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哲学と私 あるいは、チンポジ博士の講義  作者: チンポジ博士


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品格とは。

 品格とは何か。


 その問いを出すと、博士は少しだけ背筋を伸ばした。


「珍しく姿勢がいいですね」


「品格の話だからな」


「形から入るんですか」


「形は大事だ」


 博士は紙ナプキンに短く書いた。


 品格=自分の力を、雑に使わないこと


「品格とは、自分の力を雑に使わないことだ」


「力ですか」


「そうだ。知識、立場、言葉、怒り、正しさ、金、権力、人気。人は何かしらの力を持つ」


「はい」


「品格は、その力を振り回さないところに出る」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 できる。

 だが、やらない。


「抜かずの刀ですね」


「そうだ」


「チンポジ哲学ですね」


「かなり近い」


 博士は続けた。


「他人の内心を断定できる気がする」


「はい」


「でも断定しない」


「はい」


「相手の矛盾を切れる」


「はい」


「でも切らない」


「はい」


「言い負かせる」


「はい」


「でも、必要以上には言い負かさない」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 品格とは、勝てる場面で勝ちすぎないことである。


「かなりいいですね」


「偉人を借りよう」


「誰ですか」


「アリストテレスだ」


 博士は言った。


「品格は一発の正論ではなく、習慣に近い。怒れる時に怒らない。見下せる時に見下さない。奪える時に奪わない。そういう反復で形になる」


「徳ですね」


「そうだ」


「カントは?」


「人を手段としてのみ扱うな、と言う」


「品格に合いますね」


「合う。相手を論破の材料にしない。正義の踏み台にしない。自分の気持ちよさの道具にしない」


「ニーチェは?」


 博士は少し嫌そうな顔をした。


「その品格、弱さの言い換えではないか、と煽る」


「言いそう」


「だから大事だ」


「何がですか」


「品格は、できないことの言い訳ではない。できることを、選んで控えることだ」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 できないからしない、ではない。

 できるが、しない。


「これが品格ですか」


「かなり近い」


「チンポジで言うなら」


 博士は少し考えた。


「自分のベスポジを、世界の正解として掲げないことだ」


「なるほど」


「自分には収まりがある。だが、他人には他人の収まりがある」


「はい」


「それを知って、踏み込まない」


「品がありますね」


「そうだ」


 博士は今日の答えをまとめた。


 品格とは、自分の力を雑に使わないことである。

 できる。だが、やらない。

 勝てる場面で勝ちすぎない。

 言える場面で言いすぎない。

 正しい場面で踏みすぎない。

 相手を、自分の正しさの道具にしない。

 品格は弱さではない。

 できることを、選んで控える強さである。


「博士」


「何かね」


「品格って、かなり実務ですね」


「そうだ」


「礼儀とも違う?」


「礼儀は外側の作法だ。品格は、その作法を選ぶ内側の姿勢に近い」


「内側ですか」


「ただし、内側そのものは見えない」


「チンポジ哲学ですね」


「だから、品格は行動に出る」


 博士は最後に一文を書いた。


 品格とは、抜ける刀を持ちながら、抜かずに済ませるための姿勢である。


「かなり博士っぽいですね」


「私は哲学者だからな」


「名前以外は」


「名前で品格を判断するな」


「そこはかなり不利です」


 博士は笑った。

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