表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
哲学と私 あるいは、チンポジ博士の講義  作者: チンポジ博士


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/67

ジェンダーとは。

 ジェンダーとは何か。


 その問いを出すと、博士は少しだけ嫌そうな顔をした。


「嫌そうですね」


「混ざりやすい言葉だからな」


「性別の話ですか」


「それだけではない」


 博士は紙ナプキンに短く書いた。


 ジェンダー=身体ではなく、自己認識・役割・文化・関係性を整理する概念


「概念なんですか」


「そうだ。少なくとも、ハードウェア仕様そのものではない」


「ハードウェア」


「身体的性別なら、制度側が参照できる外部条件がある。だがジェンダーは、自己認識や役割感覚や私的な収まりに近い」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 概念はある。

 だが、実体欄にそのまま載せるな。


「いきなり強いですね」


「重要だからな」


「チンポジ哲学ですね」


「かなり近い」


 博士は続けた。


「本人には、確かに収まりがある」


「はい」


「自分はこうだ、という感覚もある」


「はい」


「社会からこう扱われることへの違和感もある」


「はい」


「そこは否定しない」


「では何が問題なんですか」


「それを制度に載せる時だ」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 定義。

 判定方法。

 更新条件。

 参照権限。

 費用負担。

 責任主体。


「制度に載せるなら、これが必要になる」


「自己申告ではダメですか」


「私的領域ならよい」


「制度では?」


「制度は分岐する。分岐するなら基準がいる」


 博士は静かに言った。


「ジェンダーという概念はある」


「はい」


「だが、それを戸籍、医療、施設利用、スポーツ、統計、雇用制度に接続するなら、概念のままでは扱えない」


「実装仕様が必要」


「そうだ」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 私的収まりをスペック表に載せるな。

 載せるなら測定方法と運用コストを持ってこい。


「強い」


「強くてよい」


「でも、困っている人はいますよね」


「いる」


「そこは?」


「個別に見ればよい」


 博士は即答した。


「何に困っているのか」


「はい」


「どの場面で困るのか」


「はい」


「誰のどの行動で不利益が出るのか」


「はい」


「制度変更が必要なのか、個別対応で足りるのか」


「はい」


「属性で一括りにするな」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 ジェンダーに困る人がいる。

 だから、ジェンダーなら弱者である。

 これは違う。


「条件のすり替えですね」


「そうだ」


「LGBTの中に弱い立場の人が多く観測された」


「観測」


「LGBTだから弱者である」


「すり替え」


「その通り」


 博士は少しだけ目を細めた。


「属性は観測の入口にはなる」


「はい」


「だが、弱者認定の証明ではない」


「はい」


「属性で他人の内側を決めるな」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 属性で署名欄を埋めるな。


「契約の話ですね」


「そうだ。ジェンダーを根拠に、他人へ義務を発生させるなら契約の話になる」


「配慮する側、される側」


「はい」


「聞く側、語る側」


「はい」


「加害性を問われる側、被害を語る側」


「はい」


「その署名欄を、属性で勝手に埋めるな」


 博士はコーヒーを一口飲んだ。


「ここで巨匠を借りよう」


「誰ですか」


「カントは言う。他人の内側そのものには届かない」


「物自体ですね」


「少しかすめる。相手がどう収まっているかを、こちらが断定してはいけない」


「ウィトゲンシュタインは?」


「その言葉が、どの場面でどう使われているのかを見る」


「ジェンダーという語も、場面で意味が変わる」


「そうだ。自己理解の言葉なのか、制度分類なのか、政治運動の旗なのか、コミュニティ用ラベルなのか。全部同じにするな」


「ニーチェは?」


「その正しいジェンダー、その優遇、その配慮は、誰の価値なのかを疑う」


「煽りますね」


「煽る」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 コミュニティ用ラベルと、制度用マスタを混ぜるな。


「これはかなり実務ですね」


「ジェンダーは、内輪では細かくできる」


「はい」


「自己理解にも使える」


「はい」


「仲間探しにも使える」


「はい」


「だが、外部制度に接続するなら別だ」


「判定が要る」


「そうだ」


「値域も要る」


「更新条件も要る」


「そうだ」


「運用コストも要る」


「そうだ」


 博士は今日の答えをまとめた。


 ジェンダーとは、身体そのものではなく、自己認識・役割・文化・関係性を整理する概念である。

 概念はある。だが、ハードウェア仕様ではない。

 私的領域では、自己理解やコミュニティ形成に使える。

 制度に載せるなら、定義、判定方法、更新条件、参照権限、費用負担、責任主体が必要になる。

 属性は観測の入口であって、弱者認定の証明ではない。

 コミュニティ用ラベルと、制度用マスタを混ぜるな。

 属性で他人の署名欄を埋めるな。

 内側は裁かず、外部行動と実害を見る。


「博士」


「何かね」


「ジェンダーって、否定するものではないんですね」


「否定する必要はない」


「でも、制度にするなら雑に扱えない」


「そうだ」


「概念としてはある」


「ある」


「でも、スペック欄ではない」


「そうだ」


「チンポジで言うなら」


 博士は少しだけ黙った。


「ベスポジはある」


「はい」


「だが、ベスポジは戸籍に載せるものではない」


「かなり強い」


「どうしても載せたいなら、まず測り方を持ってこい」


「測れないなら?」


「私的領域に置きなさい」


 博士は最後に一文を書いた。


 ジェンダーとは、私的な収まりを説明する概念である。

 だが、概念を制度に載せるなら、思想ではなく仕様が必要になる。


「綺麗ですね」


「私は哲学者だからな」


「名前以外は」


「名前のジェンダーは何ですか」


「不問だ」


 博士は笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
※この作品は深掘りしたいなら全文を生成AIへ入力してください。
[宣伝][完結済]股間に聖剣があった ――分かり合えないと分かり合う哲学
チンポジ哲学が生まれる話です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ