表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
身代わり結婚のはずが、冷徹眼鏡公爵様に溺愛される〜元新婦に身体を押し売りされて、幽霊として憑かれているのですが!?〜  作者: 滝里シエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/33

20 このお菓子はとっても甘いです(1)

「はぁ……」


 花が咲き終わり、葉だけになった菫が風に揺れる庭園で、私は溜息をつく。


 昨夜はアルフレッド様と気まずいまま帰路についた。


 今朝は夜会の疲れからか寝坊をしてしまい、起きた頃にはアルフレッド様は出掛けた後だった。

 セドリックさんから、王宮へお仕事に向かったと教えてもらった。

 だから、あれから顔を合わせていない。


『スミレ、元気を出しなさいな。それにしてもあいつは本当に狭量な男ですわ! スミレを怒るなんて見当違いも甚だしいっ』

 ベアちゃんは腕を組み、怒りが収まらないといった様子だ。


「でも、私が黙って会場を出たから……」


『いいえ! 元はといえば、あのルドルフ殿下の責任ですわよ。婚約者でありながら、マリアンヌ様を危険に晒すなんて! ……伯爵家という立場上、彼女に不満を抱く者がいないはずがないのですわ。特にカタリナ様辺りは……』

 ベアちゃんは唇を噛みしめる。


(カタリナ様って、昨日の公爵令嬢のことだよね……?)

 

「どういうこと?」


 私が尋ねるとベアちゃんはこちらを一瞥して、遠くの花壇を見ながら話し始めた。


『……殿下の婚約者候補の筆頭は、カタリナ様だったのですわ。それを殿下がマリアンヌ様を見初め、婚約者に決めましたのよ。あの腹黒王子、裏でかなり手を回したんじゃないかしら』


 ベアちゃんは憎らしそうに顔を歪めている。


(は、腹黒王子って……) 


『まぁ、カタリナ様は気に入らなかったのでしょうね。幼少の頃から王家に嫁ぐつもりでいましたのに、それを格下の伯爵令嬢に奪われたと。……マリアンヌ様は何も悪くはないのに、悔しいですわっ』


 ベアちゃんは怒り心頭といった様子で、両手を握った。


「……そうなんだ……」


 私は納得して、首を振る。

 王子様の婚約者候補となると、小さな頃から教育を受けるのだろう。そんな小説を読んだことがあった。

 

『ですから、スミレが飛び出していった時は驚いたけれど、嬉しかったですわよ』


「ベアちゃん……」


『何の役にも立たなかったけれど』


「うっ……」

 グサッと、ベアちゃんの辛辣な一言が胸に刺さる。


 後先も考えず飛び出し、結局、カタリナ様に一方的に嫌味を言われただけだった。

 ベアちゃんだったら、ちゃんと言い返していたはずだ。


(……本当はベアちゃん、自分でマリアンヌ様を守りたかったんじゃないのかな……?) 


 それに私は、公爵夫人としての評判も落としてしまったのかもしれない。だから、アルフレッド様もあんなに怒ったのだろう。


「アルフレッド様が帰ってきたら、ちゃんと謝るよ。迷惑かけちゃったからね……」


 私の言葉にベアちゃんは大きく溜息をつく。


『はぁ、スミレがそんなに気にすることありませんのに。……あの男が素直じゃないのがいけないのですわ。心配なら心配だと言えばいいものを……、本当ヘタレ眼鏡っ』


 ベアちゃんは途中から、ブツブツと独り言のように呟いてよく聞き取れない。


「え? ごめん、何て言ったの?」

『いいえ、こちらの話ですわよ、ふふっ』


 ベアちゃんは教えてはくれず、意味深に笑うだけだった。



◇ ◇ ◇


 夕食後、アルフレッド様が王宮から戻ってきた。


 ベアちゃんには一人で行きなさいと言われ、私は一人で執務室に向かう。

 

 数回深呼吸をしてから、私はドアを叩く。


「……セドリックか? 入れ」

 

 ドア越しに落ち着いたアルフレッド様の声が聞こえたが、セドリックさんと勘違いしているようだった。



(どうしよう……。夜に来るべきじゃなかったかも……)

 戸惑いながらも返事をする。


「あ……、いえ、私……べ、ベアトリス……ですが」


 ガタンッ!!


 室内から何かがぶつかるような音が聞こえて、心配になった。


(どっ、どうしたんだろう!? もしかして、アルフレッド様の身になにか!?)


「だ、大丈夫ですか!?」


 私は部屋の中に声を掛け、様子を探るようにドアに耳を張り付けた。


 あれから音がしない……。


 不安になって、もう一度声を掛けようとした時、中からアルフレッド様の声が聞こえた。


「……だ、大丈夫だ。何でもない。……入れ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ