十人十色のランデブー
「はいはい、オメーら準備は良いかぁ!? 今日この街にわざわざ出てきたのは他でもねえ、ある使命を遂行するためだ!! 抜かりはねえだろうな、野郎ども!!」
「女性率の方が高いんだけど?」
「抜かりはねえだろうな、野郎ども、麗しき御嬢さん方、そして美咲!!」
「ちょっと何であたしは麗しき御嬢さんの枠に入ってないのよ!?」
「お、落ち着いて、白波瀬さん……」
「これが落ち着けるもんですか!? 燕は良いわよ、麗しき御嬢さんグループじゃない!!」
「み、美咲ちゃん……」
「香織止めときな、とばっちりくうよ。あ、深緋ちゃんだっけ? 話は聞いてるよ。あたしは上原千佳。で、こっちのチワワみたいのが園宮香織よろしくね」
「チワワッ!?」
「ふふ、今日はよろしくお願いします。上原さん、園宮さん」
「あ、下の名前で良いよ。あたしたちもそう呼ぶから。良いよね香織?」
「うん、えっと……、お隣は十六夜さんでしたっけ?」
「満月で良いよ。アタシも下で呼ぶから。それに敬語もなしね」
「あ……、はい!!」
「じゃあ、改めて宜しくお願いしますね、千佳さん、香織さん。――で、頼人さんはどうしてさっきからだんまりを決め込んでいるのかしら?」
「…………オマエが原因じゃねえか」
さっきから笑顔でこっちに殺気飛ばしてきやがって。いくら同調していない状態だからってそんな切れ味抜群の殺気を叩きつけられたら迂闊に口も開けねえようにもなるわ。
クダンが居候となった二日後の今日。俺たちは地元から少し離れたショッピングセンターやオフィス街が乱立する市街地を訪れていた。
わざわざここまで出向いた理由は二つ。一つは現代社会において生活するために必要な物品を殆ど有していなかったクダンの日用品を揃えるため。近隣の店でも十分だっただろうが、服にしろ何にしろ、選択の幅が広がった方が彼女としても良いと判断した。
そしてもう一つは深緋に埋め合わせをするため。俺が身動きを取れなかった間、家に訪れた龍平らに上手く、いや下手くそだったが話をつけてくれたことの礼をするためだ。それが何故、ここに来ることになるのかというと――。
「静まれい!! お前ら忘れたんじゃなかろうな!? 今日は!! ここにいる四谷深緋ちゃんの妹さん、縹ちゃんの誕生日プレゼントを選びに来たんだぜ!?」
こういうわけだ。
もうすぐ縹ちゃんの誕生日らしいのだが、この姉、生まれてこの方プレゼントというものをしたことがないらしく何を選んだら良いのか皆目見当がつかなかったらしい。それでも満月がいるのだから何とでもなるのではと思ったのだが、どうしてもと頼まれては、そして借りがある以上仕方がない。
ただ、まともに友人のいない俺とて誰かに贈り物をした経験などないに等しく、しかも年頃の女の子が喜びそうなものなど予想もつかないことは言うまでもないだろう。だから、不本意ながらも美咲と南、そして龍平という援軍を呼ぶことにしたのだ。う、う……、そう上原とそ……、園宮が美咲に誘われてきたのは予想外だったが今回に限っては協力してもらっている立場上、何も言うまい。
協力してもらうことはそれだけじゃないのだから。
「あー、龍平? 一人で盛り上がってるとこ悪いけどちょっと良いか?」
「んあ? どしたよ、頼人」
「ちょっと紹介したいヤツがいてな……、おい、いつまでも隠れてねえでこっち来い、クダン!!」
俺がそう声をかけると、少し離れたところにいたイアの後ろからひょっこり顔を出す、クダン。そしてイアが前進すると、自身もジリジリとこちらに接近してくる。
……怯えすぎだろ。
「うっひょう!! よよよ、頼人、そのダボダボTシャツ着た褐色ロリはどどど、どちら様!? っていうか抱きしめて良い!?」
「オマエのせいかよ!!」
いくらなんでも怯えすぎだと思ったわ!!
龍平とイアに美咲を拘束するよう頼み、場が落ち着くのを待つ。その僅かな時間でも奇異の目に晒されるのが嫌なのか、クダンは自分から離れたイアの背から俺の背後に移動していた。そんな彼女の肩を掴んで無理やり前に出して、やっとこさ俺は口を開く。
「なんやかんやあって俺の家にまた居候が増えることになった。んで今日は深緋に協力するついでで良いからコイツに服とか見立ててやってくれないか? 俺が選べりゃ良いんだけど、生憎と女の服はどう選んで良いのか分かんねえんだ。ほれクダン、自己紹介」
「……………………ク、クダ、ン。よろし、く」
おお……、やっぱりいつも以上に声が小さい上に震えてるな。だけどまあ、クダンにしたらかなり頑張った方なんだが……。
もしかしたら引かれてないだろうか? そう思い恐る恐る龍平たちの反応を見ると――。
「「「頼人……」」」
「「天原君……」」
「天原……」
「おまわりさんは何処かしらね?」
クダンではなく、俺が引かれていた。俗に言うドン引きである。
「いやいや、待て待て待て!! 何を想像してるのか知らねえけど、それ違えから!! 無理矢理とかじゃねえから!!」
おっそろしい誤解しやがる、コイツら!!
このまま本気で連行されるのではと思わず戦慄したが上原と園宮はともかく、後の連中は俺が嘘を吐かないと知っているのでどうにかその場は収めることができた。ただ、それを考慮しても全く恐ろしい連中である。些細な言動がきっかけとなって誤認逮捕されることなどこの国では日常茶飯事なのだから本当に気を付けて頂きたい。
「何だ、違うのかよ……。まあ、協力しろって言うんなら協力するけど、俺は力になれそうにないしな……。頼人、いっそ二手に分かれて事を進めた方が良いんじゃねえか? その方が効率良いだろ」
「……そうだな。じゃあそうするとしてどう分けるか……」
俺は心情的にはクダンに付いていてやりたいところだが、力にはなれずとも深緋と一緒に行くのが筋というものだろう。これはそもそもこないだの埋め合わせになる訳だし。となるとクダンにはイアを同行させるしかない。ネロやパーントゥがいれば別の組み合わせもあるのだろうが生憎とあの二匹はここにはいない。てっきりついてくるものと思っていたが彼らは声を合わせて「そんな人混みの中に埋もれたくない」と主張したのだ。
ネロはともかくパーントゥは相棒としてそれはどうなのかと思ったが、クダンが許可した以上俺が口を出すことではない。そういうわけで特に考えることなく俺はその申し出を受け入れることにしたのである。
さて、残る人間は満月、龍平、美咲、南、上原、園宮。満月は当然深緋と行動を共にするとして、上原、園宮はコンビでクダンのところに行ってもらおう。これはまあ単純に俺が一緒にいたくないだけだが。腹の中を見せることなくこの組み分けを提案すると、満月は特に異論なく、園宮がやや表情を曇らせたが最終的に上原に押し切られ可決された。
そして最後に残った三人はイアとクダンが一緒の組にいる時点で決まっているようなもの。
「美咲はクダン組、龍平と南はこっちな。んじゃあ、早速行くとするか」
美咲があの二人のセットを目の当たりにして同行を望まない筈がない。だから自然とそう言ったのだが意外にもその提案は彼女自身によって打ち砕かれた。
「……頼人、私深緋ちゃんの組でも良い? ――って何してんの?」
「いや、熱でもあんのかと思っ――スイマセッ!!」
美咲は、彼女の額に当てた俺の手を握りつぶしながら龍平に確認を取る。
「龍平、良い?」
「あ、ああ。俺は別に構わねえけど……」
俺が幼女誘拐犯に仕立て上げられたり、美咲が信じられないことを言い出したり、俺の手が潰されかけたりとアクシデントはあったが何はともあれここに組み分けが決定した。
クダン組はイア、龍平、上原、園宮。深緋組は俺、満月、美咲、南。
……何やら波乱の予感がするのは俺だけだろうか? 縋るような目でクダンとともに目的地へと出発するイアの背を追うが、彼女は一度たりとてこちらを振り返ることはなかった。
実はささみさん一挙放送見てました。どうも、久安です。
千佳? 香織? 誰? と思った方は『パトリオット』をもう一度ご覧ください、一応出てましたよ。一応。簡単に言えばよっくんにとって友達の友達。その程度の関係です。もっと賑やかにしようと思って登場をお願いした次第です。
……制作当初燕ちゃんを忘れていたのは内緒。
ま、まあ今回はここまで。次回予告です。
7話は3月29日 7時に投稿予定。それではー。




