学校案内中に…
前回のあらすじーついに高校に入学できたアルは、陽翔と学校に行った。そして陽翔は教室へ、アルは理事長室に行くことになった。陽翔が教室に着き、席に座ると、中学からの友達の翔が話しかけに来た。内容は、すごく可愛い転校生が来るらしい。という噂の話だった。その噂の人はもちろんアルのことである。そして、アルは同じクラスになり、アルの提案で学校案内をすることになった。
一、二、三時間目を終えた俺たちは昼休み一、通称昼一にアルのために学校案内をしていた。
「どうだった?初めての授業は」
「うーん…」
アルは腕を組みながら、少し難しそうな顔をする。
「正直に言うと、よく分からなかったわ」
「まあ、そうだろうな」
「でも、面白かった!」
「面白かった?」
「うん! 先生が黒板に文字を書いて、それをみんなでノートに写すんでしょ?」
「まあ、基本はそんな感じだな」
「私のいた世界では、授業って先生の話を聞くことがほとんどだったから、新鮮だったわ」
「へぇ…」
アルの話を聞いていると、やっぱりこの世界と全く別の世界なんだなって思ってくるな。そう思うと、アルのいた世界の学校のことが少し気になってきた。
「じゃあ、アルの世界にも学校があるのか?」
「もちろんあるわよ。魔法学校とか、普通の学問を学ぶ学校とか」
「魔法学校…」
その言葉を聞いた瞬間、なんだか少しワクワクしてしまった。
「アルも通ってたのか?」
「うん。私は魔法学校に通ってたわ」
「やっぱりか」
「でも、陽翔の学校とは全然違うわね」
「そりゃ世界が違うからな」
そんな話をしながら、俺たちは廊下を歩いていく。
「じゃあ、まずは教室から近いところを案内するな」
「どこに行くの?」
「図書室」
「図書室ってあの図書室?」
「そう、図書室。本がたくさん置いてある場所だ」
「本がたくさん…!」
その言葉を聞いた瞬間、アルの目が輝いた。
「行きたい!」
「そんなに?」
「私、本を読むの好きなのよ」
「じゃあちょうどいいな」
俺は少し笑いながら、図書室へ向かって歩き始めた。
「こっちの方向であってる?」
「そうだよ」
「じゃあ私先に行ってるね!」
そう言いながら、アルは小走りで走り出した。
「そんなに急がなくても図書室は逃げないぞ」
「だって、早く見たいんだもん!」
…なんだか、転校初日とは思えないくらい楽しそうで、少しだけ安心した。この世界でちゃんとやっていけるのか。最初はそんな不安もあったが、少なくとも今は、大丈夫そうだった。
そんなことを思っていたら、俺たちは図書室に着いていた。
「ここが図書室だよ」
「ここが図書室…本がたくさん!最高じゃない!」
「ここにある本を読めば少しはこの世界のことも分かるかもしれないぞ」
「少し読んでもいい?」
「いいよ。って言ってあげたい気持ちもあるけど、今は学校案内をしている途中だから、また今度な」
「はーい、」
少し不機嫌そうになったアルを連れながら、次の教室に案内しようとしたその時…
「じゃあ次は理科室に…」
「おい、聞いてんのか?」
「…」
「無視すんなよ」
そんな声は窓の外の校舎裏から聞こえてきた。窓の外を見ると、三人の男子生徒が一人の生徒を囲んでいた。
「…何してるんだ?」
「どうしたの?」
隣にいたアルも、俺と同じように窓の外を見る。
「…あれ、いじめじゃない?」
「多分な」
俺は少しだけ考えた。
「先生を呼んでくる。アルはここで…」
「助けないの?」
アルは窓の外から目を離さない。
「だって、あの子困ってるよ?」
「分かってる。だから、俺たちだけで行くより先生を呼んだ方がいい」
「でも…」
「アル。頼むから、勝手に行くなよ」
俺はアルの目を見て言う。
「…分かった」
アルは少し不満そうに答えた。
「本当に分かったんだろうな…?」
「分かったってば」
「ならいいけど」
そう言って、俺は先生を呼びに行こうとした。その時…
「お前、ずっと黙ってないでなんか言えよ!」
「…!」
窓の外からさっきよりも大きな声が聞こえた。俺が振り返ると、一人の男子生徒が、いじめられている生徒の胸ぐらを掴んでいた。
「アル、ここで待ってろ!急いで先生を呼んでくるから!」
だが…
「待って!」
アルの声が聞こえて、振り返る。そこには、今にも走り出そうとしているアルがいた。
「何するつもりだ!」
「助けるの!」
「駄目だ!」
「でも!」
「先生を呼ぶって言ってるだろ!」
「…」
アルは一瞬黙り込む。そして…
「ごめん、陽翔」
アルはそのまま走り出した。
「おい!アル!」
俺も慌てて後を追う。校舎裏へ着くと、アルはすでに男子生徒たちの横に立っていた。
「ちょっと!」
「あ?」
男子生徒たちがアルを見る。
「なんだ、お前」
「その子を離して」
「は?」
「その子、嫌がってるじゃない」
「だからなんだよ。お前には関係ないだろ」
アルは真っ直ぐに相手を見る。
「困ってる人を助けるのに、理由なんていらないでしょ?」
「…なんだこいつ」
俺は慌ててアルのところまで走る。
「アル!何してるんだ!」
「だって、この人たちが…」
「先生を呼ぶって言っただろ!」
「でも、間に合わないと思ったから…」
「だからって…」
その時だった。
「おいおい、そこのお二人さんよぉ」
胸ぐらを掴んでいた男子生徒が、生徒を突き飛ばして、アルに近づく。
「正義の味方ごっこなら、他所でやってろよ」
「…」
アルは黙ってその男子生徒を見る。
「アル、もういい。戻るぞ」
俺がアルの肩に手を伸ばした。その瞬間…
「やっぱり、無理」
アルが小さく呟く。
「目の前で困ってる人を見て、何もしないなんて…私にはできない」
「アル!」
アルが手を前へ伸ばす。
「ちょっ…待て!」
《ヴェント・バースト》
ゴォォォォッ!!
突然、猛烈な風が吹き荒れた。
「うわあああ!」
男子生徒たちは風に押され、数メートルほど後ろへ吹き飛ばされる。
「…」
その場にいた全員が固まった。もちろん俺も。
「…え?」
男子生徒の一人が呆然と呟く。
「今の…何だよ…?」
アルは何事もなかったかのように、いじめられていた生徒の方へ近づく。
「大丈夫?」
「う…うん」
「よかった」
アルは笑った。
俺はそんなアルを見ながら、頭を抱える。
「…アル」
「なに?」
俺は小声で言った。
「だから、魔法使うなって言っただろ…」
「それは…ごめん…でも、助けられたよ?」
「そういう問題じゃないんだよ」
俺が頭を抱えながら言った、その時…
「おい…今の音は何だ!」
遠くから教師の声が聞こえてきた。俺はゆっくりと空を見上げる。
「…終わった」
転校初日。学校案内どころか…今は、この状況をどう言い訳するかを考えないといけなくなってしまった。
次回の話も作っていますので、お楽しみに!良ければ感想よろしくお願いします!




