諸行無常とは。
諸行無常とは何か。
その問いを出すと、博士は紙ナプキンに短く書いた。
ベスポジは続かない。
「帰ります」
「待ちたまえ」
「仏教に謝ってください」
「まだ早い」
博士はコーヒーを飲んだ。
「諸行無常とは何か」
「はい」
「すべてのものは変化する、という話だ」
「有名ですね」
「有名だ」
「難しそうです」
「チンポジで考えよう」
「やめてください」
博士は続けた。
「ベスポジを見つけた」
「はい」
「完璧だった」
「はい」
「百点だった」
「はい」
「しかし」
博士は紙ナプキンに書いた。
パンツが違う。
「あ」
「椅子も違う」
「あ」
「気温も違う」
「あ」
「体調も違う」
「あ」
「年齢も違う」
「あ」
博士はうなずいた。
「昨日のベスポジが」
「はい」
「今日のベスポジとは限らない」
「嫌ですね」
「かなり嫌だ」
博士は紙ナプキンに書いた。
ベスポジは動く。
「なるほど」
「諸行無常だ」
「最低ですね」
「かなり仏教だ」
私は少し考えた。
「でも博士」
「何かね」
「変わらないものもありますよね」
「あるように見える」
「見えるだけ?」
「かなり長持ちするものはある」
「はい」
「だが」
博士は紙ナプキンに書いた。
永遠ではない。
「強いですね」
「仏教だからな」
博士は続けた。
「若さ」
「はい」
「健康」
「はい」
「仕事」
「はい」
「人間関係」
「はい」
「価値観」
「はい」
「全部変わる」
「嫌ですね」
「かなり嫌だ」
「ではどうするんですか」
「受け入れる」
「雑ですね」
「仏教は時々強引だ」
博士は紙ナプキンに書いた。
変わるものを、
変わらないものとして握るな。
「おお」
「ここが大事だ」
「ベスポジも?」
「そうだ」
「思想も?」
「そうだ」
「価値観も?」
「そうだ」
「自分自身も?」
「そうだ」
博士はコーヒーを飲んだ。
「ここで事故が起きる」
「事故」
「昔のベスポジを守ろうとする」
「はい」
「もう合わないのに」
「あ」
「昔の自分を守ろうとする」
「はい」
「もう違うのに」
「あ」
「だから苦しい」
博士は紙ナプキンに書いた。
変わった。
認めろ。
「厳しい」
「かなり厳しい」
私は少し黙った。
「博士」
「何かね」
「チンポジ哲学と相性良いですね」
「意外とな」
「本人にしか分からない」
「そうだ」
「しかも変わる」
「そうだ」
「管理できませんね」
「かなり管理できない」
博士はうなずいた。
「だから他人のベスポジを固定するな」
「はい」
「自分のベスポジも固定するな」
「はい」
「昨日の正解を、明日の義務にするな」
「おお」
博士は今日の答えをまとめた。
諸行無常とは、すべてのものは変化するという考えである。
昨日のベスポジは、今日のベスポジとは限らない。
若さも、健康も、人間関係も、価値観も変わる。
変わるものを、変わらないものとして握ろうとすると苦しくなる。
昔の自分にしがみつくな。
昨日の正解を、明日の義務にするな。
ベスポジは固定されない。
だから探し続けるしかない。
「博士」
「何かね」
「チンポジで言うと?」
博士は少しだけ考えた。
「パンツが変わる」
「はい」
「椅子が変わる」
「はい」
「体調が変わる」
「はい」
「年齢も変わる」
「はい」
「つまり」
博士は紙ナプキンに最後の一文を書いた。
ベスポジは、見つけるものではない。
見つけ続けるものである。
「ちょっと綺麗ですね」
「仏教だからな」
「チンポジなのに」
「だからだ」
博士は笑った。




