間話 チンポジコミュニティ
「博士」
「何かね」
「ふと思ったんですけど」
「うむ」
「チンポジコミュニティって成立するんですか」
博士は少しだけ真顔になった。
「難しい」
「難しいんですか」
「かなり難しい」
博士はコーヒーを置いた。
「まず前提として、チンポジは一人一派だ」
「はい」
「本人にしかわからない」
「はい」
「他人には完全共有できない」
「はい」
「つまり、最初から分裂条件を抱えている」
「最悪ですね」
「哲学だからな」
博士は紙ナプキンに書いた。
固定派
フリー派
右寄せ派
左寄せ派
状況依存派
「もう割れてる」
「もう割れている」
「しかも全員、自分の収まりが正しい」
「はい」
「なぜなら、本人の実感だからだ」
「否定しにくいですね」
「否定しにくい」
博士は続けた。
「固定派は言う」
博士は声色を変えた。
「安定こそ正義」
「いそう」
「フリー派は言う」
「解放こそ自然」
「いそう」
「右寄せ派は言う」
「左は落ち着かない」
「いそう」
「左寄せ派は言う」
「右は圧迫感がある」
「いそう」
「状況依存派は言う」
「今日は違う」
「めんどくさいですね」
「人間だからな」
博士は紙ナプキンに書いた。
自分のベスポジを持つ。
だが、他人に履かせるな。
「これがないと終わる」
「終わるんですか」
「宗派戦争になる」
「チンポジで?」
「人間は何でも宗派戦争にする」
博士は真顔だった。
「歴史が証明している」
「急に重い」
「重い」
博士は続けた。
「しかも、チンポジは本人にしか観測できない」
「はい」
「つまり、外部検証不能だ」
「はい」
「ここがさらに危ない」
博士は紙ナプキンに書いた。
本人にしかわからない。
だからこそ、押し付けが始まる。
「わからないからこそ?」
「そうだ」
「なぜですか」
「人間は、不安になると、自分の正解を他人にも適用したがる」
「ありますね」
「固定派は言う」
「固定しろ」
「フリー派は言う」
「解放しろ」
「右寄せ派は言う」
「右が自然だ」
「左寄せ派は言う」
「右は抑圧だ」
「最低ですね」
「だが、人間らしい」
博士はコーヒーを飲んだ。
「だからチンポジコミュニティには、チンポジ哲学が必須になる」
「つまり」
「分かり合えないことを分かり合う」
「出ましたね」
「君のベスポジは君のもの。私のベスポジは私のもの」
「はい」
「違っていてよい」
「はい」
「押し付けるな」
「はい」
「否定するな」
「はい」
「だが、語ることはできる」
博士は紙ナプキンに書いた。
共有はできない。
だが、語ることはできる。
「ちょっと哲学っぽいですね」
「かなり哲学だ」
「チンポジなのに」
「チンポジだからだ」
博士は少し楽しそうだった。
「そして、ここからさらに危険な段階へ行く」
「まだあるんですか」
「制度化だ」
「やめろ」
「私もそう思う」
博士は紙ナプキンに書いた。
チンポジ登録制度
「やめろ」
「固定派は言う」
「固定を標準にしろ」
「やめろ」
「フリー派は言う」
「固定は抑圧だ」
「やめろ」
「右寄せ派は言う」
「右寄せ差別をなくせ」
「やめろ」
「左寄せ派は言う」
「右中心社会を変えろ」
「やめろ」
「状況依存派は言う」
「毎日登録変更したい」
「やめろ」
博士は静かにうなずいた。
「だから私は、チンポジ哲学を作った」
「止めるために?」
「そうだ」
「コミュニティを作るためではなく」
「壊れないようにするためだ」
博士は紙ナプキンに、最後の一文を書いた。
チンポジコミュニティは、チンポジ哲学なしでは成立しない。
なぜなら、全員が自分の正解を持っているからだ。
「かなりまともですね」
「私は哲学者だからな」
「名前以外は」
「名前が一番哲学している」
「カントに怒られろ」
「何度でも怒られよう」
博士は笑った。




