スポーツとは。
スポーツとは何か。
その問いを出すと、博士は紙ナプキンに短く書いた。
チンポジ哲学者たちの集いである。
私はしばらく黙った。
「怒られませんか」
「怒られるだろう」
「ですよね」
「だが通る」
「嫌な予感しかしません」
博士はコーヒーを飲んだ。
「野球を見たまえ」
「はい」
「バッターがいる」
「いますね」
「皆、構えが違う」
「違いますね」
「フォームも違う」
「違いますね」
「なのに打つ」
「打ちますね」
「なぜか」
博士は紙ナプキンに書いた。
ベスポジだから。
「雑ですね」
「かなり雑だ」
「でも通りますね」
「通る」
博士は続けた。
「ピッチャーもそうだ」
「はい」
「オーバースロー」
「はい」
「サイドスロー」
「はい」
「アンダースロー」
「はい」
「全部いる」
「いますね」
「なぜ一つに統一しない」
「結果が出るからですね」
「そうだ」
博士はうなずいた。
「スポーツは残酷だ」
「残酷ですか」
「結果が出る」
「なるほど」
「理論上は正しい」
「はい」
「でも打てない」
「はい」
「なら駄目だ」
「厳しいですね」
「厳しい」
「理論上は変だ」
「はい」
「でも打てる」
「はい」
「なら採用だ」
「なるほど」
博士は紙ナプキンに書いた。
正しいフォーム。
ではない。
結果が出るフォーム。
「強いですね」
「スポーツは強い」
博士は続けた。
「ここでチンポジ哲学と繋がる」
「そうなんですか」
「そうだ」
「本人にしか分からない」
「はい」
「だが外部結果は見える」
「はい」
「だから検証できる」
「なるほど」
博士は紙ナプキンに書いた。
本人の感覚。
客観的な結果。
「両方いる」
「片方では駄目」
「そうだ」
「感覚だけでは?」
「宗教になる」
「結果だけでは?」
「怪我人が出る」
「嫌ですね」
「かなり嫌だ」
博士は少し笑った。
「スポーツ選手は毎日何をしていると思う」
「練習です」
「そうだ」
「技術向上です」
「そうだ」
「体力づくりです」
「そうだ。だが違う」
「違うんですか」
「ベスポジ探しだ」
「言い切った」
博士は紙ナプキンに書いた。
もっと飛ぶ位置。
もっと速い位置。
もっと楽な位置。
もっと再現できる位置。
「なるほど」
「毎日やっている」
「確かに」
「しかも結果が出なければ修正する」
「はい」
「出れば残す」
「はい」
「かなり哲学的だ」
「そうなんですか」
「そうだ」
博士は続けた。
「認識論がある」
「自分の感覚ですね」
「そうだ」
「論理学もある」
「フォーム変更で結果が出たのか、偶然なのか」
「そうだ」
「倫理学もありますか」
「フェアプレーだ」
「ありました」
「存在論もある」
「あります?」
「今のフォームは本当に存在しているのか」
「何を言ってるんですか」
「スランプ中の選手は割と真顔で悩む」
「それはそうですね」
博士は満足そうだった。
「つまり」
博士は紙ナプキンに書いた。
スポーツとは、
チンポジ哲学者たちの集いである。
「怒られますよ」
「怒られるだろう」
「野球関係者に」
「だろうな」
「サッカー関係者にも」
「だろうな」
「陸上選手にも」
「だろうな」
「全方位ですね」
「だが通る」
「嫌な説得力があります」
博士は静かに言った。
「人は皆、自分の身体で世界と交渉している」
「はい」
「スポーツ選手は、それを極限までやっている」
「はい」
「そして」
博士は紙ナプキンに最後の一文を書いた。
最高のフォームとは、
誰かの正解ではない。
自分の身体が見つけたベスポジである。
私は少し黙った。
悔しいが、今回は最初から最後まで通っていた。
「博士」
「何かね」
「結局スポーツって何なんですか」
博士は少し考えた。
「高度なチンポジ探しだ」
「身も蓋もないですね」
「だが通る」
それだけは否定できなかった。




