第3話 これも、あたりまえのこと。
今回の舞踏会でデビューする皆さんと並んで、ポロネーズを踊る。
私は学院に通わなかったので、しかも、お茶会も母親と同伴ぐらいしか行ったことがなかったので、自分と同じ年ぐらいのたくさんの男女が踊るのが…もちろん初めてだったし、興味津々だった。いろいろな女の子がいる。物凄く綺麗な子も、可愛らしい子も。髪型もみんな違う。ドレスだって白が基調だけどみんなそれぞれに個性を出している。
組んで踊る男の子たちも基本白だが、以下同文。いかつそうな子もいれば、ひょろりと背が高い子、これから背が伸びるだろう子もいる。
みんなにこやかに笑い踊りながら、曲が進んでいく。
「あ、あの、よろしかったらこの後のワルツを…」
曲が終わってお辞儀をしていたら、向かい側の男の子に声を掛けられた。はずかしそうにはにかんだ笑顔に、思わずおろおろしてしまった。こういう場合は…?
「いや、彼女は僕の婚約者だ。遠慮してくれないか?」
私の手と腰をがっちりホールドして来たのは、ルー。こうして覆いかぶさるようにされると、ルーはずい分背が伸びたんだと改めて感心する。見上げると、前髪をかきあげたルーは…この会場中の男の子の中で一番かっこいいんじゃないかと思う。
「ばかか、ビー。婚約者と踊るのがあたりまえだろう?ちゃんと断れ」
「うん。そうだね」
「僕以外の男と踊らない。いいね?」
「はい」
結局…ルーと3曲も踊った。
曲が終わるたびに、たくさんのご令嬢が私たちの周りに押し寄せるのは?そういうものなのかしら?舞踏会って?
踊るだけ踊って、バルコニーで休憩することになった。
「飲み物を取って来るから、ここから動くなよ?」
そう言ってルーが会場に戻っていったので、椅子に座って夜風に吹かれていた。
暗がりに目が慣れてくると、広いバルコニーの隅では、恋人同士?がキスをしていたり、並んだ二人が手すりにもたれ掛かって女の子の髪を絡めていたり…。
…な…バルコニーって…そういうところ?
ルーも?いよいよかしら?
ドキドキしながら、明るい会場を覗いてみると、グラスを両手に持ったルードルフが、着飾ったご令嬢方に囲まれているのが見えた。頭一つ分飛び出ているルーがにこやかに笑っているのが見える。
ほんのちょっと前にはあんなに一人で期待で盛り上がっていたのに、気持ちがしゅんっと音を立ててへこんでいくのがわかる。私には向けられない笑顔だわ。
ひょっとしたら…ルーはあの中のどなたかと、”あたりまえ”のようにキスをしたりするのかしら?
私も家同士の婚約者ではなかったら…あの中にいるかしら?それで、微笑んでもらえたかしら?うっかり目立たなくて、気が付いてもらえないかしら?
でも本当は知っている。ルーにもしそんなことを言ったら、
「そんなもの、社交辞令に決まっているでしょう。何をあたりまえのことを」
って言うに違いない。




