31.侍従探しと神殿
――ファガー家サロンにて――
「んん~」
そこには唸るレストとレストの弟のエアリードそれぞれの御付で給仕を行っているレストの侍女のフルーレとエアリードの侍従のフェンドが居た。
窓が大きく取られサロンから続くテラスに出られる扉もガラス張りの大きな観音開きのドアとなっている。そのドアを少々開けて風を通しつつ燦々と降り注ぐ日光を浴びるのは心地よい。そんな中でレストは丁度良い暖かさのある紅茶を注がれたカップを傾けつつ唸りを上げたのだった。
「如何なさったのですか?兄上」
「ん~。シェスカの皆がどうしてるかと思ってな」
「そうですね。皆さん神殿の方に引き取られた筈です」
「神殿か」
「そうですね。お仲間であった皆さんがほとんど『祝福持ち』であったと聞き及んでいますし・・・」
「本当だったらあの中の一人を侍従にしてもらいたかったんだけど無理かな~」
「それぞれ目標をお持ちだとか・・・」
「それじゃぁ無理だな。俺の我が儘で連れてこれないなぁ。条件としては合ってるけど今回は諦めよう。やっぱり父さん待ちか」
そんな風に残念がっているレストをエアリードが慰め、フルーレはお茶を注ぎ足し、フェンドはレストに菓子を勧めた。
今日のお菓子はファガー家の料理長のお手製チーズスフレとマドレーヌであった。チーズスフレはしっとりとしたくどくない甘さである。レストの好みの甘さだ。マドレーヌはふわふわで程よい甘さである。酸味のあるジャムを付けて食べるのが絶品でレストは気に入っている。そのマドレーヌをジッと見詰めて口を開いた。
「よし今度一緒にシェスカの神殿に行こうか。エア」
「はい」
嬉しそうに返事をするエアリード。そんなエアリードの笑顔に慰められたレストは
「料理長にお願いしてマドレーヌ作ってもらおう。土産にして皆に会いに行こう。エアも紹介したいしな」
嬉しそうに矢継ぎ早に計画を立てるレストを微笑ましげに見る侍女と侍従なのであった。
――神殿にて――
ここは砂漠の小さなオアシスである。
そのオアシスには大きな神殿が建っている。火神殿の本殿である。その火神殿の一角にある。大きめの会議堂に人が集められていた。とは言っても上級神官たちである隊長格を担う者たちだ。皆赤を基調とした神官服を着ている。神官服は肩から胸にかけてケープ状に見えるロングコートその下に長衣とズボンとなっていて、赤の布地に更に濃い赤の刺繍が施されている。
そんな中、同様の形態である神官服を着ているが、色が違う者たちがいる。白地に緑の刺繍、黄色地に茶色の刺繍、青地に水色の刺繍をしている神官服であった。それぞれ二人ずつ居る。白地に緑の刺繍は風神殿の神殿長とその補佐。黄色地に茶色の刺繍は地神殿の神殿長とその補佐。青地に水色の刺繍は水神殿の神殿長とその補佐である。補佐と言っても副神殿長であるのだが。その様な顔ぶれが揃うという意味は決して良いものではない。まぁ、火神殿の者たち以外は魔法による映像なのだが。更に火神殿でこの様な場を設けるということはある事を意味する。それは精霊関連の違反取調べや処罰を旨とするのが火神殿だからである。
「さて、近頃噂に挙がる集団のことだが、また何かきな臭いことになってきたようだ」
風神殿長が口を開く。風神殿は情報関連を受け持つ神殿である。
「例の集団がここのところ活発に活動するようになった様だ。頭が変わったのかもしれん」
「詳しくは?」
火神殿長が聞く。
「まだだ。あれらは精霊の力を使う。それに祝福を授けたのは高位精霊だろう。こちらの情報収集がうまくいかないのでな」
「厄介だな」
地神殿長が口を開く。
「近頃、精霊たちが落ち着きが無い。何かを警戒している」
「確かに」
水神殿長が応える。
「ただ、多分半精霊が関わっているぞ」
風神殿長が重要なことをサラッと言った。
会議堂内に静寂が満ちた。そして、重い溜息。火神殿長は首の後ろを掻き、
「そりゃまた厄介な」
と天井を仰いだ。半精霊とはなんと厄介。彼らには魔法が効かない場合がある。捕まえることは結構難しいが捕まえられなくは無い。ただ、やはり厄介なのだ。彼らは直接魔法を使う。媒体も何もいらない。それこそ彼らが精霊でもあるのだから直接力を行使できるのだ。と言う事はタイムラグが無いということで厄介なのである。
分かっているのは、彼の集団は内に半精霊を握っていること。それらの半精霊は予測だが、拐かされた者たちであるのだろうこと。
そして―――――
暗殺者に仕立てあげられたのであろうこと、である。
お気に入り登録していただいている方有難うございます。
何時も読んで頂いている方も有難うございます。
今後もよろしくお願いします。




