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哲学と私 あるいは、チンポジ博士の講義  作者: チンポジ博士


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科学とは。

 科学とは何か。


 博士は紙ナプキンに短く書いた。


 観測して、仮説を立て、確かめ、間違えたら直す方法。


「科学とは、正しいことを言う技術ではない」


「違うんですか」


「違う。間違い方を管理する技術だ」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 科学=間違いを減らす手順


「ずいぶん地味ですね」


「地味でいい。地味だから強い」


 博士は続けた。


「科学は、信じるものではない」


「はい」


「疑うものだ」


「疑う」


「ただし、何でも疑えばいいわけではない。観測できる形にする。測れる形にする。反証できる形にする」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 観測。

 仮説。

 検証。

 反証。

 修正。


「この順番が大事だ」


「科学っぽいですね」


「科学だからな」


 博士はコーヒーを一口飲んだ。


「ここでチンポジ哲学だ」


「来ましたね」


「本人の収まりは本人にしかわからない」


「はい」


「なら、科学はどうするか」


「諦める?」


「違う」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 内側は直接測れない。

 だから外に出たものを見る。


「表情、発言、行動、記録、反応、再現性」


「はい」


「だが、それを内側そのものだと断定しない」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 測れたものを、すべてだと思うな。

 測れないものを、あることにするな。


「かなり強いですね」


「科学には両方必要だ」


「両方?」


「測れたから全部わかった、も危ない。測れないから何でもあり、も危ない」


「なるほど」


 博士は続けた。


「科学は、世界に対して謙虚でなければならない」


「謙虚」


「そうだ。私はこう思う。では足りない。多くの人がそう感じている。だけでも足りない」


「観測が必要」


「そうだ」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 共感は証拠ではない。

 感想は仮説の入口である。


「これ、社会問題にも刺さりますね」


「刺さる」


「社会問題です」


「何を測るのか」


「みんな困っています」


「何人が、どの程度、何に困っているのか」


「理解してください」


「理解済みをどう判定するのか」


「科学、冷たいですね」


「冷たいのではない。混ぜないだけだ」


 博士は今日のまとめを書いた。


 科学とは、観測して、仮説を立て、確かめ、間違えたら直す方法である。

 科学は、正しさを名乗る技術ではなく、間違いを減らす手順である。

 観測、仮説、検証、反証、修正を混ぜるな。

 内側は直接測れない。だから外に出たものを見る。

 測れたものをすべてだと思うな。

 測れないものを、あることにするな。

 共感は証拠ではない。感想は仮説の入口である。


「博士」


「何かね」


「科学って、正解を出すものかと思っていました」


「正解に近づくものだ」


「近づく」


「そうだ。科学は、今日の暫定的な最善を置く。明日もっと良い観測が出たら直す」


「絶対ではない」


「絶対ではない。だが、何でもありでもない」


 博士は最後に一文を書いた。


 科学とは、世界に対して「たぶんこうだ」と言いながら、間違えた時に戻れる道を残す作法である。


「綺麗ですね」


「私は哲学者だからな」


「名前以外は」


「名前は検証対象外だ」


「そこを測らせてください」


「反証されるので拒否する」


 博士は笑った。

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