27.『精霊の寵児』認定2
さて、朝食を終え(家族揃っての賑やかな朝食だった)、名残惜しげな父を送り出し(エアリードとレストを同時に抱え上げ飽く事無く頬ずりをして出仕を拒み、駄々をこねる父を母が追い立てるように館から出した。母は何気に良い笑顔であった)、身重の母は自室に戻り、エアリードも今日の勉強予定をこなす為自室へ戻って行った。レストは、と言うと外出着に着替えてフルーレを供に付けて王都内を歩いていた。目的地は神殿である。『精霊の寵児』として認定をしてもらうためである。王都にあるのは水の本神殿であるがそれぞれの属性に優劣は無く同列である。それぞれのどの属性の精霊王が欠けてもこの世界は生されなかったであろうし、維持するにもまた同様である。一応属性毎に神殿は分かれているのだが、役割分担があるのみと言えるので別の属性持ちの神官が別の属性の神殿に所属しているのは珍しくない。また、それ故にどの神殿に認定を貰っても共有され世界に周知されることとなる。ぶっちゃけ何処の神殿でもOKであるということだ。実はこの王都に水の本神殿があるのは王都の北に位置する広大な湖があるからだ。何故ならばその湖が水の精霊王の棲み処となっている。水の精霊の中心地と言って過言ではないのである。故に王都に水の本神殿が存在する。どちらかと言うと水の本神殿がある場所に王都が建ったという方が正確であるのだが。
そんなこんなでレストはフルーレと連れ立って王都を歩いている。貴族街は流石に貴族達の屋敷が建ち並んでいるだけあって瀟洒で豪華で広大である。城の東が貴族街に当たる。歩いている間にレストはフルーレから王都の大まかな位置関係を聞いていた。王都は東西南北の門があり、北門側に高級住宅街がありその南側に城が位置する。城は中央より北側に建っているようだ。西側は住宅街になっており、さらに西側には倉庫街がある。倉庫街の南側には商会の事務所が入っているビルが建ち並んでいるという。王都の中央は歓楽街になっていて劇場や多くの商会店舗が建ち並んでいる。東側には図書館、図書館の南側には学院が建っている。学院の学生たちが住む学生アパートなどがあるそうだ。他にも大手の商会ではない個人商店も多く学生街と言ってよいだろう。西側の商会店舗などの裏手や南側には専門店や工房、神殿、神殿関係者の居住区となっている。レストたちが向かっているのは神殿である。であるからして、王都の端から端に移動しているようなものだ。普通の者なら疲れるだろうがレストやフルーレはそうでもない。『祝福持ち』の恩恵の一つである。レストは物珍しげに眺めている。また、王都の水路の多さにもレストは目を見張った。やはり王都は水の精霊の影響が大きいのだろうことが伺えた。王都の別名は『水の都』と言われて有名なようだ。
レストたちは今、中央大通りを通っている。歓楽街に当たる地区である。大手商会店舗のビルが建ち並び壮観である。これにもレストは驚いた。流石のレストもきょろきょろと興味深げに店舗を見回している。レストにとってとても珍しいものだったのだ。レストが居たシェスカではこの様に大きな店舗と言うものは存在しなかった。大体個人商店かまたはバザーの様な露天売りが主なのであった。ここ王都では露天で売ってはいるが洒落たワゴンで商品を売っているようだ。魅せることに重点を置いているのだろう。
「レスト様、驚いたでしょう?」
「うん、シェスカではこんな風には売っていなかったからなぁ」
「まぁ、ここは外の目を集めるための趣きですからね。生活に直結する様な所ではないですから。私も最初驚きましたから~」
フルーレは苦笑しながら言った。
レストの加護精霊であるフェシェイドはテンションが高かった。風精霊は賑やかなところなどが大好きだ。中央大通りは人が多く行き交い、人々も高揚した気配を纏っている。レストの加護に付いて以来レストの側を離れることの無かったフェシェイドにとって久々の王都は心躍るところであった。フルーレの加護精霊のユハナーシェとフェシェイドはあっちに行ったりそっちに行ったりと忙しない。また、神殿に近付いているからだろうか?水の精霊たちもまた多くなっているようである。あちこちでヒョコヒョコ見かける。そんな元気の良い精霊たちにフェシェイドはますますご機嫌である。早速情報収集とばかりに水の精霊たちの中に突っ込んでいく。水の精霊たちはきゃ~と言いながら楽しそうに避けている。そんな水の精霊たちはレストを見つけると反対に突っ込んでくる。精霊が視えるものが見たら微笑ましいを通り越して少し気の毒になるくらい精霊たちにくっ付かれている。全身水精霊まみれだ。それを見てフェシェイドが笑った。ユハナーシェは、というと水精霊たちに紛れてレストにくっ付いていた。さらにフェシェイドが笑い、レストは苦笑い。レストは水霊たちの好きにさせて少々構いつつ歩いた。
やがて中央大通りからそれて少々奥まった所に神殿は在る。荘厳な雰囲気がある巨大な建物だ。高い天井に太く巨大な柱たち、日を取り入れる窓は細かい細工が施され日の光を柔らかくしてくれている。長い回廊を抜け丸い吹き抜けの聖堂に付いた。更に奥まった所にフルーレはレストを導き向かった。奥まった場所の目立たぬ位置に入り口がある。其処には神官が控えていた。青い神官服を着た水神殿の高位神官である。この先は儀式の部屋となっており、予め儀式に関係ある者のみが立ち入りを許されている。取次ぎの神官であるらしい。レストたちに声を掛けてきた。
「失礼。今回認定を申請されたレスト=ファガー様でしょうか?」
「はい。私はレスト様の侍女のフルーレと申します。こちらの方がレスト=ファガー様です」
神官は一つ頷くとレストの手を取った。途端にひかり、光が散った。
「ご本人様と確認いたしました。お通りください」
許可を得たレストたちは儀式室に入った。レストは思ったより小さく狭い部屋であることに驚いた。部屋の中央に人影があった。レストたちは近付いていく。人影は初老の男性であった。青い神官服を着ているが先程の神官とは違いケープの長さが随分長い。初老の神官が口を開いた。
「ようこそ。はじめまして、私はこの神殿の神殿長をしているアウールトと申します。では早速認定式を行いましょうか」
柔らかく微笑みながら水神殿の長は言った。
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