Eスポーツとは。
Eスポーツとは何か。
その問いを出すと、博士は紙ナプキンに短く書いた。
微細なチンポジを競う競技である。
「怒られますよ」
「怒られるだろう」
「前回も怒られそうでした」
「今回はもっと怒られる」
「なら言わないでください」
「だが通る」
博士はコーヒーを飲んだ。
「Eスポーツは身体を使わない、と言う者がいる」
「いますね」
「間違いだ」
「身体を使いますか」
「使う」
博士は紙ナプキンに書いた。
目。
手。
指。
姿勢。
反応。
集中。
「身体ですね」
「身体だ」
「でも野球やサッカーとは違いますよね」
「違う」
「では?」
「身体の使い方が小さい」
博士は紙ナプキンに書いた。
大きな身体操作。
小さな身体操作。
「分けるんですね」
「何度でも分ける」
「Eスポーツは小さい方」
「そうだ」
「でも小さいから楽?」
「違う」
博士は即答した。
「小さいからこそ、ズレが響く」
「ズレ」
「マウス感度」
「はい」
「キーボードの角度」
「はい」
「椅子の高さ」
「はい」
「モニターとの距離」
「はい」
「手首の位置」
「はい」
「指の置き方」
「はい」
「視線」
「はい」
「全部、結果に出る」
「かなりチンポジですね」
「かなりチンポジだ」
博士は満足そうにうなずいた。
「Eスポーツ選手は何をしているか」
「練習です」
「そうだ」
「反射神経を鍛える」
「そうだ」
「戦術を覚える」
「そうだ、だが違う」
「違うんですか」
「ベスポジ探しだ」
「また出た」
博士は紙ナプキンに書いた。
もっと速く反応できる位置。
もっと正確に操作できる位置。
もっと疲れにくい位置。
もっと再現できる位置。
「確かに」
「格闘ゲームなら?」
「コマンド入力」
「FPSなら?」
「エイム」
「音ゲーなら?」
「リズムと指」
「RTSなら?」
「操作量と視野」
「全部違う」
「競技ごとのベスポジですね」
「そうだ」
博士は続けた。
「しかもEスポーツは、感覚と数値が近い」
「どういうことですか」
「DPI」
「はい」
「感度設定」
「はい」
「フレームレート」
「はい」
「遅延」
「はい」
「キー配置」
「はい」
「設定として数値化できる」
「なるほど」
「だが、最後に決めるのは本人の感覚だ」
「チンポジですね」
「そうだ」
博士は紙ナプキンに書いた。
数値で追い込む。
最後は本人の収まりで決める。
「かなりEスポーツですね」
「かなりEスポーツだ」
「でも、それはスポーツなんですか」
「スポーツとは何かによる」
「出ましたね」
「出す」
博士は言った。
「スポーツを、全身を大きく動かす競技と定義すれば、Eスポーツは外れる」
「はい」
「スポーツを、技術、競争、訓練、規則、勝敗、観戦性を持つ競技と見るなら、Eスポーツはかなり入る」
「なるほど」
「言葉の使われ方だ」
「ウィトゲンシュタインですね」
「そうだ」
博士は紙ナプキンに書いた。
スポーツという言葉が、
どの場面でどう使われているかを見る。
「便利ですね」
「便利だ」
「では、Eスポーツはスポーツですか」
「ある意味ではスポーツだ」
「歯切れが悪いですね」
「哲学者だからな」
「チンポジ博士なのに」
「チンポジ博士だからだ」
博士は続けた。
「ここで大事なのは、名前ではない」
「スポーツかどうかではなく?」
「そうだ」
「では?」
「何を競っているのかを見る」
博士は紙ナプキンに書いた。
反応。
判断。
操作。
再現性。
集中。
戦術。
「競技ですね」
「競技だ」
「身体も使う」
「使う」
「ただし、かなり細かい」
「そうだ」
博士はうなずいた。
「だからEスポーツは、微細なチンポジの競技なのだ」
「やっぱり怒られますよ」
「怒られるだろう」
「でも通る」
「通る」
「悔しいですね」
「哲学とはそういうものだ」
博士は今日の答えをまとめた。
Eスポーツとは、微細な身体操作を競う競技である。
身体を使わないのではない。
目、手、指、姿勢、反応、集中を使う。
マウス感度、キー配置、椅子の高さ、モニター距離、手首の位置。
それらを調整し、自分にとって最も再現性の高い位置を探す。
数値で追い込むが、最後は本人の収まりで決める。
スポーツかどうかは、スポーツという言葉をどう使うかによる。
だが、技術、競争、規則、訓練、勝敗、観戦性を持つ競技であることは確かである。
「博士」
「何かね」
「チンポジで言うなら?」
博士は少しだけ考えた。
「マウス感度だ」
「即答ですね」
「かなりチンポジだ」
「人によって違いますね」
「違う」
「高ければいいわけでもない」
「そうだ」
「低ければいいわけでもない」
「そうだ」
「本人の手と目と反応に合う場所を探す」
「そうだ」
「ベスポジですね」
「そうだ」
博士は紙ナプキンに書いた。
プロとは、
自分のベスポジを再現できる者である。
「これは普通にかっこいいですね」
「私は哲学者だからな」
「名前以外は」
「その発言、入力遅延があるな」
「ありません」
「では、反応速度の問題か」
「無理がありませんか?」
博士は笑った。




