見れば、と思うレスト。アイントは年齢の割には背の高いほうでエアリードはアイントの腰位の位置に頭が来る。
「紹介するよ。俺の弟になったエアリードだ。皆仲良くしてやってくれ」
そういうレストに促されてエアリードが挨拶をする。珍しく緊張している様だ。
「初めまして、エアリード・ファガーと申します。宜しくお願いします」
貴族形式の挨拶はせず、頭だけ下げる。エアリードもまた王都貴族らしく一般人と普通に接しているので、この様な場合の挨拶はこれで十分であることを知っていた。王都の貴族たちは普通に街を歩きそこの人々と接しているのが常である。まぁ、王都のトップがトップであるからだろう。
「おう、よろしくな」
アイントはくしゃりとエアリードの頭を撫でて応えて返す。擽ったそうにエアリードが目を細めて笑う。レストの微笑を誘った。
次々に仲間たちがエアリードに応えて返す。どうやらエアリードは無事仲間たちに迎え入れられたようだ。
「う~ん、それにしても王都の貴族ってもっとこう、貴族な感じかと思ってたんだけどな~」
アイントが言い、他の仲間たちも
「そうだよね~」
とか言っている。
エアリードはと言うと
「王都の貴族は私と皆大体同じ接し方ですが・・・?」
「あ~、それな~。どちらかと言うと王都の貴族の方が偏見が無い。と言うか一切無い」
「「「は?どういうこと?」」」
「この国の王様が水精霊王の子供だって知ってるだろ?」
「うん」
「それ知ってる~」
「そうだね」
「この前習ったもん」
うんうんと頷いてからレストは続ける。
「で、その王様が気さくと言うか王様自ら王都城下に普通に歩いてるから」
逃亡して遊びに出ているのは内緒である。王様の威厳とか普通に吹っ飛ぶ情報である。
「変わってるんだな」
感心するアイント。
「変わっていると言うより変なのかも・・・」
とは元下級貴族出のヒーリエである。
「そうかもな」
レストは笑って言う。エアリードは困ったように笑っている。背後に控えている御付二人は少し顔を背けているが笑っているのが丸分かりだ。肩が二人とも揺れている。
「で、その王様の下に身近に居る家臣は皆揃って倣うわけだ」
「成る程」
「僕たちみたいだね」
「そんだよね。私たちレストに倣ってたもん」
レストに視線が集中する。レストは苦笑した。良い事も悪い事も、であるから。
そんな時いきなり部屋に入ってきた存在が在った。
「失礼するよ~」
話題の陛下であった。
唖然とする一同。
レストとエアリードと御付の二人はここにその存在が居ることに驚き、他のレストの仲間たちは知らない存在がいきなり現れたことに驚いた。
そして一番早く気を取り直したレストは言った。
「あ~、皆此方の方が今話題になった陛下だ」
「今紹介にあったエトルア国国王してますファルトリート・クラヴィアス・ル・エトルアです。よろしく!」
ますます、唖然とするアイントたちであった。
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