表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/95

28.『精霊の寵児』認定3

 イィィィ―――――――ン

 イィィィ―――――――ン

 弦楽器が最後に残す余韻にも似た音が響く。

 アウールトが部屋の中心にレストを導き自らは部屋の端にある祭壇の様な物へと近付いて行った。その祭壇の様な物の上に右手を置き、胸に左手を当てて囁く様に言ったかと思うと例の音が響き渡ったのだ。

 儀式仕様のこの部屋は小さく、飾り気が無く、素っ気無い程である。それがどうだろう。今は光と音の渦である。幻想的であった。今や文字の様な光が壁一面に浮かび上がり、端から消えては浮かび上がる。しかも、様々に色を変えて整然と縦横無尽に姿を変えて行くのだ。光と共に音も鳴り響く。光と共鳴する様に音も変わっていく。

 リィンリィーン

 しゃらりしゃらり

 プォーン

 様々な音が氾濫している。だがしかし、一つ一つが別々の音なのだが、それでも整然としているのだ。一つ間違えればただの雑多な音の大群で雑音になるであろうそれは、絶妙な音の列となって曲にも聞こえる物となっていた。荘厳で雄大、時に楽しげな旋律に・・・。一つの音が消えるときには寂しげな余韻となって消えていく。絶妙なバランスでもって一つの旋律を奏でている。

 これらは全てレストを中心に巻き起こっていた。この場に居るものは視える者である。レスト然り、神殿長然り、フルーレ然り・・・。

 レストは喜びが表れた愉しげな顔でそれらを視ていた。光と音が精霊を現しているからである。一つの光と音が一つの精霊自身であり、一つの光と音が消えるときにその精霊が去っていくのだ。故に寂しげな余韻とは、そのまま精霊たちの心が表れているのだった。世界の精霊がこの小さな儀式の部屋へとやってくる。レストを慕わしく思っているからである。精霊たちはそれぞれ、レストに触れて行くそして自分が管轄する場所に還って行くのだ。大きな光りほど高位の精霊になってくる様だ。今は最初の頃よりは大きい光が明滅していく。下位精霊の最下位の精霊たちより若干上の精霊たちである。彼らは先程の最下位の精霊たちと同じくレストに近寄ってレストに触れてから寂しそうに還っていくのであった。

 アウールトは目の前の光景を感嘆の念を抱きつつ見守っていた。12年前もこの光景と似た光景は見たことがある。もう一人の『精霊の寵児』であるクウェル・ドラーが儀式を受けた時のことだ。だが、今回の光りと音とは全く違った。あの時は唯々優しく包み込むような光りであり、音だったのだ。世界中の精霊たちが入れ替わり立ち代りやって来た事は同じだが、その内容たるや全く違うのだ。彼の『精霊の寵児』クウェル・ドラーはあくまで精霊たちにとって庇護する者なのだ。何処まで行っても。だが、レスト・ファガーは違う。正しく自分たちと同等の立ち位置に置いている。共に歩む者ということを表している。光りも音も優しくも厳しく、愉しくそして寂しく時に儚く様々に強弱を付けてレストを通り過ぎていく。そしてレスト自身も当たり前にそれを受けるのだ。

 この儀式は『祝福持ち』の認定に必要な儀式で、一目で分かるようになっている。加護を与えている精霊の数だけ光りと音がある。大抵の『祝福持ち』は一つの光りに一つの音だけである。それ以上となるとほとんど居ない。とは言ってもここエトルア王国には複数人居るので、居ない事は無い。ただ極端に少ないのだ。『精霊の寵児』は唯の『祝福持ち』とは違い四精霊の王の加護がある。この事は世界中の全ての精霊の加護があると言っていい。元々精霊たちは精霊王の一部であるからだ。故に他の『祝福持ち』の者たちとは一線を画する。ただ、そうは言うものの『精霊の寵児』を実際加護するのは高位精霊であることが多い。その為、風精霊王が直接加護しているクウェル・ドラーが稀な存在と言える。

 さて、そろそろ光りの大きさと音の澄み具合から儀式の終盤に差し掛かってきているとアウールトは目の前を見据える。その目前に燦然と輝く大きな大きな光りの塊が四つ現れ、高く澄んだ音を響かせ消えた。光の乱舞と旋律が消え、再びイィィ―――ンと余韻を残し元の素っ気無い儀式の部屋へと戻った。

 認定の儀式は早ければ一瞬で終わるが、今回は二刻程掛かった。世界中の精霊が来るというには短い時だと思われるだろうが、そうでもない。一瞬で相当の数の精霊がやってきて儀式の部屋から溢れかえりそうな程に来るのだ。そういう意味では二刻は十分な程に長いのだ。

 最後に確かに四精霊の王が現れた。レストは『精霊の寵児』と認定されたのだ。アウールトは儀式の部屋の外に控えていた高位神官を呼び寄せ結果を伝えた。結果を伝えられた神官はすぐさま儀式の部屋を後にした。手続きに向かったのだ。この結果を世界に伝えるのだ。まず、風精霊の本神殿に連絡をせねばならない。情報を管理するのは風精霊神殿の役割とされている。故にまずは風精霊の神殿に連絡をするのである。

 そんなこんなで、神殿内は少々バタバタとしていた。レストとフルーレは別の部屋へと案内されてお茶を出されていた。レストは昨日と今日と続けて多くの精霊たちと接することが出来上機嫌でお茶を飲んでいた。出された菓子もお茶もとてもおいしく幸せ感は一押しであった。レストもまだまだ子供なのだと思わされる一面である。そんなレストを見てフルーレもまた幸せを噛み締めていた。精霊王たちを視れて彼女も興奮気味である。精霊王を目にする事は滅多に無い。いや、普通なら幾ら『祝福持ち』であろうと目にする事は一生無いと言って過言ではないだろう。目に出来るのはそれだけ幸運なことなのだ。しかもレストと並んだその光景は正に眼福の一言に尽きる。そんな幸せを噛み締める二人なのだった。


 そして、その日の内に新たな『精霊の寵児』が現れたという報は全世界に報じられたのだった――。

この事がその後の事件を起こす切欠になるのだが、その様な事は今誰一人想像する者は居なかったのだった。


お気に入り登録していただいている方有難うございます。

何時も読んで頂いている方も有難うございます。

今後もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ