例外とは。
例外とは何か。
博士は紙ナプキンに短く書いた。
例外=標準運用から外れるもの
「例外とは、標準運用から外れるものだ」
「無視していいものですか」
「違う」
博士はすぐに言った。
「例外は無視してよいものではない。だが、全体設計を乗っ取らせるものでもない」
博士は紙ナプキンに書いた。
例外は無視するな。
だが、例外に全体設計を乗っ取らせるな。
「これが今日の中心だ」
「社会問題っぽいですね」
「かなり社会問題向きだ」
博士は続けた。
「困っている人がいるかもしれない」
「はい」
「いるだろう」
「断言するんですか」
「いる。人間は多い。例外は必ずいる」
「はい」
「だが、いることと、全体制度を変えることは違う」
博士は紙ナプキンに書いた。
いるかもしれない、は観測の入口。
制度変更の根拠には、まだ足りない。
「何が必要ですか」
「規模、深刻度、頻度、費用、代替手段、影響範囲、比例性」
博士は淡々と言った。
「たとえば、95%に合う運用がある」
「ほぼ全部ですね」
「そうだ。実務感覚では、95%はほぼ全部に近い」
「でも残り5%がいる」
「いる。だから無視しない」
「では?」
「標準運用は95%に合わせる。5%には例外対応を設計する」
博士は紙ナプキンに書いた。
標準運用=多数に合わせる。
例外対応=少数を捨てないために置く。
「これが設計だ」
「5%に合わせて全体を変えるのは?」
「場合による。だが慎重でなければならない」
「なぜですか」
「95%側に大きなコストが乗るからだ」
博士は紙ナプキンに書いた。
少数を無視するな。
多数に無限コストを負わせるな。
「ここで比例性を見る」
「比例性」
「そうだ。どれくらいの人数が、どれくらい困っていて、どれくらいの変更で、どれくらい改善し、どれくらい副作用が出るのか」
「かなり設計ですね」
「例外対応は設計だ」
博士は続けた。
「社会問題では、ここがよく飛ぶ」
「どう飛ぶんですか」
「困っている人がいる」
「はい」
「だから社会問題だ」
「はい」
「だから制度を変えろ」
「はい」
「だから反論するな」
「飛びすぎですね」
「飛びすぎだ」
博士は紙ナプキンに書いた。
例外がいることと、全体設計を例外中心に変えることは違う。
「これは強いですね」
「強い」
「チンポジで言うなら」
博士は静かに言った。
「一人一派を無視するな。だが、一人一派で全員のパンツを作り替えるな」
「最低なのにわかりやすいですね」
「哲学だからな」
「名前以外は」
「名前も例外だ」
「そこは標準化できませんね」
博士は少し笑った。
そして最後にまとめた。
例外とは、標準運用から外れるものだ。
例外は無視してよいものではない。
だが、全体設計を乗っ取らせるものでもない。
いるかもしれない、は観測の入口である。
制度変更の根拠には、規模、深刻度、頻度、費用、代替手段、影響範囲、比例性が必要である。
標準運用は多数に合わせる。
例外対応は少数を捨てないために置く。
少数を無視するな。
多数に無限コストを負わせるな。
例外がいることと、全体設計を例外中心に変えることは違う。
博士は紙ナプキンを畳んだ。
「例外とは、捨てるものではない」
「はい」
「だが、王にするものでもない」
「王」
「そうだ」
博士は最後に一文を書いた。
例外とは、標準を壊すためではなく、標準からこぼれた人を拾うためにある。
それは、かなりまともな答えだった。




