第5話 惚れてるんだからあたりまえのこと。
甥っ子たちに囲まれて、生家で過ごす。
弟はまだ19歳だが、男の子二人の父である。
早々に両親は領地にこもってしまって、今こちらの仕事は学院にいるうちから弟が仕切っている。もちろん、先生が全面的にバックアップしている。
先生とできちゃった結婚に持ち込んだ弟。
「あたりまえでしょ?テレージアを愛してるし、他の女との結婚なんか考えらんないし。あの人が、また子がなせないと申し訳ないとか言うから。ま、がんばりました」
結婚式の時、けろりとそんなことを言う弟の執念に感服したものだ。
同じ言葉でも、弟のあたりまえ、は私でもわかりやすい。
「で、姉様はいつまでここにいるのさ?」
「うーん。離縁の手続きが済んだら、領地に行こうかな」
「本当に?ルードルフ様が姉様と離縁するとは思えないけどね」
「?」
「だって…小さい頃から、僕をライバル視するほど姉様にぞっこんだったじゃないか?手を握ったら離さないし」
「?」
「あの人、姉様が学院に行くのも耐えられなかったんでしょう?共学だからね」
「?」
「他の男に見られたくもなかったんでしょ?姉様のこと。そういうの、何て言うの?過剰な独占欲?それは僕も分かるな。テレージアが世の中で一番美しいと思うもの。誰にも見せたくないよね。その反面、この人が僕の妻だって世界中の人に言いたい気もするな」
「??」
「姉様の社交界デビューのときだって、父上とも踊らせなかったんでしょ?」
「???」
「ありゃあねぇ、急いで結婚したのも、王子殿下のせいにしてるけど、僕が見たところ…姉様を社交界に出すのに婚約者では心もとなかったからだと思うよ?どうせあの人のことだから、忙しくて家に帰れなくても、仕事場には絶対に来るな、とか言ってるクチでしょ?くくっ」
「????」
「姉様は黙って家を出てきたんでしょう?ルードルフ様は近々…血相を変えて家に来るね。賭けてもいいよ?」
「そ…そんなことないと思うわ。あの人は、あたりまえ、が口癖ですもの。貴族の婚姻で3年子が出来なかったら…離縁されてしかるべきよ」
「あ?姉様は知ってる?どうも最近の研究によるとね、女の人の出産年齢は20歳を超えると母子ともに死亡確率が減るらしい。だって、姉様だって白い、訳じゃないんでしょ?」
「…そ…それは…まあ」
「そう。惚れてるんなら、あたりまえ、だよね?子供ができなかったんじゃなくて、作らなかったんじゃないの?あの人、姉様に万が一のことがあると耐えられないから」
「…そ……」
しれっと弟が言うことに、何一つ共感できない。
私たちは家同士の政略結婚で…ルーは仕方がなく私と…。
だって、私は…。




