第4話 貴族ならあたりまえのこと。
ルーと私は、私が17歳の時に結婚した。結婚式で初めてキスもした。
ルードルフが仕えている王子殿下の結婚式の段取りが始まる前に、と、予定より繰り上げての結婚式だった。王子殿下の結婚式には流石に何年かの時間が必要になって来るので、その前に済ませておこう、という感じだった。
嫁ぎ先のヴェルナー伯爵家とも10年来のお付き合いなので、嫁姑問題もなく、実の娘のようにかわいがってもらえた。家のことなど、学ぶことは多かったが、お義母様が教えてくださった。
ルーは屋敷に戻れないことも多く、王城に泊まり込みで仕事をしている様だった。
差し入れを持っていこうとしたら、ルーに、絶対に来るなと釘を刺された。だから、仕事場に会いに行ったことはない。
舞踏会も義両親と出ることが多かった。ルーは王子殿下の側近として控えていたから。
「殿下のことを優先させるのが側近としてあたりまえのことでしょう?」
そんなこんなで…ここに嫁いでから3年たってしまった。
今朝方、私は月のものが来た。そんな気がしていた。
私は弟に迎えを頼んで、嫁ぎ先には甥っ子の誕生会に呼ばれたから行ってまいりますね、と笑った。せっかくですので、何日か泊ってきます、というと、義父上も義母上もお土産を持たせてくれた。深々と頭を下げる。付いてこようとした侍女も断った。
ルーにはお手紙を書いて、あまり使わなかった二人の寝室の机に置いてきた。
ずっとつけていた婚約指輪と結婚指輪も同封しておいた。
こういう場合の離縁の手続きはやはり、家同士でやるのだろうか?
義妹になったテレージア先生に聞いておけばよかった。
私は先生みたいに家庭教師とかができるかな?
やるとしたらどこかのお屋敷の侍女かしら?
それとも…弟に頼んで、領地に住まわせてもらおうかな。
やっぱり、修道院かな?
私は結局、3年子ができなかった。
ルーに似た子供ならかわいいだろうなあ、ってずっと思っていたけれど。
出ていくのは当たり前のことだと思う。
お迎えの馬車にはテレージア先生が乗ってきてくれた。遠ざかっていく住み慣れてしまったヴェルナー伯爵家のお屋敷が見えなくなった辺りで、先生にしがみついて泣いた。
「ビアンカはこれで良いの?もっとよく、旦那様と話さなくても良かったの?」
「……あの人は…あたりまえ、って言うわ」
「……」
結局、長い長い私の片想いだったんだ。だったら、優しくなんてしなければいいのに、そう思う。ルーは婚約者だったから…仕方なかったんだろう。結婚してからは、夫婦なんだからあたりまえだったんだろう。仕事が忙しいのも仕方がないことだと思う。それを我慢するなんて、妻としてはあたりまえのこと。
だから、貴族の暗黙の了解の…3年子ができなかった嫁は、離縁されるのは、あたりまえのこと。
テレージア先生みたいに、いつか本当の運命の人に出会えたりするのかな。
ルーは…違ったんだなあ…。ルーだったらよかったのに。




