20.挨拶=一大イベント?5
朝食を終えたレストとエアリードは衣裳部屋に来ていた。勿論衣装担当のアジェスたち一同が揃っている。
レストを見てアジェスが真剣な表情で口を開く。
「レスト様はレスト様の色合いが良いかも知れませんね。御髪と瞳の色に合わせましょう」
衣装担当のメイドに目配せをした。目配せをされたメイドは衣装の海の中に消えていった。それを確認してからアジェスはレストたちに目を戻した。
「レスト様のご衣裳を選んでおりますのでエアリード様の物を考えましょう。エアリード様は何かご注文がおありでしょうか?」
そうアジェスが声を発してからレストの方からの視線を感じたらしく、アジェスはレストに目を移し訊ねた。
「レスト様。何か仰りたい事がおありならば何なりと」
「何故俺には衣装の注文を訊いてくれないのかと思って、な」
「その事でしたら別にレスト様を蔑ろにした訳では御座いません。レスト様はまだこういう事は慣れておられませんし、色々分かりませんでしょう?動き易さは考慮しておりますので心配なさらないでください。ただ、やはり少々窮屈な服になってしまうのは勘弁してください。何せ国王陛下の御前にお出になるのですもの。それなりに格好をつけなくてはいけませんので」
「あぁ~…分かった。確かにアジェスの言うとおりだ。俺は衣装のことに関しては全然分からない。アジェスに任せるよ」
「御一任有難う御座います。満足頂ける様な仕事を致します」
「エア、割り込んで悪かったな」
「いいえ。兄上がそう思われるのも最もだったと思います。アジェスのセンスはとても良いので楽しみになさってください」
兄とメイドのフォローが出来る出来た弟のエアリードであった。普段は表情の乏しいエアリードの笑顔が眩しい。
「それでですね、アジェス」
「はい、如何致しましょう」
「兄上と同様の物はないでしょうか?」
「同じ衣装のサイズが違うものということで御座いますね?」
「そうです」
「カルスタール様の幼少時の御衣裳のリストにはあったと存じます。カルスタール様のお気に入りで、未だに気に入っているとのことで確か今の御自身用にも同様の御衣裳があったと記憶しています」
そう言ったあと不意にアジェスは黙り込み考え事を始めた。この様なアジェスは何時もの事なのでエアリードは無礼を問わない。レストは言わずもがな、である。暫くして考えが纏まったのか二人にある事を提案したのだった。レストとエアリードはそれは良いと頷いたのだった。
そうこうしている間にレストの衣装を取りに行っていたメイドが戻ってきた様だ。衣装を持って控えていた。
衣装はアビ・ア・ラ・フランセーズである。コート以外は柔らかな、だが、形が崩れない程度の硬さがある。そして、色合いは白地に翠の刺繍が施してある。精巧に施された刺繍はとても美しい。所々、金銀の刺繍が置かれておりさらに美しさが際立っている。確かにレストの色であり、とても似合っている。
エリアード様に更に小さめのアビ・ア・ラ・フランセーズが用意され、エアリードも身に付けたのを見てアジェスは一つ頷いた。
「カルスタール様やエアリード様は濃い衣装か白い衣装がお似合いですからね。確かにこれをカルスタール様が気に入ってらっしゃるのは分かりますね」
衣装担当者のメイドたちは主人である三人が並んで立っているのを想像してウットリとした。涎を垂らさんばかりに・・・。良い乙女がする表情ではない。
(あぁ、早く見てみたい・・・)
が彼女たちの心境であった。
そんな彼女たちを見てレストとエアリードはちょっと生暖かい眼差しを向けた。なんとなく、なんとなくだが目の保養目的に使われている様な気がしないでもなかったから。大当たりなのだが。そして、そんな彼女たちから目を外し、精霊たちを眺めるレストとエアリードはちょっと逃避気味だ。彼女たちの空気に中てられたのかもしれない。精霊たちは今日も平常運転だ。精霊たちは変わらない。綺麗な衣装に纏わりついている。精霊は綺麗な物が大好きだ。故に衣裳部屋の衣装に、レストやエアリードに纏わりつききゃらきゃらと笑い戯れている。平和である。和みだ。
(平和であれば良い――)
とレストは思う。が、やはりそこは国王陛下である。ぶっちゃけかなり遊び心満載というか何というか、レストが思うようにいかないのである・・・。
騒がしいのはお約束なのだ。
お約束事を成しているという国王陛下は、というと集めた精霊たちを総動員して未だ準備を行っていた。ギリギリまで粘ってやるらしい。この日の為に他の予定を入れない徹底振りであった。宰相殿が嘆くほどであった。何故なら前倒しで裁いた書類の数が半端無かったのである。何時もこれほど真面目に裁いてくれればと思うのであった。そうすれば色々と楽なのだ。周りが。そう、昨日はレスト捕獲の報が入り、養子了承書を作成した後に怒涛の勢いで裁決書類を片付けていった。それ故に国王陛下の逃走はその日は起きなかったのである。だが、宰相殿は本日付の予定が入っていた部分の調整に明け暮れた。国賓客が居なくて幸いだった、と大きく胸を撫で下ろしていたのはご愛嬌なのだろう。
何にしろ今日も今日とて宰相殿の不幸は続くのであった。
合掌。
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