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25.挨拶=一大イベント?10

 今や謁見の間は宴の会場と化していた。精霊組たちは、一体何処まで準備していたのか、と言う程の手際の良さだ。いつの間にか用意されていた立食式のテーブルが並べられていた。テーブルには様々な料理や菓子が並んでいる。従僕たちが行きかい謁見の間に居る者たちに配り歩いている。謁見の間に居る者たちが唖然とする中速やかに準備がなされ整ったのだった。そして本格的な宴が始まったのだった。無礼講的な形で。


 精霊たちと談笑するレストはそれだけに終始していた訳ではなかった。この場には主だった貴族や官僚たちが存在しているのだ。この機を逃してはならないとばかりに情報取集を怠らない。一種の処世術であろう。この行いが出来るのは極稀である。大人ですら至難の業であろう。分かっていても上手くやるにはそれなりの技術がいるのだ。

 レストはこの時一種のことに的を絞っていた。貴族の人間性である。レストはこれまでの10年間を貴族に苦しめられてきたのだ。王都から離れれば離れる程、階級主義が顕著になるのか、中枢の貴族たちはどうか、ということを中心に探った――。

 まぁ、結果、かなり良好な感触であった。王都の貴族たちは正しく隔たりがなかった。様々な話を聞く限り、話の端々に街の住人などと深く付き合いがあるようである。しかも平民に~さんと付けて呼ぶ人たちも多々いるようだ。官僚たちの話によるとやはり王都から離れる程階級意識が強い貴族が多いそうだ。官僚たちは大抵土地を持たず爵位のみを持つものも数多くいる。それを馬鹿にする地方貴族たちが多いようだ。だが、辺境伯の貴族たちを見てみるとその辺りは案外階級意識が薄いらしい。辺境伯を任せられるぐらいなのだから相当信頼のおける人物になるので必然ではあるのだろう。だが、辺境伯となると別の意味で階級意識が強い。やはり国境を守護する者である為、民を守るのを第一としているとのこと。何というか憧れの方々、ある騎士談だそうだ。

 レストは隣に居る国王陛下に話しかけた。陛下は隣に来て以来ぴったりとくっついている。

「言い臣たちをお持ちですね。陛下は」

「ありがとう。うちの国の多くの自慢の中で一番の自慢だからね。実際、私がいなくてもこの国は回るだろうからね」

 そう言って、愛おしいものを見るように謁見の間に居る者たちを見やる。それは親のように兄のように…沢山の感情に彩られたものだった。この王は多くの時を渡ってきたのだ。約五百年もの間国の王として存在してきた。それは精霊にとって稀な、人間にとって奇跡の様なことなのだ。この王はその体は人の体に近いが、その精神は精霊に近い。精霊とは本来気まぐれなものなのだ。それが一か所に留まり人の王として存在している。それだけでも、この国の価値がわかるというものだ。精霊にとっても居心地が良いということである。それを証明するようにこの国には精霊が他の国より多く存在している。そして、精霊の寵児が生まれやすい国なのである。精霊の寵児はその代に数人は存在する。そのうちの一人は確実にこの国のある土地から生まれるのである。今回はまたイレギュラーで二人生まれたのだが。精霊たちが居心地が言いと証明するような光景が目の前に存在している。

 未だこの空間に施された精霊を実体化させる術は効いているようで精霊たちは実体化したままである。その精霊たちと戯れるように人間たちは一緒に食事をしている。ある男性貴族のワイングラスを興味深げに覗き込んでいる小精霊がいる。その精霊に気付いた男性が精霊を招きよせてガラスを少し傾ける。そのグラスに口を付けた精霊が中のワインを少し飲み、目を輝かせた。気に入ったようだ。その後は別のグラスを用意して二人は仲良く飲んでいる。また、別の所に目を向けると人と精霊とでダンスを踊っているなどもあった。このことは、やはり陛下在ってのことだろう。ここまで人と精霊が親密な関係を築けるこは国単位では有り得ないのだ。個人単位なら有り得るのだが。やはり陛下の存在は大きい。

 故に

「陛下の存在なくしてこの光景は有り得ない」

 レストは言う。陛下はやはり精霊の考え方に近いので橋渡し的な存在であることを理解していない。有能な者は多くいるのだこの国は。だが、この国のこの気質は陛下が定着させたと言っていいだろう。まぁ、色々苦労させている人たちもいるのだが。そんな人たちは陰で尽力してたりするのだが…。合掌。

「そうかな?そうならば良いな~」

 ふんわりと微笑みながらレストの言葉に陛下は言った。陛下は陛下なりに考えているのだ。世界で唯一の人と精霊のハーフ。故に陛下も思うことがあるようだ。

「レストは後悔はしていないかい?」

 陛下は問う。貴族になるということはその分自由すら奪いかねない身の上になる、といことである。レストは自由を好むであろうことは察せられるのかそう問うて来た。

「いや、後悔はしていない。それに将来は士官はしないだろうから」

「おや?それは残念」

 心底残念に思っているのか表情が残念そうに歪んでいる。まぁ、美形顔は変わらんのだけれども。

「では、どうするつもり?」

「俺は多分神殿に所属する。神官になるよ」

「うん。そうか。レストらしいね」

 残念そうにでも、嬉しそうにそう陛下は言う。実のところ神殿とは精霊と協力して世界を管理する者たちが所属するところだ。神官職というものは、正しくレストにとっては天職といえる職業であろう。精霊たちにとってもそれは願ったり叶ったりであろう。そのような事情が解るので陛下は自分の傍にレストがいなくても嬉しかったりするのだ。レストは精霊たちを理解しているから。


 こうしてレストは陛下との挨拶を終えたのだった。

余談だが、その後、無礼講故のあれこれがあったのも言うまでもないのだが、無事終えたと言って良いのであろう。


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