22.挨拶=一大イベント?7
王城の一室。
余り広くはない部屋の中の端、其処には一人の従僕が控えていた。床には大きく魔法陣が描かれた絨毯が敷かれている。従僕は一度、懐から懐中時計を取り出し、目を落としたが再び魔法陣に目を戻した。
(時間だ――。)
従僕がそう思った瞬間、魔法陣が輝きだした。輝きが増し、また光が収束して散っていくと其処には長身の人影二つと中ぐらいの人影が二つ、小さな人影が一つ出現していた。従僕がこの部屋で待っていた理由である者たちだ。従僕が口を開く。
「ようこそ、御待ちしておりました。ファガー侯爵様。どうぞこちらに。御案内させて頂きます」
ファガー家から転送陣で王城に登城したレストは魔法陣の光が散って周りが見回せる様になると其処がファガー家の転送室ではない事に気が付いた。確かに王城なのだろう。全体的に造りが大きい。
だが、この城には小さいものも多いいらしい。魔法陣の光と共に散っていったと思っていた精霊たちも未だにレストにくっ付いているし、何故か数多くの精霊たちがこの城にいるらしい。先程からあちこちと密集している状態だ。視える者以外には関係はないだろうが、見えるものにはなかなかすごい光景だと思われる。何せレストにとってそうなのだから相当だ。レストが居るというだけで精霊が引き寄せられてくる事からレストにとっては精霊が他の場所より多く見かけられるのは不思議なことではない。しかし、目の前に広がっている光景は言っては何だが異常である。この城内全ての場所で精霊が密集していると言うのは何の冗談なのだろうか、というものである。まぁ、有り得ないことではないのかもしれない。相手は精霊。有り得ると言えば有り得る。面白いからやってしまおう、が彼らの思考回路なのであるからして…。
案内人であろう人が養父であるカルスタールに声を掛けて先導していくその間も周りの精霊たちは減らない。それどころか向かう先は更に増えていっている様だ。一体何なのだろうか・・・。
レストが悩んでいるのを余所に精霊たちは相変わらず平常運転である。きゃわきゃわとレストに纏わりつきエアリードにも引っ付いていく。まぁ、引っ付けるところには引っ付いていっているみたいなのだが。
(レスト~レスト~あそびにきた?)
(ちがうよ~あそびにきたんじゃないよ?)
(じゃあ、なんで?)
(おうさま、いってたじゃない)
(そうそう~)
(おうさま、よんだんだよね~)
(ね~)
(だから、ぼくらもきたんじゃない~)
(そうだったー)
(うん、うん)
(ぼくらがんばってるよね)
(わたしたちもおもしろいからね~)
(れすと、きたしー)
(うんうん♪)
やはり何かあるらしい。精霊的な何かが。
そこでレストは気が付いた。確かこの国の王は精霊王の息子だったな・・・と。もしかして限りなく精霊に近いのではないのだろうか、と。
ふ、と前方を見てみるとカルスタールの背中が震えている。時たま噛み殺しきれない笑いが漏れている。笑っているらしい。
「う~ん。陛下らしいな~」
カルスタールが一言漏らすとそれに応じるように精霊たちがざわめく。
(さすがだよね~)
(ナイスだよね?)
(だって、レストくるし?)
(きてるし?)
レストの方を精霊たちが一斉に見る。その視線の数が数なだけに傍から見るとちょっと怖い。だが、そこはレスト。それより気になったのはやはり自分が問題なんだな、ということと完璧に精霊感覚で行われているのだということだった。これに関してはエアリードも苦笑している。彼も『祝福持ち』故に視も出来るし声も聞こえるのだ。故に精霊たちの反応に苦笑するしかないのだ。精霊たちの反応がここまでくれば『祝福持ち』は大体の者がレストのことを精霊の寵児だと気付くだろう。レストは未だに自覚は無い様だが。多分、国王陛下の反応で大体の人、『祝福持ち』以外の者たちも察するだろう。とは言え、神殿に行って鑑定を行うまではそうであるであろう、という不確かなものだ。明日にでも兄は神殿に鑑定をしに行くだろう。何故明日なのかと言うのは、この精霊たちの歓迎振りからして陛下が兄を離さない可能性があるからだった。
このエアリードの判断が間違っていなかったという事は謁見時に明らかになることである。この後すぐのことなのだが。
さて、そうこうして先導されていた一行は執着地点に到着した。謁見の間の扉の前だ。謁見の間の扉を守る騎士に従僕が声を掛ける。騎士は心得たように観音扉を観音開きにする。謁見の間に到着した一行を高らかに告げた。
「ファガー侯爵様ご一行ご到着です」
こうして、レストはエトルア国王陛下と対面する直前まで来たのであった。
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