↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
哲学と私 あるいは、チンポジ博士の講義  作者: チンポジ博士


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
91/200

迷惑とは。

 迷惑とは何か。


 その問いを出すと、博士は紙ナプキンに短く書いた。


 他人の運用コストを、勝手に増やすこと。


「実務ですね」


「迷惑は実務だ」


「もっと感情の話かと思いました」


「感情も関係する」


「では?」


「まず分ける」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 不快。

 迷惑。

 危害。


「また分ける」


「何度でも分ける」


 博士は言った。


「不快とは?」


「嫌な気持ちになることです」


「そうだ」


「危害とは?」


「身体、財産、権利などに損害が出ることです」


「そうだ」


「では迷惑とは?」


「他人に負担をかけること?」


「近い」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 他人の行動、時間、空間、注意、手間を勝手に使うこと。


「かなり分かりやすいですね」


「迷惑は、他人のリソースを使う」


「リソース」


「そうだ」


「時間」


「はい」


「場所」


「はい」


「集中力」


「はい」


「手間」


「はい」


「安全確認」


「はい」


「感情の処理」


「はい」


「それらを勝手に使う」


「それが迷惑」


「そうだ」


 博士は続けた。


「電車で大声を出す」


「迷惑ですね」


「道の真ん中で立ち止まる」


「迷惑です」


「約束の時間に遅れる」


「迷惑です」


「ゴミを片付けない」


「迷惑です」


「人の話を遮る」


「迷惑ですね」


「全部、ただの不快か?」


「違いますね」


「危害か?」


「そこまでではないこともある」


「では?」


「運用コストが増えている」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 不快では足りない。

 危害までは行かない。

 だが、負担は発生している。


「この中間ですね」


「そうだ」


「かなり大事ですね」


「かなり大事だ」


 博士はうなずいた。


「ここを見ないと、全部が極端になる」


「極端?」


「嫌なだけだろ、で終わる」


「はい」


「または、加害だ、で膨らむ」


「ありますね」


「どちらも雑だ」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 嫌なだけ。

 加害である。


「どちらにも逃がすな」


「強いですね」


「強くてよい」


 博士は言った。


「迷惑は、法で裁くほどではないことも多い」


「はい」


「だが、放置すると共同生活が壊れる」


「共同生活」


「そうだ」


「一人だけなら迷惑は起きにくい」


「はい」


「他人がいるから迷惑が起きる」


「なるほど」


「アリストテレスだ」


「共同体ですね」


「そうだ」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 人は一人で生きていない。

 だから迷惑が生まれる。


「チンポジ哲学に近づいてきましたね」


「かなり近い」


 博士は続けた。


「君には君のベスポジがある」


「はい」


「他人には他人のベスポジがある」


「はい」


「君が自分のベスポジを探す」


「はい」


「それ自体は悪くない」


「はい」


「だが」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 自分のベスポジ探しで、他人のベスポジを崩す。


「それが迷惑ですか」


「かなり迷惑だ」


「自分は楽でも」


「相手がコストを払う」


「自分は自由でも」


「相手の自由が狭くなる」


「自分は気持ちよくても」


「相手が処理させられる」


「かなり現実ですね」


「迷惑だからな」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 自分の自由。

 他人の運用。


「混ぜるな」


「自由なら何をしてもよい?」


「違う」


「迷惑をかけるな、なら何もするな?」


「それも違う」


「難しいですね」


「難しい」


 博士は言った。


「迷惑をゼロにすることはできない」


「そうなんですか」


「できない」


「なぜですか」


「人間は存在するだけで、少しずつ他人の空間を使うからだ」


「重いですね」


「重くない。普通だ」


 博士は続けた。


「歩けば場所を使う」


「はい」


「話せば音が出る」


「はい」


「仕事を頼めば相手の時間を使う」


「はい」


「助けてもらえば手間を使う」


「はい」


「つまり?」


「迷惑は完全には消えない」


「そうだ」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 迷惑ゼロは無理。

 だから調整する。


「青信号回ですね」


「そうだ」


「権利はアクセル」


「義務はブレーキ」


「そして迷惑は?」


 博士は少し考えた。


「車間距離だ」


「うまいですね」


「私は哲学者だからな」


「名前以外は」


「その評価は迷惑ではない。少し不快なだけだ」


「分けますね」


「何度でも分ける」


 博士は言った。


「ミルを借りよう」


「不快と危害ですね」


「そうだ」


「迷惑は?」


「不快と危害の間にある運用問題だ」


「なるほど」


「不快だから禁止、は飛躍だ」


「はい」


「危害があるなら介入を考える」


「はい」


「迷惑なら?」


「調整する」


「そうだ」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 不快なら、距離。

 迷惑なら、調整。

 危害なら、介入。


「綺麗ですね」


「題材以外はな」


 博士は続けた。


「カントなら?」


「人を手段としてのみ扱うな」


「そうだ。迷惑とは、他人を自分の快適さの処理係にすることでもある」


「強いですね」


「強くてよい」


「自分が楽をする」


「はい」


「後始末は他人」


「はい」


「自分が自由に振る舞う」


「はい」


「周囲が気を遣う」


「はい」


「自分は言いたいことを言う」


「はい」


「相手が場を収める」


「ありますね」


「ある」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 自分の快適。

 他人の後始末。


「これが迷惑」


「そうだ」


「ニーチェは?」


「その自由は、本当に自由か。ただ他人に後始末させているだけではないか、と疑う」


「刺しますね」


「必要だ」


 博士は少し笑った。


「ただし」


「ただし」


「迷惑という言葉も危ない」


「え」


「人を黙らせる道具になる」


「あ」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 迷惑だ。

 だから消えろ。


「これは?」


「危ないですね」


「かなり危ない」


「迷惑をかけるな」


「はい」


「だから存在するな」


「だめですね」


「そうだ」


「声を出すな」


「場合によりますね」


「そうだ」


「外に出るな」


「危ない」


「違う文化を持ち込むな」


「かなり危ない」


 博士はうなずいた。


「迷惑という言葉は、共同生活の調整にも使える」


「はい」


「だが、排除にも使える」


「はい」


「だから慎重に扱う」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 迷惑。

 排除。


「混ぜるな」


「ここも大事ですね」


「大事だ」


 博士は言った。


「迷惑かどうかを見る時は、こう問え」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 誰の。

 どんな負担が。

 どれくらい増えたか。

 回避できるか。

 分担できるか。

 必要な負担か。


「社会問題テンプレですね」


「そうだ」


「迷惑です、だけでは足りない」


「足りない」


「どの負担か言え」


「そうだ」


「どれくらいか言え」


「そうだ」


「誰が処理するのか言え」


「そうだ」


「実務ですね」


「迷惑は実務だと言った」


 博士は今日の答えをまとめた。


 迷惑とは、他人の運用コストを勝手に増やすことである。

 不快、迷惑、危害は違う。

 不快は嫌な気持ちになること。

 危害は身体、財産、権利などに損害が出ること。

 迷惑は、他人の行動、時間、空間、注意、手間を勝手に使うことである。

 迷惑は、不快では足りず、危害までは行かないことも多い。

 だが、負担は発生している。

 迷惑ゼロは無理である。

 だから調整する。

 不快なら距離。

 迷惑なら調整。

 危害なら介入。

 ただし、迷惑という言葉を排除の道具にしてはいけない。

 迷惑だと言うなら、誰の、どんな負担が、どれくらい増えたのかを見ろ。


「博士」


「何かね」


「チンポジで言うなら?」


 博士は少し考えた。


「君が自分のチンポジを直す」


「はい」


「それ自体は本人の問題だ」


「はい」


「だが、満員電車で大きく足を広げる」


「迷惑ですね」


「そうだ」


「自分のベスポジのために」


「はい」


「他人の空間を奪っている」


「はい」


「では、迷惑とは?」


 博士は最後に一文を書いた。


 迷惑とは、自分のベスポジを守るために、他人のベスポジ処理を勝手に増やすことである。


「かなり本丸ですね」


「本丸に近い」


「でも、迷惑ゼロは無理」


「そうだ」


「だから?」


「調整する」


「どこまで?」


「不快、迷惑、危害を分けながら」


「また分ける」


「何度でも分ける」


 博士は静かにコーヒーを飲んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
※この作品は深掘りしたいなら全文を生成AIへ入力してください。
[宣伝][完結済]股間に聖剣があった ――分かり合えないと分かり合う哲学
チンポジ哲学が生まれる話です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。