アリストテレスとは。
アリストテレスとは何か。
その問いを出すと、博士は紙ナプキンに短く書いた。
一人でチンポジを探すな。
「急に怒られました」
「怒ってはいない」
「怒られている気がします」
「気のせいだ」
博士はコーヒーを飲んだ。
「アリストテレスは、かなり大雑把に言うと何を考えた人ですか」
「かなり大雑把でよいなら」
「はい」
「人は一人で完成しない」
「おお」
「かなり大雑把だ」
「でも分かりやすいですね」
「分かりやすさは時々正義だ」
博士は紙ナプキンに書いた。
人間は共同体の中で生きる。
「有名なやつですね」
「そうだ」
「ポリス的動物」
「そうだ」
「政治の話ですか」
「半分そうだ」
「半分?」
「生き方の話でもある」
博士は続けた。
「チンポジ哲学では」
「はい」
「本人にしか分からない」
「はい」
「他人が決めるな」
「はい」
「押し付けるな」
「はい」
「ここまではよい」
「いつものですね」
「いつものだ」
博士は少し考えた。
「では無人島に一人なら完成するか」
「え」
「パンツは誰が作った」
「人です」
「椅子は誰が作った」
「人です」
「道路は」
「人です」
「コーヒーは」
「人です」
「この喫茶店は」
「人です」
博士は紙ナプキンに書いた。
チンポジは本人のもの。
だが、パンツは他人が作る。
「急に説得力が出ましたね」
「アリストテレスだからな」
「アリストテレス、関係あります?」
「大いにある」
博士は紙ナプキンに書き足した。
本人にしか分からない。
だが、本人だけで成立しているわけではない。
「ここですね」
「ここだ」
「チンポジそのものは本人のもの」
「そうだ」
「でも、チンポジを探せる環境は他人に支えられている」
「そうだ」
「パンツ、椅子、道、喫茶店」
「そうだ」
「共同体ですね」
「そうだ」
博士はうなずいた。
「アリストテレスは、人間を完全な個人として見ない」
「はい」
「人は家族があり」
「はい」
「友人があり」
「はい」
「共同体があり」
「はい」
「その中で育つ」
「はい」
「だから人間を理解するには、関係を見る」
「関係」
「そうだ」
博士は紙ナプキンに書いた。
人間。
関係。
共同体。
「チンポジ哲学と違いますね」
「少し違う」
「敵ですか」
「敵ではない」
「珍しい」
「珍しいな」
博士は少し笑った。
「ヘーゲルは苦しかった」
「かなり苦しそうでした」
「チンポジを戦わせることになる」
「嫌そうでした」
「嫌だった」
「今回は?」
「今回は接続できる」
「できるんですか」
「できる」
博士は紙ナプキンに線を引いた。
本人にしか分からない。
↓
だが一人では生きられない。
「なるほど」
「ここだ」
「本人にしか分からない」
「そうだ」
「でも、本人だけでは成立しない」
「そうだ」
「チンポジ哲学とアリストテレスの接点ですね」
「そうだ」
博士は続けた。
「アリストテレスは徳を重視した」
「徳」
「そうだ」
「良く生きること」
「はい」
「良い習慣を積むこと」
「はい」
「良い人格を育てること」
「はい」
「それによって人は完成へ向かう」
「かなり真面目ですね」
「かなり真面目だ」
「チンポジは?」
「かなり不真面目だ」
「認めるんですね」
「認める」
博士は紙ナプキンに書いた。
良い人生とは何か。
良いチンポジとは何か。
「並べるな」
「並べると面白い」
「最低ですね」
「最高の褒め言葉だ」
博士は楽しそうだった。
「だが、少し似ている」
「似ていますか」
「アリストテレスは、人には人らしい生き方があると考えた」
「はい」
「チンポジ哲学は、人には人それぞれの収まりがあると考える」
「はい」
「どちらも、ただ欲望のまま暴れる話ではない」
「なるほど」
「むしろ調整だ」
「調整」
「そうだ」
博士は紙ナプキンに書いた。
自分。
他人。
共同体。
「全部ありますね」
「全部ある」
「チンポジ哲学にも?」
「ある」
「意外です」
「意外だな」
博士は続けた。
「自分のベスポジへ進む自由はある」
「はい」
「だが他人のベスポジを壊してよいわけではない」
「はい」
「共同体ごと壊してよいわけでもない」
「はい」
「その調整を考える」
「アリストテレスですね」
「そうだ」
博士はうなずいた。
「だからアリストテレスは敵ではない」
「珍しいですね」
「珍しい」
「では味方ですか」
「それも違う」
「違うんですか」
「違う」
「では?」
博士は少し考えた。
そして紙ナプキンに書いた。
チンポジを支える人々。
「綺麗ですね」
「私は哲学者だからな」
「名前以外は」
「その評価も、共同体の影響を受けているな」
「便利ですね」
「哲学は便利だ」
博士は今日の答えをまとめた。
アリストテレスは、人は共同体の中で生きると考えた。
人間を理解するには、個人だけでなく関係を見る。
良く生きること、良い習慣を育てることを重視した。
チンポジ哲学は本人にしか分からないことを扱う。
だが、その本人も共同体の中で生きている。
チンポジは本人のものだが、チンポジを探せる環境は他人に支えられている。
だからアリストテレスは敵ではない。
むしろ、チンポジを支える人々を教えてくれる哲学者である。
「博士」
「何かね」
「アリストテレスはチンポジですか」
「違う」
「違うんですか」
「違う」
「では?」
「チンポジを支える人々である」
悔しいが、少し格好良かった。
私は黙ってコーヒーを飲んだ。




