23.挨拶=一大イベント?8
まず、謁見の最初の目的であるエアリードの誕生日時に頂いた国王陛下からの祝辞に対する謝辞を述べることから始まった。
カルスタールがまず国王陛下への目通りの例を述べ挨拶を一通りし、その後にエアリード自身が謝辞を述べる形である。それが一通り終わったのでレストの番である。レストは侯爵家に養子に入ったため、その顔合わせと挨拶ということになる。
レストが口を開く。
「お初にお目にかかります。この度ファガー侯爵家に籍を賜りましたレスト=ファガーと申します。以後、国、陛下のために貴族として務めていく所存に御座います。宜しくお願い申し上げます」
綺麗にお辞儀ををしながらレストは挨拶を終えた。謁見の間に居る者たちが息を呑む程に完璧に挨拶をしてのけたのだった。
実は謁見の間にはかなりの数の人間が居た。主だった貴族たちを筆頭に官吏たちも多くこの謁見に顔を出していた。何といっても五大貴族の内の一つであるファガー侯爵家に籍を貰ったものに興味があるのだ。しかも聞く話によると貴族の子息ではないという。興味を引かれない者はいないであろう。どの様な人物かが気になる所なのだ。滅多にないイベントであるところも関係しているのだが。大体にして養子を取る必要が無いと思われるファガー家なのだ。長子であったエアリードが居るし、奥方は今妊娠して臨月なのだから。実情を知らない者たちにとっては首を傾げることであろう。まさか、レスト自身がエアリードの誕生日プレゼントであろうとは誰が想像するだろうか。その為の養子など想像をまずしないだろう。だが、彼らの反応は上々であった。まさかの完璧さをレストは示したのだった。貴族の子息ではないことは話に上っていても、元々孤児であったことは知られていない。もし、孤児であったことが知られていたのならば驚愕に値したのだが、そうはならなかった。平民でも上流階級に位置する出なのであろう、ということが彼らの主だった考えで、成程これならば受け入れもするだろうという考えに至ったのだった。実際は後々孤児であった事実が明らかになるのだが。その頃にはレストが『精霊の寵児』であることが知られているのでここでも成程、となったのだが。かなりしっかりした者であると彼らに印象付ける事ができたのだった。
レストの挨拶を受け国王陛下が応えた。
「許す。励むように」
その後、国王陛下の目が悪戯っぽく光った。運悪くそれを見てしまった者が居た。いや、必然だったのだが。何故なら国王陛下の一挙手一投足を注視していたからだ。そう、宰相殿であった。彼はこの謁見準備が行われていた時からハラハラしていた。一体何が起こるのかと戦々恐々としていたのである。何せ何を起こすか分からない国王陛下なのである。
一応人の身であることは間違いないのであるが、限りなく精霊に近い御方なのだ。この国王陛下は。感覚もかなり精霊の感性に近いと来ているのだ。心配するのも頷けるというものだ。突拍子もないことをやるのだから。だが、何かをやるとなると止めることは出来ない。ならばせめて心の準備を、ということであったのだ。実は陛下の目が悪戯っぽく光るのを見るまでは何も起こらず終わるのでは?という淡い期待があったのだった。見事に夢破れたが。確かに延々と準備をしていたのだ。これで終わる筈はずはなかった。宰相殿は項垂れた。それは盛大に。あまりのことに宰相殿は公の場であるのに取り繕うことも忘れる程のショックを受けていたのだ。だが、運良くそれを見た者は居なかった。
宰相殿が項垂れた瞬間、「ひゅぽーん」と音が出そうな勢いで精霊たちが飛び出したのであった。皆そちらの方に目が行った。ほとんどの人間が精霊の姿を目にすることは出来ない。『祝福持ち』や祝眼持ちが特別なのである。だが、この時、この場所のみはその法則に値しなかった。国王陛下が時間をかけて準備をしていたのはこの為であった。唯人の眼にも精霊が視えるようにすること。これは、ただただ歓迎の意味でのこともあったのだが、目に見える形でレストは特別だと示唆するためでもあった。精霊にとってのレストを見せるためだったのだ。彼は『精霊の寵児』なのだから。世界の至宝であるのだから。というのは建前である。ただ単にレストが訪れるということで歓迎会だ何だと、精霊たちの内で決まっただけの話である。これは精霊たちしか知らないことだが…。
謁見の間はあっという間に光の渦に包まれた。何時の間にかくす球まである。用意されていたのが周到に目隠しをかけられ出番を待っていたらしい。くす球が割れたところから『レスト王城にようこそ!!』の文字がでかでかと垂れ幕の中で躍っていた。そのくす球の中から一緒に花がキラキラとエフェクトを伴い落ちてくる。地の精霊の一種の花の精霊たちが一緒に入っていたらしい。
(せいだいにもりあげる、おやくめなの~)
(いっぱいうみだすの~)
(れすと、うれしい~?)
(きれい~?)
花の精霊たちが口々に言葉を発してレストに話しかける。レストは嬉しげにその精霊たちを視て微笑みかけた。微笑みかけられた精霊たちはきゃ~、と嬉しそうに辺りをくるくる回る。他にも水の精霊と風の精霊と火の精霊が協力して様々な光を辺りに散らす演出など様々な演出があった。
謁見の間は今、幻想的な光景に包まれていた。そんな中、レストの側に国王陛下と何時の間にか陛下の側に控えていた少年が来た。すると謁見の間が暗くなり(火の精霊の演出)、スモークが立ち込めた(風、水、火の精霊の演出)。レスト、陛下、少年にスポットライトが当たる(風、火の精霊の演出)。 そこにまた新しく光が生まれ凝縮し弾ける様に光が散った。そこには四人の男女が出現していた。一人は長い青銀の髪にサファイアブルーの瞳、国王陛下に良く似た面差しの女性。一人は毛の先がカールしたポニーテールの翠の髪、翠の瞳の女性。一人は後ろ一房が長く他は短い赤い髪、紅い瞳の男性。一人は長い茶色の髪、黄金の瞳の男性である。
謁見の間では『祝福持ち』以外の者たちの息を呑む音が響いた。
四人はこの世界そのもの。神にして精霊たちの王。
彼の精霊王たちであった。
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