表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/95

32.侍従探しと帰還

――ファガー家執務室にて――


 執務室の中には執務机に向かい難しい顔をしたカルスタールが居た。その正面にはカルスタールが今難しい顔をして睨みつけている書類を持ってきたアインダートが居る。

「む、分かっていたことだけど芳しくないな・・・」

「そうでしょうね」

 そう言ったアインダートをカルスタールは睨めつけた。

「なんだい、全く人事みたいに!」

「人事ではないですが・・・。ですがね?何故こうなったかは御自身が良くお解りでしょう?」

 溜息を付き、チクリと皮肉を返すアインダート。そこに言い返せないカルスタール。言い返せないからこそ腹立たしい。ぐぬぬ、とひたすらアインダートを再び睨めつけた。

「全く貴方ときたら、何の準備も無くレスト様を迎えられたからこうなったんですよ。普通なら諸々の手続きを通してお迎えしなければならないのに。まぁ、この件は国王陛下も手助けしていたので貴方一人の所為では無いですが。国王陛下は許可をお出しになっただけですから数に入らないとは思いますけれど」

 さらにチクリチクリと皮肉で応酬する従者アインダート。撃沈するカルスタール。

「う゛ぅ~。藪蛇だった。」

「父に鍛えられていますので」

「ルシルードめ・・・」

「で、気はお済ですか?」

「うん」

 そう言うと気を取り直すようにカルスタールはアインダートから視線を外し、さっきまで見ていた書類に目を落とす。何度見ても同じである。当たり前だが。書類は報告書である。書類名には侍従探しにおける経過報告書とある。これはカルスタールの心当たりと伝手からレストの侍従探しに遣った者たちや知り合いの者たちから挙がってきている情報が載っている報告書である。カルスタールが腐っていることで分かるが今のところ芳しい結果は出ていない。

「やっぱり条件が難しいのかな~?」

「難しいのでは?」

「・・・やっぱり?」

「えぇ、――『祝福持ち』は引っ張りだこで予約も埋まっているでしょうからね」

 アインダートの言葉にあ~ぁ、やっぱりなぁと天井を仰ぐカルスタールであった。




――『精霊の紅花』アジトにて――


 『精霊の紅花』のアジトは砂漠にある。だが、この場所は『精霊の紅花』の者しか知らない。いや知れない、と言った方がいいのかもしれない。

 砂漠の奥へ奥へと入った場所。そこは普通人にとって死と同様の意味がある場所である。その様な場所に入ったが最後、道を見失い迷い死ぬであろう。砂漠の民ですらここには寄り付かない。意味の無い場所であり死が待つ場所であるからだ。この辺りには魔物が居る。そしてそれ以外には何も無い場所なのだ。だが、そんな場所に小さな小さなオアシスがあった。『精霊の紅花』以外の人間は知らない。このオアシスは大きな岩場に四方を囲われ、さらにその岩場が天然の迷路となり迷宮と化していた。そして、用心深くとある力にさらに隠され守られていたのだ。その為、このオアシスは魔物も寄り付かなくなっている。だが、このオアシスのみにその力は働いているので、オアシスの外に出ると魔物が跋扈しているのだ。

首領である男、ローブの男はこのオアシスにある唯一の建物である彼らの“家”の統括官の質素な部屋に居た。そこにある物は全て年季が入っており何より質素であった。高額な暗殺依頼を請け負っている割にはその様な様子など窺わせない佇まいがそこにはあった。

 ローブの男は疲れたようにローブを脱ぎ捨て、椅子に座り込んだ。だらりと椅子に背をもたらせ天井を仰ぎ、目を閉じて左手で覆った。

「全く嫌になる」

 自嘲気味に呟く。何て此の世は悪意に満ちているのか・・・。神すら冒涜し、神に背いてまで何かを得ようとする。何て醜く自分勝手なのか。やがてその後には手痛いしっぺ返しが待っているというのに。だが、と男は思う。自分が言えるようなことでは無い、と。そのしっぺ返しが、ついそこまで自分に迫っているという事を知っている。今回で自分はそのしっぺ返しをくらうのだということを。好きでやっているのではない。コレしか生きるすべを知らないのだ。だが、それは理由にはならない。それも知っている。

「全く嫌になる」

 また、呟く。そして、覆った目から手を外し、目を開く。その目は暗殺者たちの元締めとは思えないほど澄んでいる。怖いくらいに澄んでいた。それは知る者の目だ。そして、何も求めず、諦めて、それでも在ろうとする者の目。哀しく澄んだ目。

「何も見えず、聞こえず、知らずにここに在れれば幸せであったのに」

 遠い日を想い呟く。

「あの時に全て変わった」

 そう呟いたときに男は何かにピクリと反応した。そして、今までの気だるげだった様子を一変して暗殺者の首領に相応しい様子となった。そして―――

 最後に

「お前たちも俺の様になるだろうか?それとも――」

 何を言ったか分からぬほどの声音で呟き、帰還者を迎えたのだ。


お気に入り登録していただいている方有難うございます。

何時も読んで頂いている方も有難うございます。

今後もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ