18.挨拶=一大イベント?3
ほのぼのとレストとエアリードが朝の挨拶を終えたところで、エアリードが後ろに控えていた侍従の少年を招き寄せた。侍従の少年は黒髪翠眼の少年である。きりりとした目が印象的だ。清々しい凛々しさがある。少年はレストよりも幾分か年嵩に見える。だいたい十二、三歳といったところだろうか。実際、後にレストが訊いた年齢は十二歳ということだった。エアリードは侍従の少年を自らの横に立たせてレストに紹介する。
「兄上、この者は私の侍従のフェンド・シーです。私の乳兄弟でもあります」
その言葉と共にフェンドはレストに対して胸に手を当てて深く礼をし、言葉を紡ぐ。
「ご紹介に預かりましたエアリード様の侍従を務めさせて頂いているフェンド・シーと申します。レスト様、この度はファガー家に養子の件了承ありがとうございました。私が礼を言うのはおこがましい限りなのですが、エアリード様がそれはそれは楽しみにしていた兄上様が予想以上であったことにとても喜んでおられます。我が主を末永く宜しくお願いいたします」
フェンドの言葉を聴き、エアリードは慌ててフェンドに食って掛かる。
「フェンド、余計な事は言わなくていい!」
エアリードは大分大人びているがやはりまだまだ五歳児の子供なのだから恥ずかしいことでも無いと思うのだが、それをエアリードは良しとしないらしい。
「エア、俺は反対に嬉しいけどな」
そんな、エアリードに対してレストは正直に伝える。何といってもレストにとってエアリードは可愛い可愛い弟なのだ。この全力で懐いてくる弟は孤児であった時の弟分たちとはやはり違うのだ。弟分たちは庇護をしなければいけない仲間たちであったが、エアリードは無条件に可愛がる対象である。正しくレストは肉親の情を彼に抱いているのだ。レストにとって無条件に慕ってくる相手というものは精霊以外ほぼ存在しなかったといっていい。環境が環境であったのは致し方ないことではあるが。そんな中、無条件で慕ってくる存在というのはレストにとって衝撃であり、とても心地よいものであった。レストという存在そのものを必要としてくれることは精霊以外からは向けられたことのないものだったのだ。肉親が存在していないレストには知る由もなかったものであった。故にエアリードの存在はレストにとって唯一無二の弟となったのだ。その所為か幾分ブラコン気味になっている。とはいえ、エアリードもこの時点で十分ブラコンなのでどっちもどっちなのであるが。
「エアは俺にもっと甘えていいんだ。俺は兄で、エアは俺の弟なんだからな」
そんなレストの言葉にエアリードは嬉しそうに頷いた。微笑ましく二人の遣り取りを見ていたフェンドはエアリードに声を掛ける。
「エアリード様、私の他にも紹介せねばならぬ御方が居られるでしょう?」
「ファルシューファ」
エリアードは宙に向かい声を掛ける。そこには美麗な高位風精霊が居た。エリアードの加護精霊のファルシューファである。
(お初に御目にかかります。至高の方々の“至宝の君”。私、エアリード・ファガーの守護精霊、ファルシューファと申します。どうぞ良しなに)
「よろしく、ファルシューファ。俺はレスト、昨日からこの家の一員に迎え入れられた者だ。色々教えてくれると嬉しい」
(宜しゅう御座いますわ)
「あと、俺の事はレストでいいぞ?口調も畏まらなくていいから」
(分かったわ。レスト様)
「様もいらないんだが・・・」
(それはご勘弁を)
「フェシェイドは全然だぞ?」
(彼の者は特殊です)
溜息をしつつ答えるファルシューファ。そこに心外だとばかりにフェシェイドがいきなり現れ言い返す。
(オレは別に特殊では無いぞ)
(高位精霊としては特殊でしょう・・・)
呆れつつファルシューファは言う。高位精霊とは調整役である。無茶振りする上司とハッチャける部下を抑える役、もとい中間管理職とも言う。故に好き勝手に行動する高位精霊はそう居ない。まぁ、例外である者が目の前に居るのだが。
(貴方、あっちにふらふらこっちにふらふらして一所に落ち着こうなて、これっぽっちも考えていなかったじゃないの)
(仕方なかろうが、オレは風霊の特性でもって面白いところに行きたいんだからな)
(その特性は、中位から下位の者たちのものよ、全く。でも安心したわ。その性に反して貴方は高位精霊の中でも屈指の者ですもの。レスト様の加護精霊としては適ったりよ)
(そうだな。レストの側は面白いからな)
言い合いを始めた高位精霊たちにエアリードとフルーレはポカンとしていた。レストだけは多くの精霊の性質を知っているだけに驚きはしない。まだ言い合いをしている高位精霊たちを視ていたエアリードはハッとして、フェンドを振り向く。そして、時間を確認する。そろそろ八時近い。とりあえず、精霊たちは放っておくことにして、レストに声を掛ける。
「兄上。兄上も今日は謁見なさるのですよね?」
「ん?と言う事はエアもするのか?」
「はい。参内して昨日の祝辞を賜ったことに対しての挨拶とお礼を申し上げなくてはいけないので」
「そうか。一緒か。心強いな」
そう言ってエアリードに柔らかく笑いかけて頭を撫でる。エアリードは気持ちよさそうに目を細めて享受している。
その二人に侍従と侍女は声を掛ける。
「では、まず朝食を摂りに参りましょうか。お二人とも」
「その後は準備です」
何とも息のあった声掛けであった。
2012/07/02 ファルシューファの口調を直しました。
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